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悲しみの果てに ~探偵物語〜  作者: 白井花乃
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序章

朝起きて、トイレに向かう。冷たい便座に腰かけて、勢いよく放尿する。

尿からは白い湯気が立っている。


『もうそんな季節になったのか、そろそろ灯油買わないとな』


と男は独り言を呟きながらパソコンを開けて、ネットに繋いでニュースを確認する。

テレビも無い部屋の中には敷きっぱなしの布団にスタンド灰皿が置いてあるだけ。

毎日同じ時間の繰り返し、起きてから寝るまで基本的に男は家から一歩も出ない。

少ない貯蓄を切り詰めて事務所兼住宅で生活をしている、この男は私立探偵だ。

今月も終盤に差し掛かっているが、まだ一件も仕事の依頼がない。

今日も何事も無かった様に過ぎ去って行くのだろうか、

そんな事を考えていた時に一本の電話が鳴り、男が携帯電話を手に取った。


『はい。中根探偵事務所です』


『すみません。ご相談したい事がありまして』


聞こえてきたのは、推定30代後半の女性でどこかくたびれている様な声だ。


『旦那の様子が最近おかしくて、もしかすると浮気してるんじゃないかと思って・・・』


探偵は世間でもあまり認知されていない何処かグレーで不透明な業界だろう。テレビや小説で登場してくる探偵とはかけ離れた地味な仕事が多い。刑事からの合同捜査依頼や殺人事件を名推理で瞬く間に解決するなど有り得ない事だ。依頼の多くは浮気調査が9割で、後は一般人からのペットや人の捜索依頼である。

今回の電話も旦那の浮気に悩む主婦の様だ。


『では、一度面談にてご相談を承りますので駅北口の喫茶店アスナロで14時に待ち合わせに致しましょう』


『はい。宜しくお願い致します』


探偵は電話を切ると、急いでジーパンを履き、クシャクシャのジャケットを片手に家を後にした。





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