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悲しみの果てに ~探偵物語〜  作者: 白井花乃
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9

翌日、探偵は一人の男を事務所で待っていた。


『中根さん、久しぶりっすね。元気でしたか』


『あぁ。元気にしてたよ。宙太は相変わらず、元気そうだな』


浮気調査は単独では何かと困難な部分が多い。調査の時に必要な人材をあらかじめ確保し、状況に応じて調査員を招集する。

宙太は20歳の男性調査員で、尾行のスペシャリストだ。


宙太は小さい頃に両親を交通事故で亡くしている。

両親は幼い宙太を連れて3人で海水浴場に向かっていた。もうすぐで到着すると思った時、3人が渡っている横断歩道に一台の車が猛スピードでこちらに突っ込んで来た。あまりのスピードに逃げる余裕など無かった。宙太は両親の先を歩いており、間一髪の所で難を逃れたが両親は即死だった。


事故直後、車に乗っていたカップルが降りてきて、こう言ったそうだ。


『お前の親か。阿保やな。ぼけっとしとるから死ぬんや。お前も気をつけろよ』


男はそういうと再び車に乗って走り去ってしまい、犯人のカップルは未だに捕まっていない。



事故以来、宙太は親戚中をたらい回しにされた。宙太は家出を繰り返し、親戚では面倒を見きれないと結論を出され、児童養護施設に預けられる事になった。だが、施設に行っても宙太の家出癖は抜けなかった。中学校を卒業すると厄介者を追い払うように施設を退園させられ、身勝手な大人達から15歳の少年は世間に投げ出された。


そんなある日、探偵の元に一人の女性からストーカー被害の調査依頼が来た。なんでも最近、誰かに付けられている様な気がするので調査をして欲しいとの事。探偵が調査を進めていくと確かに一人の男が女性を付け回していた。その男こそが宙太だった。


探偵は宙太を捕まえて問いただした。すると宙太は両親を殺した犯人を捜していると言った。

宙太は幼い頃に見た犯人の顔を鮮明に覚えており、その記憶を頼りに犯人を捜し続けていたのだ。

親戚の元からの家出も、施設からの脱走も全て、街に繰り出して犯人の風貌に似ている人を見つけては尾行し続けていた。犯人では無いと判断すると、また街に出て行き犯人を物色をするのだ。


宙太とはそんな出会いだった。


この頃から宙太の尾行術はプロの技術を遥かに凌駕していた。宙太に尾行で勝る、探偵や刑事は多分居ないだろう。それからは宙太と数多くの案件をこなしてきた。

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