バケモノさんは七年の間にすっかり諦めていて
バケモノさんは七年の間にすっかり諦めていて、きっとこの女の子も前の二人みたいに悲鳴をあげるか、逃げるか、どちらにせよ怖がるかするだろうと思っていました。それでも迎えに来たのは、かわいそうな女の子が一人で置き去りにされているのが忍びなかったからです。
しかし、予想外なことに、家から出ることなく育った女の子はあまり物を知りませんでしたし、そのことを自分でもわかっていましたので、バケモノさんを見ても、怖がるどころか、世の中にはそういうひともいるのだろうくらいにしか思わなかったのです。
逃げられるだろうと思っていたバケモノさんは、逃げられなかった場合どうするかなんて考えていなかったので、困り果てたのでした。
苦し紛れに出てきた言葉は当初の――本当に最初の最初の予定通り「友達になろう」だったのです。が、返ってきたのは否という言葉と――あまりにも哀れな、彼女の境遇でした。
彼女の境遇を聞きだしたバケモノさんは自分のために一人の女の子の人生を狂わせてしまったことに悩みましたが、親のいない子どもの行き先なんて自分が関わらなくてもどうせロクなものではなかっただろうと考え、ならせめて自分の手の中に迷い込んできた女の子の世話は自分が見ようと決めたのでした。
ただひとつだけわからないことがあったのですが、バケモノの話を聞いて、イケニエの女の子が言ったことで疑問は解決しました。
「きっと、バケモノさんが会った人はソンチョウさんの息子よ」
それでバケモノさんは納得しました。村長の息子のような偉い人物でなければ、殺されるとわかっている(と思っている)生贄を、女の子の前にも二人も連れてくることなどできません。
村長の息子の浅はかな言動の尻拭いを、女の子は生まれたばかりにして押し付けられたのです。
バケモノさんはすっかり女の子に同情してしまいました。女の子も、バケモノさんの話を(どこまで本当にわかっているのかは諮りかねますが)聞いて、大きな目を潤ませてバケモノさんに抱きついて言いました。
「わたしはずっと一緒よ!」
小さな細い腕を、トモダチの首にぎゅうぎゅう巻きつけて(バケモノさんは胡坐をかいていて、女の子はその膝の中にいたので、どうにか届いたわけです)、女の子は誓いました。
「あなたがどんな見た目をしていても、私には関係ないわ! だってあなたは、私の大きくて優しいトモダチよ!」
バケモノさんは黙って女の子を抱きしめ返しました。
女の子はバケモノさんの目を覗き込みました。綺麗な優しい赤色です。大好きな色です。少し、潤んで見えました。
「だからね、なまえを、教えて」
今度はあなたを傷つけない名前を、ちゃんと大好きをたくさんこめて呼ぶから。
白い髪と赤い目をした大男は、少し驚いた顔をしてから、とても嬉しそうに笑いました。
そして女の子の耳元に口を寄せて、そっと自分の名前を囁いてあげたのでした。
女の子も嬉しそうに笑って(涙まみれの顔でしたけども!)そのひとの名前を、呼んだのでした。
それからトモダチは女の子の名前も考えてあげて(だってトモダチも女の子とおんなじ気持ちでしたから)、たくさん呼んであげました。
そして森の中、二人はとっても幸せに暮らしたのでした。
終わりました。
起承転結がぬるくて申し訳ありません。
結局天然ボケキャラの女の子が書きたかっただけになってしまいました。