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僕らの箱庭

白磁

作者: 東亭和子
掲載日:2016/06/12

 制服から覗く白い腕を美しいと思った。

 その腕は陶器のように白く、触れたら冷たいのだろうかと考えた。

 俺は変態か?

 生物教師の中井博は頭を抱える。

 俺は欲求不満なのか?

 自分が恐ろしく感じた。

 まだ大人になりきれていない子供。

 そんな境に生きる生徒たちは時に無謀で美しい。


「どうした、中井?」

 化学教師の西崎裕一が不思議そうに見ている。

「…人生について考えていた」

 中井の答えに「はぁ?」と西崎は眉をひそめて答えた。

 ちょうどいい、西崎に付き合ってもらおう。

 今日は酒を飲みたい気分なのだ。

「…お前、今日暇だろう?付き合え!」

 そう言うと無理やり西崎を連れて学校を出た。


 酒は飲んでも酔わない。

 それくらい中井は強かった。

「教師って言っても所詮は人間。

 己の欲望には逆らえないものだよな」

 遠くを見つめて中井が告げる。

 その言葉に西崎は苦笑した。

「どうしたんだよ?

 何かあったのか?」

 お前変だぞ、と西崎は言って酒を飲む。

「一瞬、女子高生にときめいた。

 俺は変態なんだ」

 中井の言葉に西崎は酒を豪快に噴き出した。

「ちょっ、汚ねぇな! 

 何してんだよ!」

「お前が変なことを言うからだろう!」

 西崎がむせながら抗議する。

 だって仕方ない。

 そう思ったのだから、と中井はつぶやく。

 冗談じゃない、それなら俺は変態か!と西崎は心の中で叫んだ。


「今時の女子高生は侮れん。

 大人顔負けだ。

 それが恐ろしくも可愛らしい」

 中井の言葉に西崎は曖昧に頷く。

「ああ、教師になんてならなければ、こんなに悩まなかったのに」

 中井はため息をついた。

 教師は天職だと思っていた。

 それなのに…!

「…人生大いに悩めよ。

 但し、犯罪はするな。

 そうなる前に相談しろよ。

 何とかするから」

 西崎は真剣な顔で告げた。

 暗そうなこの化学教師は意外にまともな事を言うし、頼りになることを知っている。

 眼鏡をはずし、前髪をかきあげると意外と格好いい。

 普通にしていたらモテる方だと思う。

 以前聞いたことがある。

 何故、前髪を短くしないのか?と

 モテる必要はない、という潔い答えに中井は好感をもったのだ。

 それから中井は何かあると西崎と飲みに行くようになった。

「サンキュー。

 もし変態になりそうだったら相談するよ」

 話をしたら何だか吹っ切れた気がした。

 おお、と言って西崎は酒を飲む。

 でもしばらくはあの美しい肌に悩まされそうだ、と中井は思った。


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