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第1話 空母いずも所属 F-2戦闘機 発進!!

時は平成28年6月16日、場所は山口県萩市から北約70Km地点。

天候は雲一つない晴れで、気象班によるとまだ梅雨前だと言うのに気温は最高28度まで上がるという話だった。


ちょっと早いが海開きには最高だろうな……


朝はそんな風に思っていた…が、予報は当たり過ぎだ。

一切の遮蔽物がない甲板にはジリジリと太陽が照り付け、かなりの高温にも耐えれる耐熱材ですら肌に痛みを感じれるほどの熱を持っている。

上からと下からのダブルアタック、しかも最悪なことに今の服装は通気性最悪の飛行服だ。今まではどうにか耐えていたが……


「カァーーッ!アッチーー!!こんな暑けりゃ昼寝もできねぇよ!」


もう限界である。

帽子に隠れた額から汗を垂らし、しかめっ面をしながら体を起こすと新垣真司にいがきしんじはそのままの勢いで立ち上がった。

視界は青空から切り替わって……今度もまた青い。周囲360度には数時間前から変わらず、大海原の大パノラマが広がっていた。


いい加減この風景は飽きた。


普通の人間なら目を見晴らしてこの景色を堪能するのだろうが……毎日見ている信司はそんな気持ちにはなれない。

なぜ毎日見ているのか?

その答えは漁師だからでも航海士だからでもない。まあ航海士には似ていると言われれば間違ってはないが……彼らとは大きく違う点が二つある。

一つ目は国を守るという使命を背負っている事、そして二つ目は……海を駆け回るより空を飛び回ることが得意である事

そう…信司の職業は日本海軍空母"いずも"所属の操縦士パイロットだ。



「しっかし……島一つだけでこんなに動員させる必要あんのかぁ?」


が、そうはいっても空を飛ばなければただの乗客のようなものだ。信司はぼやきながらのんきに前方の艦隊を眺める。


今ここに展開しているのは、空母2隻と駆逐艦4隻で組まれ現代日本海軍版の空母機動隊と言われる『空母小艦隊』、それの一つである第311空母小艦隊だけだ。

もちろん他の艦隊も他海域に展開しているが……正直この空母小艦隊だけでも過剰戦力だとは殆どの隊員が思っているだろう。


今日の出動はいつものように日本近海の警戒やスクランブルの対応ではない。空母いずもの所属する第311空母小艦隊も母港の佐世保で待機していたのだが、“事件”が起きたために招集命令が出されて今に至っている。

だが、その“事件”とは感情的な国民に揺さぶられて起きた一つの島を巡る争いで、空母二隻も投入する程ではない。例えれば…『第二のフォークランド戦争』と言えるようなものであった。




事の発端は今から3日前に行われた日韓首脳会談である。

日本の総理大臣・西川泰弘と韓国の大統領・李周永がソウルにて首脳会談した際の事だ。当初の予定では主に北朝鮮への共同対策を主に話し合うことになっていたその会談だが、軍事から経済、貿易へ話が進んだところで話題は両国の領土係争地となってる竹島に…

強大な武力にて軍事的接触回避を目論んでいた日本と戦後より竹島を実効支配してきた韓国、これまで頻繁に衝突の起きていたこの問題には両者共に引きを取らず、むしろ双方で主張を強めていった。元々仲が悪くむしろ敵対意識すら持っていた両国による首脳会談は何か起こるのではないかと世間で心配されたが、会談開始より4日後の6月13日、最も恐れていたことが起こった。

西川総理は共同会見もなしに予定日程よりも早く帰国。その日の午後に総理官邸にて臨時会見を開き、竹島を武力にて強行奪還することをを宣言した。


いくら防衛手段とは言え、事実上の武力衝突の予告だった。

その後日本政府外務省から『宣言の10日後』——つまり、6月16日以降に竹島及びその半径10キロから日本軍を敵対行動を取る対象全てを攻撃対象とし、島を占拠する組織を排除するとの表明が出された。

世界中で世論は荒れ両論賛否が出たが、日本国内では強大な軍隊を持つ日本が領土問題を解決していない方が不自然と考えるのが一般的な世論となっていたのでそれほど大きな反響は無かった。




「まあ、向こうがどう出てくるか分からないんだからしゃあないでしょ。ヘリだけだといざというときは頼りないからな」


突然、右後ろから声がした。

すらりとした細身の体に直毛のミディアムといういかにも女受けしそうなシルエット……こんな奴は一人しか知らない。


「ってか…まーたこんなとこで寝てたのかよ……」


真司の戯言に返答したのは、同期で同じ操縦士の朝日拓篤あさひたくまだ。


「うっせぇ!!」


どうせ暇だからとちょっかいだしに来たのだろう。すっと立ち上がると艦橋の方に歩き始めた。

視線の外で拓篤が追いかけるのが分かる。


「置いてくなんて冷たいねぇ~」

「お前といるといっつも良いことねぇんだ!こないだだって……」


『…ウウゥーーーーーーッ』


突然、会話を妨げるように不快な音のアラームが鳴り響いた。この艦内アラームは……総員配置命令だ。

二人の顔つきが変わった。


「来たかッ!?」


艦上にいる隊員が各持ち場に向け一斉に走り始めた。機関員は機関室に、整備員は格納庫に、そして操縦士は自機に向かう。


『こちらいずも管制、いずも管制、各操縦士に通達ッ!!』


耳に装着している無線に連絡が入った。


『CPより発艦発令、F8中隊及びF2中隊は即時発艦!その他は発艦準備に回れ!』

「よっしゃ初っ端から出番だ!!」

「げ、俺らかよ」


無線で発艦命令を受けた真司と拓篤は搭乗機へと走る。だが、信司と拓篤のテンションは正反対だ。


「お前、その調子で下手やって撃ち落とされるなよ!」

「俺を誰だと思ってるんだ!?お前は自分の心配をした方がいいぜッ!」


エレベーター横でそんな軽口を言い捨てあうと拓篤と別れ、朝から指定されていた信司の搭乗機F-2戦闘機に駆け上った。


「外部点検完了してます!!」

「了解!!」


整備士がそう叫ぶ。


「キャノピークローズ、電源投入、エンジンスタート」

“キュィィィィィィッッ!!!!!!”


双発エンジンがいい音をあげながら起動した。


「エンジンテストよし」

『こちら“いずもCATCC(空母航空管制所)”、F2飛行隊、先発しろッ!』


誘導員に手を振られながらゆっくりとタキシングを開始させた。

すぐ目の前で隊長機が離陸していった。


『3.4番機、シャトル結合部まで前進。次の発艦だ』

ANAF(陸海空軍)CIIS(中央情報統括システム)よし、兵装システムよし、計器、フラット……もよしっ」


機器の確認を終えた真司は誘導員の指示通りに、カタパルトの連結位置へと移動した。

係員がシャトルに前輪を結合し、射出準備完了の合図が出す。


『F2、3.4番機、発艦準備完了』

『F2中隊、発艦3秒前』


3番機の信司、4番機の拓篤、2人の機が揃い一息だ。カタパルトがバシュゥゥゥという音を響かせ2機同時に加速し初めた。


「カタパルトのこの加速…やっぱ最高だなァ」


F-2はあっと言う間に海へと出た。すかさず信司はエンジンのパワーを最大にして速度を上げていく。

寸分狂わぬ間隔を保ちながら高度と速度を上げ、右へと旋回していく。今さっき発艦したいずもはもう既に目下で小さくなっている。


『こちらいずもCATCC、スラッシュ聞こえるか?』

『こちらスラッシュ1だ、どうぞ』

『そこから方位330へ向かい、作戦区域上空の警戒及び制圧の援護をしろ。無線は共通回線へと切り替えろ。どうぞ』

『こちらスラッシュ1、了解した』


目の前に見えてきた2機と隣の1機と信司の1機、そのF-2A戦闘機4機で組まれた|スラッシュ≪第F2飛行隊≫は作戦区域(第821空域)"竹島上空"へと向かう。


——————————————————————————


発艦から約5分。既に当該島嶼(ポイントX)が確認できる程の位置まで来ていた。


巡航速度が2000Km/h以上にもなるジェット戦闘機だと数十キロ離れた場所にも直ぐに行ける。

そこまで早いのであれば空母は必要ないと思われがちだが、基地と空母の二か所から緊急発進(スクランブル)し、より早くより多くの戦闘機で威嚇や迎撃を行うという、"力"で争いを防ぐ事を主眼に置く日本政府の方針が色濃く出た戦略によって幾つもの空母が実戦配備されているのだ。



『…こちらトウゴウ1、こちらトウゴウ1、敵艦艇の数が判明。ポイントXより南西西ナナマルマル地点にKCV-I級、KDX-III級、KDX-II級が各フタずつの計6隻だ。なお作戦には変更を加えない…』


無線と同時に手元の画面にも情報が表示された。が、今回の作戦では配慮すべき対象ではないだろう。

航空隊の目的はあくまでも警戒任務、“もし”邪魔な艦艇がいたら仕事があるかもしれない程度の事だ。


『こちらマウス。間もなく警戒区域に到着する。このまま予定通りにいくぞ』


編隊を組みながら少し左へ寄ると、同じように動く他の飛行小隊も近付いてくる。

そうして十数機が集まり、ボーリングのピンのような形の編隊を組み始めたその時だった。


『こちらアルフォース1、前方よりLR-AAM(視界外射程ミサイル)接近を確認!数は10…いや20だ!』


他艦から先に出た他の編隊からだ。位置はそう遠くない。


『位置は目標地点西約サンマル、迎撃許可願う!』

『こちらトウゴウ1、迎撃を許可する』

『こちらアルフォース1、了解した。ニューロ隊全機は|ヒトヒト弾《SR-AAM,11式空対空ミサイル》を発射次第当該空域から離脱せよ!』

「動きが読まれてるのか…!?」


違和感を覚えて真司はそう呟く。

敵のKCV-I級空母は30機も搭載できない軽空母に分類される。

25発というと空母から出すとしたら敵勢力艦載機の半数程に当たる数である。それを全て1つの編隊に纏めるのはいくらなんでも一極に集中し過ぎだ。


『スラッシュとスカルは援護に回れ。他は周辺のけいか…』

『こちらスプリット1!前方フタゴーより約50の飛翔体を確認!』


無線の命令を言い終わる前に別の小隊からまた目撃情報が上がる。


『50だとッ!?いくらなんでも多すぎるぞ』


だれもが明らかに向こうの戦力が異常だと思った。

たった1つの島だけに、しかも正規戦でもないのに100発弱のミサイルが投入される訳が無いのだ。


『ロイド隊全機、全てのSRを発射して離散回避だッ!数が多すぎる!』

『こちらアルフォース1、6機が行動不能。敵機数は約40で近づいてくる、このままでは圧倒的に足りないぞッ!!』


想定していなかった報告が次々と上がって来る。


「まさか…」


薄々思っていたその予想は的中した。

この状況ではやりかねない、しかし流石にそんなことはしないだろうと楽観的に思われていた。

大艦隊で来たのももしもの為だが、半数以上の乗員が出番は無いと思っていただろう。

だれもが誰もが無いと思い一番避けたかった展開…



『……こッ…こちらトウゴウ1!!たった今…韓国から無制限(・・・)の武力行使が宣言されたッ!!各隊は臨戦体制で対応に当たれ、制空権を何としてでも維持するんだ!!』



そう、これが全ての始まりである"日韓戦争"の開戦だった。


命令やら目撃情報やらで怒鳴り声が絶えなかった無線に一瞬の沈黙が訪れた。

無制限の武力行使——恐らくそれは韓国軍が正規戦と同等レベルの攻撃を仕掛けてくるということだ。

既に狙いは一つの島だけではない可能性が高い、日本全域を攻撃対象としてもおかしくない筈だ。


『敵はもう目の前にいるぞッ!!これは戦争・・だ、全力で叩き潰してこい!!!!』


『こちらマウス1、各機分散!!迎撃に当たれッ!!』


隊列を組んでいた戦闘機は一斉に広がっていく。敵は既にわずか15Km先だ。射程の長いミサイルならば余裕で狙える距離だ。


『LR接近ッ!回避運動を取りながら反撃開始だ、ヒトヒト弾を打ち込め!!』


日本軍にはあくまでも先に手を出さないという建前があるため、敵の攻撃が確認できてから反撃、つまりは「やられたからやりかえす」を前提としている。

そのような制約があるので、こちらから遠距離ミサイルによる先制攻撃は基本的に不可能だ。いかに見えない場所から敵を落とすかが重要とされる現代で先制攻撃が封じられるのはかなり不利である。

そして、その制約が最も分かりやすく結果に出る例が今の場面だ。


『クソッ、奴らめ!好き勝手にしやがってッ!!』


対処しなければ命中率100%とも言われているLR-AAMミサイルの前ではどんな戦闘機でも無力化してしまう。ミサイルでの迎撃が失敗すると回避しようとしても逃げられない。

ANAFCIISで着弾予測は可能なので乗員ごと爆破されることはないが、確実に戦力は削られるのはかなり痛い。


『こちらアスター、敵機の情報だッ!』


前線の後方上空から支援をしているAWACS(早期警戒管制機)からだ。


『ポイントX西約フタマルにイーグルがフタフタ、ファルコンがヒトハチ、タイガーIIがロクの計ヨンロク。南西フタゴーにイーグルがフタヨン、ファルコンがヒトヨン、ファントムIIがフタマルの合計ゴーハチだッ!!健闘を祈る』


『タイタスとアルフォースは南西、近接戦闘を避けて持ちこたえろ!それ以外は西側だッ、各機とも簡単にはやられるなよ!!』


隊長機の命令で航空隊が2方向に分かれ始める。


「ポンコツの寄せ集めなんかにやられてたまるかよッ」


信司はそう呟くとエンジン出力を上げながら高度を上げる。

ほかの機も同様に上昇し始め、完全に戦闘状態になる。


『左前方に複数敵機、SR-AAMを確認!回避しろ!!』


警告音と共に目の前のモニターに接近するミサイルが表示された。


「上昇する」


僚機に声を掛けると同時に機種を上に向け、アフターバーナーを点火させた。


『おいっ…何を……』


一人飛び出していった真司のF-2は高度はみるみる上げていき、体へのGも増していく。レーダーに示されたミサイルは全て真司に向かって飛んできているのが分かる。


「よし、いいぞ」

『やめろ!そんなことできる訳がッ!!』


赤外線を感知して飛んでくるのが殆どのSR-AAMは強い赤外線を発するものに寄りやすい。予想通りだった。

制止を無視して、機体を水平に立て直す。高度は三万フィートオーバー。周囲には真司の機と近づいてくるミサイル以外は何もない。


「曲芸を見せてやるッ!」


着弾まで残り10秒、瞬時に機体を捻らせ右に回しながら機首を目一杯下に向けた。白黒になる視界の片隅で高度計と速度計の数字が高速で変わっていき……


『嘘だろッ!?』


その声と共に爆発音が響いた。

賭けは成功した。彼らが使ったミサイルは旧型でその性能は一世代昔のもので、真司が行った急旋回と急降下には追い付かなかった。あと一歩のところで爆発し、損害を一つも出せていない。

真司はアフターバーナーを止め、体制を元に戻しながら隊に戻る。


『流石は工廠の野郎だ、一人で百人力じゃねえか』

「…本体はッ……これからだッ!」


左前方には豆粒のようにしか見えないような小ささだが、敵を目視できる程の近さまで来ているのが見えた。まるで鳥の群れのように見える戦闘機が高速で向かってきている。

けたましい音のアラーム(警告音)がロックオンされた事を知らせる。


『来るぞッ!ぶっぱなせ!』


一次大戦から二次大戦終わりまで、約30年間に渡って様々な軍や空戦で用いられ続けてきた空中戦闘術"ドックファイト"。ミサイルの性能が向上した現代では"廃れた戦術"と言われ、米軍ではあくまでも最終的な保険として認識されている程である。

しかし、ここでは違った。ここ極東で四方の海を睨むアジア最恐と言われる軍では"生きた戦術"として使われていた。


『全弾命中ッ!』


敵が撃ったミサイルと味方が撃ったミサイルが十数マイル先の空中で衝突した。


『全機下降して散開、奴らを叩け!!』


中隊長が命令を下すと同時に編隊が下降し、直後、戦闘機集団とすれ違う。一瞬どころかはっきりとも見えなかったが、情報通りやはり彼らの方が数は優勢だ。

しかしそんなことは関係なかった。左上方へと急旋回して敵機を追いかける。


「相棒、まずは右端の奴等からだ」

『ラジャー』


真司の機の真後ろ、ほんの数メートルの位置にはぴったりと拓篤が付けている。

視界の左上には幾つかに分かれた敵機の集団が見えてきた。向こうも同じように右旋回をしてこちらを叩くつもりだろう。


「右に逸れろッ!」


ここからが戦闘機の見せどころであるドッグファイトだ。

遠くから見るに、旋回半径、旋回率共にこちらが有利のようだ。僅かにこちらのが旋回が早い。


「上昇しながら右旋回」


拓篤への指示を出すと同時に旋回が終わった。そのまま敵機の腹に向けて飛び込んでいく。

すれ違ったのは二機、片方は左に逸れながら、もう片方は直進だ。


「一機任せるぞ」

『ラジャー』


直後、機体を傾けると同時に目一杯右に曲がりにいく。左に逸れこちらを待っていた敵機も予想通りそれに反応した。

機首を上に向けて上昇し始め、丁度向きが平行になる瞬間に下降する。小さめな"ハイヨーヨー"だ。


しかし、それはもう読めていた。敵が下降すると同時に上昇を始めて目論み通りの機動にはさせない。





『撃墜』

「左からもう一機、そのまま右旋回だ」

『OK』


信司は左へと旋回し、拓篤は右に回り込む。

直後、



ーー




あっさりと敵を落とすが仕掛けた側の真司も影響が無い訳ではない。下降時のものすごいGであちこちの毛細血管はプチプチ音をたてながら切れていて意識も朦朧として気を抜けば倒れてしまうレベルだ。

しかしここは戦場、そんなことでいちいちぶっ倒れるわけにはいかない。


「まずは一匹!」


そう叫ぶと直ぐにレーダーを見て次の敵を探す。

どうやらこのちょっとの時間で既に10数機は落としたようだがまだまだ戦場は荒れている。やはり数を減らされているこちらの方が劣勢のようで、不利な戦闘を続けている機も多い。


『…こちら管制!地上作戦は第一段階完了、ホークスは地上支援を開始せよッ!!』


本来の計画も中止せずに進んでいるようだ。


『ホークス1、了解ッ!!』


向こうは本格的に動き出すようだが、ドックファイトを繰り広げているこちらにはあまり関係ないだろう。今は目の前の敵を全滅させればそれで十分だ。

こうしてるうちにも後ろを取るつもりなのか、後ろから近づいてくるのがいる。


「次はお前だなァ」


後ろを取られては圧倒的に不利な状況になるので速力を上げて逃げ始めるが、両軍の戦闘機が入り乱れてるここで簡単には振り切れない。

直ぐに追いつかれ後ろを取られると、蛇行シザーズしながら逃げ始める。


敵も見てるだけではない。蛇行するこちらを機銃で狙い打ちしながらこちらの出方をうかがう。

どこかでミサイルを打ち込むつもりなのだろう。だがそうはさせない。


真司は突然宙返りをはじめ、敵を振る行動に出る。敵も後ろを取られまいと付いてくるが若干反応が遅れた。


「ここだッ!」


ちょうど敵から見て真上の位置に来たときに宙返りを中断して急降下し始める。再びものすごいGが掛かるが今は気にしていられない。

それに気づいた敵は追いかけようとするが、落下時の加速により距離を離される。


ここまで引き離せば攻め方はいくらでもある、旋回して次の行動に移ろうとするが…運が悪かった。

ミサイル接近のアラームが鳴り響き始めるのと同時に、斜め前方に新たな敵機の姿が見える。


『ピーッピーッピーッ……』


ANAFCIISからミサイル接近の警告音が鳴り響く。


「クソッ!」


即座にフレアを出して避けるが、今度は引き離した筈の敵機が急接近して機銃を打ってくる。

流石にこれは避けきれない。回避行動を取るが"ガン"という音をたてて弾丸が機体にめり込む。


被弾の影響か、また警告音が鳴った。画面を見ると燃料タンク部分がオレンジだ。このままだと引火する危険性があるが……もうそんな事を考えている余裕は無い。

1対2を生かした連携攻撃を避けるので精一杯だ。


「こちらスラッシュ3!援護はまだか!?」

『こちらネクサス1ッ!今向かっているところだ、持ちこたえてくれ!』

「あと何分だ!?」

『5…いや、4分で行く』

「4分は持たないッ!!もっと早くッ……」


そう言い切ると同時に機体をぐっと捻って急旋回する。とたんに、そのすぐ横を機銃の弾が通り過ぎていく。少し遅ければ被弾していた。


だが避けきれて安心している暇はない。片方が攻撃を終えたらすぐにもう片方が攻撃をしてくるため、少しでも気を抜いたら蜂の巣になってしまう。


「ッ…埒があかねぇ…」


反撃しようと左へ右へと旋回して敵を振ろうとするが中々うまくいかない。それどころかこちらが逃げまとう形になってしまう。


「ならこれはどうだッ」


唐突に機体を上に向けて宙返りを始める。さっきと同じ戦法だ。ちょうど半周ちょっとを回って敵の反対側に来たら急降下を始めて…


『ピーピーピー』


そのタイミングで再び警告音が鳴る。


「何?!どういうことだ!?」


敵は真反対、こんなところでミサイルを撃ってもこちらに飛んでくる筈がない。なのにどうして接近してくるミサイルがあるんだ?なぜだ?


ふと真上を見上げると、こちらに機体を向けている敵機が見える。こちらの作戦に引っ掛からずにこのタイミングを待ち構えていたようだ。


「クッソォォォォォ!!!」


全速力で急降下するがそんなに長くは無理だ、信司の体が持たない。かといって水平な状態に戻してもすぐにミサイルが着弾して木っ端微塵だ。


Gで自滅するのは論外、そう決めた信司はフレアを使いまくってミサイルの軌道を外しながら機体を立て直す。もちろん想定通りすぐ敵機が寄ってきて機銃で狙ってくる。


「ガンガンガンガンッ」


もろに被弾する。もうこれは仕方がないと諦めていたが、やはり被害は大きい。もう聞き慣れてきた警告音がまた鳴る。


『ピッピッピッピッ』

「ヤバイぞ…この音は…」


モニターは既に真っ赤だ。つまりはもうこれ以上は飛ぶだけでも難しいことを示している。

何とか持ってくれ、そう願うが叶わなかった。エンジンからはボンという音をたてて煙は上がり出力が下がる。操作系の機械もかなり破損したようだ、上手く機体を動かせない。


「クソッ……この俺がッ…こんなところでッ……やられるなんてッッッ!!!!」


一息おいて敵が巡航ミサイルを撃った。

まっすぐな軌道を描くそのミサイルは何も抵抗できない信司の機に突き刺さって…………機体は木っ端微塵に爆散した。




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今回の兵器紹介


・いずも型航空母艦


基本性能

基準排水量:55,000t

満載排水量:65,600t

全長:317m

全幅:40m

速力:27kt


兵装

高性能20㎜機関砲 CIWS:2基

11式改短距離艦対空誘導弾:2基

RAM近SAM 21連装発射機:2基


機関:IHI製K2700型ガスタービンエンジン 3機


艦載機

F-2B:37機

F-3B:2機

UH-15M汎用ヘリ:5機

SH-27対潜ヘリ:3機

計47(+a)機


同型艦数:6

1番艦いずも

2番艦あまぎ

3番艦ふじ

4番艦するが

5番艦おうみ

6番艦とさ



1996年(平成8年)から導入された日本海軍の汎用大型空母。


データ上は一見普通の空母に見えるが、いずも型空母最大の特徴はカタパルトにある。

戦後、大日本帝国海軍が開発できていなかった油圧式カタパルトを日本海軍が独自開発した上で改良を続け、40年の歳月を掛けて生み出した「VD-2型油圧蒸気複合カタパルト」。それによって原子力機関なしでも他国採用の電磁式カタパルトに劣らない発艦性能を実現し、それを初めて実用搭載したのがこの艦である。

これにより日本軍は歴史上初となる本格的なCTOL機艦載正規空母を所有することとなった。


カタパルトの他にも角度8.5のアングルド・デッキや試作ANAFCIIS通信装置(正規仕様に改修済)等の新しい技術を多数使用しており、以降に建造された日本軍空母や近隣国軍隊に大きな影響をもたらしている。




・F-2戦闘機(通称"ハイパーゼロ")


基本性能

乗員1名(F-2A他)

全長15.52m 全高4.96m

エンジンIHI製F110-IHI-129(換装後及び2000年以降製造はIHI製J-10-5next)

最大速度マッハ2.0

フェリー飛行時航続距離4,000km(J-10-5next搭載機は4,550km)


兵装(F-2B・要撃時)

JM61A3 20mmバルカン砲

11式空対空誘導弾 (AAM-6)×8 (SR-AAM,ヒトヒト弾)

13式空対空誘導弾 (AAM-5)×6 (M/LR-AAM,ヒトロク弾)


派生型

F-2A(単座、空軍機仕様)

F-2B(単座、海軍機仕様)

F-2C(複座、空軍仕様)

F-2D(複座、海軍仕様)

F-2S(単座、ステルス仕様)

F-2AM2(Aの改良版)

F-2BM2(Bの改良版)

F-2V(ベトナム空軍仕様)

F-2I(インドネシア空軍仕様)


1989年(平成元年)から導入された国産の汎用多任務戦闘機

1970年代当時の日本空軍は少数輸入の第3世代航空機F-4と比較的劣等な国産JF-1戦闘機を主力とし、圧倒的な航空戦力不足に悩まされていていた。そこで抜本的な戦力向上と国内技術の発展を兼務し、米軍F-15戦闘機を上回る機能を目標に作られた第4世代ジェット航空機。

戦後初の純国産開発に成功した日本の誇る戦闘機で、10年以上に渡って製造された上に海外への輸出も成功した。

特徴は『良く曲がる』ことで、愛称のハイパーゼロもその機体運動の高さに由来する。


派生型が多数あり、エンジンや兵装等の換装、改修を行ったF-2αや試作ステルス機のF-2S、輸出機仕様のF-2V/Iなどがある。



・陸海空軍中央情報統括システム(ANAFCIIS[Amry , Nary and Air Force Central Information Integration System])


2004年から日本軍で採用された統合型情報共有システム。所謂『C4Iシステム』の新制日本軍版。

軍事衛星や早期警戒管制機(AWACS)、早期警戒機(AEW)、各地レーダーサイトからの情報を基本に、作戦展開中の航空機や艦艇の情報も統合、可視化して共通状況図を製作したりと、日本の誇る高い情報戦を支える極めて重大な役目を持つ。

特徴的な設備として通信中継機能を人工衛星の他にも軍事通信用航空機(E-2-MRJ)が導入されており、膨大な量のデータ送信機能を可能として戦術的航空支援においては圧倒的な優位に経っている。

近年では日本軍全ての兵器だけならず各隊員の所有する電子機にも一部機能が搭載されているため、遠距離からのロケット弾による支援攻撃や隊員への一斉命令などが容易に実効可能となったという強みもある。



・佐世保基地所属 第三国防艦隊群空母第311小艦隊


第一の呉、第二の横須賀に次ぐ日本第三位の艦隊数を誇る佐世保基地に所属する空母艦隊。

空母2隻(いずも・きい)、ミサイル駆逐艦2隻(あしがら・くらま・あき・ながら)の計6隻で構成される小艦隊で、東シナ海や対馬海峡、日本海などの海域で哨戒任務をしている。


通常の領空侵犯航空機へのスクランブルなどはもちろん、有事には他のミサイル駆逐艦隊と共に現場へ急行し、前線にミサイル駆逐艦隊、後方に空母艦隊という形態をとって防衛や護衛など多種多様な場面にも対応できる。



・韓国海軍KCV-1型軽空母(ソウル級軽空母)


基本性能

基準排水量24.000 満載排水量28,640

全長232.4 全幅29.3

速力25ノット


兵装

ファランクスCIWS 2基

RAM近SAM RIM-116 2基


艦載機

AV-8BK ハリアー II 22機

SH-60 シーホーク 3機

計25機


2006年から建造された韓国海軍初の空母。これまで日本軍の軍拡に対抗しようと既存の艦を改造して空母を作っていたが、それでも十分な戦力にならなかったために新造された。

当初は60,000t級の正規空母を建造予定だったが、対北への陸軍増備の兼ね合いや莫大な建造費用の負担等の理由によって軽空母に変更された経緯がある。

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