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悲しみの果てに ~探偵物語〜  作者: 白井花乃
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『そして、浮気相手の女性は、男から肉体だけを求められている事を全て理解し、納得した上で行為に及んでいるのです。そういう行為を続けていると、男は女性の肉体に飽きが生じてきます。相手女性はそれも分かっております』


ゆきは続きの話を乞うように探偵に質問を投げかけた。


『それからはどうなるのでしょうか』


『はい。浮気関係の男女が性行為を行う場所はホテルが殆どです。相手女性が実家暮らしや既婚者の場合、この時点で関係は破綻してしまいます。元々が肉体関係しか存在しない為、前述の通り、女性の肉体に飽きると男は自然と離れる形になってしまいます』


ゆきは旦那の浮気相手が、この方程式に当てはまっていないと判断したのだろうか、探偵に質問を続けた。


『そうでない場合は、未婚や一人暮らしの場合でしょうか』


『その通りです。未婚の一人暮らしの女性は次の手を打ってきます。女性という生き物は、自分が作った料理を全部食べてもらった上で美味しいという表現を男に求めますよね。この女性の心理を男側も十分理解しております』


ゆきはそう聞くと探偵から目線を反らし、テーブルの下の方へ再び視線をやった。探偵は女性の表情を確認して本筋へと話を進めた。



『女性の自宅に上がり込んだ男は相手が作った料理を自らの口に押し込み、さらに自分が持っている最大限の言葉を用いて、テレビの食事レポーターの如く、女性の手料理を褒め称えるのです。そうすると女性からのご褒美としてセックスが待ってます。男に対して、こうした一つの試練を課し、見返りにご褒美を与えるのです。快楽の間に少しの障壁を作る事で、只の快楽的なセックスではなく、男に達成感を味あわせる事が出来ます。これを続けるだけで男は簡単にアドルフの犬になるのです。しかし、これだけではありません。この行為には、もう一つの悪が存在します』


ゆきは自分の旦那の単細胞に怒りを感じているのだろうか、膝の上で握り拳を作り小刻みに震えている。ゆきの様子を確認した探偵は慌てた。


『いっ今言っているのは、あくまで自分なりの解析です。全ての男女関係に当てはまる訳ではありませんので、参考程度に聞いていて下さい』


『はい。分かっております。続けて下さい』


遅すぎる前置きに慌てて喉が渇いたのか、探偵はマスターが入れたインスタントのアメリカンコーヒーを口に運ぶ。コーヒーはかなり冷めており、カップの下の方にコーヒーの素が沈殿している。男はスプーンを手に取り数回かき混ぜ、さらに話を続けた。






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