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新旧の出会い

「はぁ・・・何とか帰って来れたな。」


「やった〜!!。エルドアに帰って来れたっス!!」


「よ、良かった・・・。」


だいぶ夜も遅い時間になってしまったが、シュゲンと双子・イッセーとスズハと共にエルドアへと戻って来ていた。

夜遅くだと言うのに、エルドアの街は未だに灯りが点いていて、遠くから見ると輝いている様に見えていた。そんな街の灯りを目の当たりにしたイッセーは、飛び跳ねながら喜び、スズハはしみじみと喜んでいる様だった。

双子だと言っていたが、そのテンションは正反対で驚きながらも、シュテンは伸びをしながら、荷物を背負い直した。


「帰って来て嬉しいかも知れ無いけど、そろそろ行こう。もう夜も遅いしな。」


「了解っす!!。てか、腹減って、倒れそうっス!!」


「イッセー・・・恥ずかしいでしょ・・・」


エルドアに戻って来る間に、シュゲンは二人と色々な会話をして、いつしか親しく笑い合えるまでの仲良くなっていた。

話をしてわかったの事なのだが、一週間前にギルドでの初回訓練が終わったらしい。だが、今日までの間に、いくつかの依頼(クエスト)を受けたらしい。

新人向けの薬草を調達とかの簡単なものをこなしていたが、あまりにも簡単だと言い出したイッセーが、少し上の依頼(クエスト)を受けたらしい・・・依頼内容は、特定の魔物の討伐して、魔物の体の一部を収集というものだったそうだ。

だけど、二人はその依頼が初めての実践らしく、二人が思っていた以上に苦戦してしまい依頼は失敗。その結果、賠償金を払う事になったらしい。


しかも、最悪な事に賠償金を払ってしまった所為で、有り金が底を尽きそうになってしまったらしい・・・因みに、金に困っているのは、イッセーだけ。そもそも、スズハは受けた依頼は「まだ早いから、やめよう」と言ってたし、イッセーも責任を感じて全額を自分で払った。

金が無いなら稼ぐしか無いのだが、二人はまた失敗するのを恐れてしまい、依頼(クエスト)を受けるのを戸惑い、二人は違う方法で稼ぐ事にした。本来、義勇兵の稼ぎ方のは、大きく分けて二種類ある。


一つは、依頼(クエスト)を受けて稼ぐ方法や、個人的に依頼される事で稼ぐ方法が、主に義勇兵が行う稼ぎ方だ。

もう一つは、依頼(クエスト)を受けずに個人で魔物討伐をする方法があり、これは事務所での手続きをせずに、義勇兵が独断で行うことが出来る。依頼(クエスト)では無いので、いくら討伐しても討伐報酬は貰えないが、討伐した魔物の一部を持ち帰れば、金に換金する事が出来る。その魔物の一部は、武器や防具などの素材となる事があるので、それなりの値で売れるからだ。

それを知った二人は、今朝に旧市街へと向かったのだが、素材となる魔物を探していていたが見つからずに、途方に暮れていた時に、ゴブリンの群れにそうぐうしてしまった・・・と言う感じらしい。



「そ、それは災難だったな・・・」


「はい・・・イッセーは、“たまに”考え無しに行動する所があって・・・。でも、こんな事になるなんて・・・あ、あの、シュゲンさん。助けて頂いて、本当にありがとうございます。シュゲンさんに助けられなかったら、今頃どうなっていたか・・・」


エルドアへ続く一本道を歩いているオレの隣で、スズハが何度目かの礼を言いながら、何度も頭を下げていた。そんなチヅルを置いて、イッセーはオレとスズハよりも、前を鼻歌交じりに歩いていた。

そんな二人の温度差を目の当たりにしたオレは苦笑いをするしかなかった。だが、どうにか無事に帰って来れたのだから、それで良いのでは無いかとオレは思う。

苦労もしただろうし、怖い思いもしただろう・・・だが、厳しめな事を言うなら、義勇兵として生きていくのなら、コレぐらいは普通なのだ。些細なミスで、簡単に死んでしまう義勇兵の話なんてざらだ。

内容によっては、酒場で同業者達に笑いのタネにされて、酒の肴にされてしまう事もいい。まぁ、死んでしまったら、何言われようが仕方がないし、文句を言いに蘇られる筈もないので、死んだ本人の責任と言う事で割り切るしかない。


「まぁ、死ななかったんだし、それで良いじゃないかな?。生きてる事が一番だし、死んだら何も残らないからね。」


「・・・・そ、そうですよね。」


オレの言葉を聞いたスズハは顔を上げて、何度も頷いた。まだ、緊張している様に感じられるが、だいぶ解けて来たのか、微かに笑ってくれた。

そんな事を思っていると、「二人共、早く行こうぜ!!」とイッセーの声が聞こえて来た。すると、「う、うん!」と言って、スズハはイッセーの元へ走り出した。

オレも、流石に走りはしないものの、歩く速度を上げてながら追いかけ、エルドアの検問を通り抜けて行った。



「じゃあ、オレはホームに行くから、コレで。二人共、あんまり無理しない様に気をつけろよ?。」


エルドアの街に入り、商店街を通り抜くけた所で、オレは立ち止まった。

道は大きく二つの道に分かれている。右の道へ行けば、ホームや義勇兵達が必要とするものを取り扱う店が並ぶ、通称・“義勇通り”と、酒場や宿の他に数少ない住民の家がある住民街へと続く・“市民通り”と呼ばれる左の道に分かれている。

オレは、一応は依頼(クエスト)は達成しているので、報酬を貰わなと行けない・・・こっちも金欠なもんでね。少し残念だが、ここでお別れだ。申し訳ないけど、別れの挨拶を一方的に済ませると、オレは足早に去っていく。振り返らずにいると、「えっ、ちょ!」とか、「兄ちゃん!?」と言う声が聞こえたが、そのまま走り続けた。

長々といると、別れるタイミングを逃してしまうので、仕方がない。ちょっと冷たいかと思ったが、コレばかりは仕方がないと思う。




そうして、双子と別れた後、真っ先にホームへと向かっていく。

ホームは基本的には休みなど無く、一日中開いているので、義勇兵達は夜でも立ち寄っては依頼を受けたり、依頼達成の報告などで人混みが多い。


「お疲れ様です。今回は依頼報告の対応でよろしいでしょうか?。」


「はい。この依頼の報告でお願いします。」


人が混み合っている中、シュゲンは受付(カウンター)へ訪れ、持っていた依頼書を受付嬢へと手渡した。

すると、依頼書を受け取った受付嬢は内容を確認すると、「では、“水晶盤”に触れて下さい。」と言われて受付台に置かれている物を見た。

そこには、透き通った水晶で出来た台の様な物が置かれている。縦25㎝・横40㎝程のサイズの水晶盤に、シュゲンは両手をゆっくりと触れると、水晶盤が淡く光り、発光し始めた・・・すると発光し始めと同時に、シュゲンの体に異変が起きる。

右肩と左胸に僅かだが、焼ける様な痛みが走っていた・・・痛みが走る箇所は、刺青の様な紋様がある部分だった。

そんな痛みに耐えていると、「ありがとうございます。もう結構です。」と言われ、シュゲンは両手を離すと、受付嬢は依頼書を光を放ち続けている水晶盤の上に置いた。


「はい。依頼は達成されている様なので、ただ今報奨金をお出ししますね。それとですね、誓紋(ジュリガス)の同調率が一定を超えて、ランクアップしていますね。おめでとう御座います。ランクが34に上がりました。」


おぉ、予想外の嬉しい誤算が舞い込んで来たな。多分、双子を助けた時に倒したゴブのお陰で、ランクが上がったのかも・・・人助けして置いて正解だったのかな?。


義勇兵は、必ずギルドに籍を置かなくていけないんだけど、ギルドに所属する際には必ず行う通過儀礼がある。それを祈誓の儀(きせいのぎ)と言うんだけど、簡単に言うとギルドの長・ギルドマスターに対して、自分はこのギルドに入りますと云う誓いを立てる事になっている。

その誓いを立てると、ギルドに籍を置いた証明として、刺青の様な紋様を身体の何処かに刻む義務が必要になる。その紋様の事を誓紋(ジュリガス)と呼んでいる・・・シュゲンの右肩と左胸に刻まれているのが、誓紋(ジュリガス)だ。


誓紋(ジュリガス)は義勇兵の証であると同時に、義勇兵にとってかなり重要な役割を持っている。

それは主に三種類の効果を持っている。それが“誓約”・“加護”・“共鳴”だ。


まずは、”誓約“からだ

誓約とは、依頼(クエスト)などをする際に使うものだ。依頼を受ける際、受けた本人が不正を働いてないかを判断する事が出来る。

例えば、今回の依頼で言うならば、ゴブリンを十体討伐に失敗したとしよう。失敗したのにも関わらず、ホームに成功したと報告する。この依頼では、ゴブリンの身体の一部を持って帰ってくる様には指定されていないので、シュゲンが黙っていたら、誰もバレない。

しかし、誓紋(ジュリガス)には戦闘の情報が記録さているらしく、先程の水晶盤が記録された情報を読み取られるらしい・・・原理は解らないけど。

その情報を元に依頼書と照らし合わせる事で、真実か嘘かを判断する事が出来る。ちなみに、成功していると何も起きないが、嘘をついていると契約書が燃えてしまう。


次は、加護についてだ。

誓紋(ジュリガス)には義勇兵の能力を上げる力も備わっている。各ギルドの誓紋(ジュリガス)事に能力は異なるが、その効果で義勇兵は魔物と戦える様になっている。

例えば、拳闘士の加護は、《身体能力強化》・《肉体強化》などの効果があり、これを固有スキルと呼ばれ、同じ拳闘士なら誰でも備わる能力だ。

だけど、同じスキルを持っていても、人によって加護の大きさは変わっていたりする。

新人の拳闘士が、背丈ほどある岩を殴った場合、加護の力で、以前とは違って、基本能力が底上げされてるから、ヒビぐらいは付けられるが、砕くまでは至らない。

しかし、同じ拳闘士でも、熟練した拳闘士なら背丈ある岩を粉々に砕く事ができる。

その要因は、最後の一つに大きく関わってくる。


その最後は、共鳴。

共鳴は、義勇兵と強さを示すもので、戦闘を行う度に、誓紋(ジュリガス)が義勇兵に馴染んでいく。

その馴染んでいく事を《同調》と言い、同調率が上がっていくにつれて、義勇兵の能力が上がって行く。

加護と関係していると言うのは、この部分を言っている。実戦経験を経て、技術や体が成長していくに連れて、義勇兵は強くなっていく。

ちなみに、さっき言われた“ランク”とは、この共鳴・同調の値を数値化したもので、ホームで確認する事が出来る。


つまりは、今回の依頼でオレは少しだけ強くなれたと言う事になり、喜ばしい事・・・だったのだけど、次に聞こえてきた受付嬢の言葉を聞き、オレは固まってしまった。


「あ、それとですね。ランク34の拳闘士の方は、条件を満たされた事になりますので、ギルドの習得資格を得られました。もし時間がありましたら、ギルドに足を向けて下さい。今後の更なるご活躍を期待しております。」


「・・・・・・」


はい?・・・・しゅ、しゅ、しゅ・・・習得資格だとぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!

ま、待ってくれ!。この前、習得しに行ったのっていつだった!?。一ヶ月も経ってない気がする・・・そうだよ、習得する為のランクが近かったから、間を置かずに行ってたんだっけ!?。

シュゲンの顔から一気に生気が失われ、今にでも倒れてしまいそうに見えるぐらい顔が青ざめ、小刻みに震え出し、大量の冷や汗が流れ始めていた。

そのあまりにも、急な異変に受付嬢が慌て出し、何度も声を掛けたが返事が無く、危うく近くにいた回復職の義勇兵を呼ばれそうになっていた。

しかし、呼ばれる前にシュゲンは我に返り、事なきを得たのだが顔色は悪いままだ。シュゲンはそんな顔色のまま報奨金を受け取り、重い足取りで歩き始めた。

その姿は、下手をすればゾンビだと間違われてしまいそうな足取りだ。


「マズイ・・・どうしよう・・・どうしよう・・・」


「・・・”シューちゃん”?」


重い足取りで歩きながら、小声で呟き出したシュゲンの後ろを書類を持って通り過ぎようとしていた一人の女性が立ち止まり、声を掛けて来た。

シュゲンは落ち込んだまま振り返ると、「あっ・・」っとつい声が溢れ出てしまった。


「あぁ〜やっぱり、そうだ!。久しぶりだね!?。うわぁ〜、大きくなったね!!」


「”リーシュさん”!!。お久しぶりっす!。」


振り返った先に立っていたのは、シュゲンにとっては馴染みのある人・リーシュ・・・三年前に、シュゲンが義勇兵になる為の儀式を行った女性だ。

ボブカットヘアに、綺麗な顔で泣き黒子が印象的な女性で、ホームの受付嬢の制服を着ている。

そんなリーシュの顔を見たシュゲンは、先程までの死にかけた表情が消え去り、久々に出会った知人に対し、笑みを浮かべていた。


「あれ?・・・リーシュさんって、《サポーター》の仕事で遠征に出てたはずじゃ?。」


「そうなのよ!!。でも、遠征先の仕事が早めに片付いたから、一部のサポーターは先に帰らされてね。二日前には、エルドアに戻ってたんだけど、あり得ないぐらいの報告書作りを言い付けられちゃって、作業室に引き篭もってたの。

知り合いにすぐ会えると思ったんだけど、ぜーーーんぜん会えないだよ!。ビックリしちゃった!?。と言う訳で、シューちゃんが帰還後初の知人第一号なの!。」


「マジですか!?。うわぁ、超忙しいじゃないですか。」


「そうそう、本当に逃げ出したいぐらいよ。まぁ、今月の御給金が貰うまでは、喰らい付いてやりますよ。」


相変わらずの底抜けな明るさを実感しながら、久しい友人と出会ったシュゲンは楽しげに話を聞いていた。

別にシュゲンには知人が少ない訳じゃない。しかし、大抵は同業者の義勇兵の知り合いで、交わす話の内容は殆どが仕事関係の話ばかりだ。

しかも、内容も内容なので、和気藹々とした話ではなく、血生臭い話ばかりで華がない。

それに対して、リーシュは仕事関係者ではあるが、会って話すのは世間話を楽しそうに話してくれる。勿論、仕事の話もするよ?。でも、リーシュと持ち前のキャラが立っているのか、彼女の会話は楽しく感じててしまう。


「あぁ、ごめんごめん!。また長話になっちゃったね。あ〜もう、とうとう私もとしかなぁ〜?」


「おいおい・・・リーシュさんって、まだ二十、ふゴォ!!」


「乙女の年齢を軽々しく口にすんもんでねぇ〜い!!!。」


シュゲンがリーシュの年齢を口に仕掛けた途端、シュゲンの顔面に本職の拳闘士顔負けの掌底打ちを食らわせられてしまった。

まぁ、義勇兵ではないので見た目よりは痛く無いが、年齢を言わせない程度の威力があった・・・・てか、と知っていたの、リーシュさんじゃん!。納得いかない。


「て言うか、さっきはどうしたの?。まるでゾンビみたいだったよ?」


「えっ、あぁ・・・いや、なんでも無いっすよ?。あはははっ・・・」


「ふ〜ん・・・まぁ、シューちゃんがそう言うなら、追求はしないけどさ。けど、()()()()()が心配させるのはどうなのかな?。見るからに、シューちゃんがお兄さんなんだから、シャンとしないといけないよ!。」


「はははっ、気をつけ・・・・ん?・・・()()()()()()


聞き馴染みのない言葉が聞こえた・・・シュゲンは今はフリーで行動しているので、仲間がいる訳が無い。心当たりが全くない。他のパーティの人を勘違いしているのではと考えたが、”子達”と言う言葉が気になり始めた。

戸惑った様子のシュゲンを見たリーシュも何か変だと感じたのか、首を傾げた。


「あれ、違った?。()()()()がシューちゃんの事を見てるから、てっきり仲間の子なのかと?」


「えっ?・・・あっ!。お、お前ら!?。」


リーシュがシュゲンの後ろの方を指差すと、シュゲンはその方向へ振り返った。指差された場所は、ホームの出入り口付近に見えたのは、見覚えのある二人の義勇兵の姿だった。


「えへへ・・・こ、今晩わ〜・・・っス?」


「あ、あの・・・アハハ・・・・ハァ・・・ごめんなさい。」


そこに居たのは、先ほど別れたはずの双子の義勇兵・イッセーとスズハが気まずそぉ〜な顔をして、乾いた笑みを見せていた。


「やっぱり、シューちゃんの知り合いの子達?」


「・・・・はい。」


なんで二人がここにいるんだ?




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