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輪廻転生

また続きを読んでみようと思って下さってありがとうございます。お気に召す内容であればと思います。もし感想やご意見、誤字脱字などがありましたら気軽に教えてください。コメントを頂けたらとっても嬉しいです。

「やめてっ···」

アサディーはそう叫ぶと共に跳ね起き、すぐに辺りを見回した。

周りには、四方を黄ばんだ壁で囲まれた部屋の床に横たわっている「同僚」が7~8人がいた。


すぅー、すぅー


断続的に続く寝息にアサディーは思わずほっとした。仕切りもないこの狭い部屋で先程のような大声を出せば何人か起こしてしまっても不思議ではなかったが運のよいことに全員熟睡しているように見える。


(まだ空気がひんやりとしているから、暁頃?···また1日が始まるのか)


アサディーは憂鬱な気持ちで再び床に横たわりながら、少し前から何度も繰り返し見ている不可思議な夢の内容を思い出そうとしていた。


(···思い出せない)


アサディーはいつものように、思い出そうとすればするほど頭に霧がかかったように夢の内容が分からなくなる感覚に陥った。


(···夢の内容くらい別に良いか)


いつも通り、アサディーがそう思い直した瞬間、廊下から大きな音が激しく聞こえてきた。


ゴン!ゴン!ゴン!


石で出来た小鐘を木の棒で叩いたような音が響く中、アサディーは女中の仕事をするために重い体を押して身支度を始めた。

周りの他の使用人もそろそろと起き出して、アサディーと同じように身支度を始めている人がちらほらいた。


使用人の朝は早い。

それぞれ身支度を終えるや否や大慌てで廊下や窓、食堂等、この館の主、トリカ・シャクナが朝食を召し上がる際に使用する場所の清掃に取り掛かった。


トリカやその妻のファイブロらが節約のため館の使用人を絞っており館の仕事の量に比べて少ない使用人たちは大忙しである。

こんなところで節約する割には食事や家具、装飾品等に散財するよく分からないトリカとファイブロこそが正に、アサディーの第二の両親なのだ。


何故第二なのかというと、驚いたことにアサディーには前世の記憶があるからだ。

所謂、転生というものだろう。

前世のアサディーは日本という国に住んでいた。

その国でアサディーは死に、アサディーはこの世界に再び赤子として生まれてきたというわけだ。

しかも、前世でアサディーの仕事の同僚が嵌まっていた乙女ゲームの悪役令嬢役に···


では何故そんなアサディーが女中たちと同じ部屋で寝て起きして、女中の仕事をさせられているのか?


その理由は、アサディー自身もいまだに理解しきれていないことだが、おそらく現在のアサディーの両親が、アサディーのことを、給料を払わなくても仕事をさせることが出来る便利な働き手とでも思っているからだと考えられる。

アサディーの両親は自分の子を子とも思っていないのだ。

トリカはアサディーのことをファイブロに任せっきりで全くアサディーに興味がなく、ファイブロはアサディーのことを、毎日の苛々をぶつける道具として見ている感じだ。


この世界に生まれた直後の混乱を乗り越え、自分が転生してきたのだと理解し、受け入れたとき、アサディーの頭にはもう一つ別の疑問が浮かんだ。

それは、この世界でアサディーはシャクナ家の娘でアサディーという名であるはずなのにゲームでは、姓をスファレ、名をフーテンと名乗っていることだった。さらにアサディーが住んでいる場所は乙女ゲームの舞台の王都ではない、辺境の地だ。


何故アサディーの容姿がフーテンと瓜二つなのか、アサディーには訳が分からなかった。


もちろん、ゲームの登場人物のそっくりさんなだけであって、全くの別人である可能性も、この世界がゲームの世界観に似ているだけである可能性も十分にある。その証拠に、アサディーの容姿とフーテンの容姿はそっくりではあるが、髪と目の色が違うのだ。

つまり、今の段階ではアサディーが一体何者なのか明らかにすることは出来なかった。

だからアサディーは理由が分からないまま今も、シャクナという姓を名乗っている。

とは言うものの、こんな辺境の地で、アサディーがその名を名乗る相手などほとんどいないが···

もし仮にアサディーがフーテンであったとしても、今の現状を甘んじて受け入れる必要はないのだが、今のように女中の仕事を強制されている環境と、無力なアサディーでは今の現状を打破出来るだけのたいした策など立てられず、周りに流されれしかない日々を過ごさざるを得なくなっていた。


前世の記憶などほとんど役に立たないのだ。


ただ一つ、アサディーには気になっていることがあった。

それは、何故アサディーが乙女ゲームの世界に転生したのか、ということについてだ。


何か理由があるのか、それとも偶然なのか。


定かではないが、とりあえずアサディーは何処かに転生したという事実を何とか受け入れながら日々を過ごすことにし、今に至っている。

そんなアサディーは、まだ零歳児の生まれたてほやほやだ。


と言うのも、この世界では四季が5周したら一年と見なして、人が一つ年を取る仕組みだからだ。

ちなみに寿命は民族や種族によって大きく異なるが、この国の平均寿命はこちらの世界で数えた年で、40歳くらいになる。衛生状態や技術面がまだ発展途上で、そんなに長くは生きられないのだ。

それでも前の世界で200歳は生きていることに代わりはないが。


だから前世の感覚で言えば一年と半月をこの世界で過ごしたアサディーは、この世界では零歳ということになるのだ。

背丈の成長は年齢に比例するわけではなく、アサディーは今、前世の基準で三、四歳くらいの背丈の、この世界でも一般の零歳児の子よりは大きめの大きさだ。


それでもこんな幼児に女中の仕事をさせようとするのはどうかと思うが···


いくら普通の子供よりは大きめの身長だとは言えど、やはりまだまだ子供の身長であるアサディーは、度々身長が全く足りないことで困ることが多いので自分専用の台を持ち運ぶ毎日。

ただでさえ歩き方も危ういのに物を持って運ぶしかない現状だ。


先ほど話に出た通り、アサディーは普段女中の仕事をしている。

アサディーはシャクナ家の娘だが、扱いは雑用女中と同じだ。

父のトリカと母ファイブロとは血が繋がっているため、当然給料が出るはずもなく、下手をすれば雑用女中以下の扱いかもしれない。

だからアサディーは普段使用人の部屋で寝起きし、服も女中と同じものである。

ドレスも装飾品も貸してもらっているだけで、この館の中でアサディーが所有しているものは何一つない。

だからアサディーは、本当にどうしてもという時以外は女中服を身に纏う。


もちろんアサディーとしても別に贅沢できないことに不満があるわけではない。質素な生活なら前世で慣れているのだから。

問題は、もっと別にある。







少し中途半端なところで切れた気が...

次の話も読んでいただけたら嬉しいです。

・主人公「アサディー」の名前の由来は「麻」で、花言葉は「運命」「宿命」「結果」らしいです。一体誰がこんな名前をつけたんでしょうね...(作者です、というツッコミは遠慮しておきます...)

・家名「シャクナ」の名前の由来は「シャクナゲ」で、花言葉は「危険」「荘厳」「警戒」「威厳」らしいです。色々怪しそうな家ですね...

・アサディーの母親「ファイブロ」の名前の由来は「ファイブロ・キャッツ・アイ」で、石言葉は「警告」らしいです。ファイブロさんがより一層怪しくなりましたね...

・アサディーの父親「トリカ」の名前の由来は「トリカブト」で、花言葉はネタバレになりそうなので、ここでは控えておきますね。秘密と言われるほど人間は知りたくなるものだとか言いますが...調べないことをお勧めしますよ?

・アサディーにそっくりの顔を持つゲーム内の登場人物の姓「スファレ」の由来は「スファレライト」という宝石です。この宝石の名前の由来がギリシャ語のsphalerosという「嘘つき」「裏切り者」「あてにならない」などの意味を持つ言葉で、ガレナなどと共に産出されて見分けがつかないことからこの名前がつけられたそうです。

・アサディーにそっくりの顔を持つゲーム内の登場人物の名前である「フーテン」の由来は「瘋癲」で、精神状態が異常なこと、及びそういった人を言います。もともと「瘋癲」のことを指していた「フーテン」は、今ではブラブラしている無気力な若者集団のことを言い、アメリカのヒッピーに近いイメージで使われるらしいです。悪役令嬢といえど流石にこの名前の組み合わせは...(つけたのは私ですがね)

名前の解説をここまで読んでいただきありがとうございました。

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