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悲しみの果てに ~探偵物語〜  作者: 白井花乃
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女性はゆっくりと席に腰を下ろした。


『はじめまして、中根探偵事務所の中根と申します。宜しくお願い致します』


『あっはい、すみません。岡田ゆきと申します。宜しくお願いします』


探偵が挨拶すると、ゆきはこちらに目を合わせることなく、テーブルの下の方に目線をやったまま静かに挨拶をした。

普通のサラリーマンの打ち合わせや商談、企業面接などはお互いが席に着く前に一度自己紹介なり名刺交換をするのが一般的だろう。

しかし、浮気調査や行方調査は男女関係なく、こういった挨拶が普通なのだ。依頼者は旦那や妻の浮気に対し、かなりナイーブになっている。もうその事で頭の中がいっぱいになっており、四六時中その事で悩み苦しんでいるのだ。そう考えると、ろくな一般的な挨拶、礼節などかまっている暇がない。この事から周りの人間関係も破綻している場合がほとんどで、身内にも相談出来ないから探偵事務所の玄関を叩く。


『ガシャッ』

例のマスターが女性の下へ無造作にコーヒー運んで来た。

探偵はマスターの予想通りの行動に若干の苦笑いを浮かべ、ゆっくりと席に腰を下ろした。



2人の間に数秒の沈黙と張りつめた空気が流れる。

依頼者との面談など慣れる事はない。100の案件が有れば100通りの依頼者がいる。共通して言えるのは、依頼者は皆、ギリギリの精神状態で探偵社に来る。コップの中になみなみの水が入っており、それは表面張力でコップからこぼれずにいるだけで、あと一円玉が一枚入るだけで溢れ出しそうな精神の状態だ。


『早速ですが、御電話でお問い合わせの通り、御主人の浮気についてのご相談で宜しいですか?』

探偵が質問を投げかけるとゆきは首を動かす事無く、目でうなづいた。

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