俺の昼食風景
七海と揃って遅刻していった日の昼休み、俺と慎平と遠藤の男三人は学食で昼飯を食べている。どうやら先に学校へ行った慎平は、俺の元気がないのを心配して、いつもの面々に放課後、どこかで俺の事を元気づける為の催しを企画してたらしい。愛想を着かされたとかそんなヒネた考えを持ってた自分が恥ずかしい。
しかし流石は主人公だ。ボクは君のその心意気に感動を覚えた。今なら遠藤がお前に惚れた気持ちが分かるぜ。……まあ、俺は惚れないけどな。
しかし、そんな計画も俺と七海がぎゃあぎゃあ騒ぎながら現れた時点でご破算だ。
悪いことをしたと思ったのだが、目の前に座るお人好しはお前が元気になったならそれでいいと笑ってくれたんだ。やっぱり惚れていいだろうか。青春学園ラブコメに少しぐらいアーッ♂な展開が有っても……え?だめ?需要ない?
因みに男三人衆の席割りだが、俺と慎平が向かい合わせに座り、俺の隣に遠藤が陣取っている。心なしか遠藤の椅子の位置が近い気がするのは俺の被害妄想なのだろうか。
若干ケツのあたりがムズムズするのは友を信じ切れない俺に天が与えた罰なのだろうか。まあ、ケツがムズムズする程度の罰なれば俺は甘んじて受けたいと思う。自分の純血がかかっているのだ。
先程から、談笑しながら昼飯を取っていたのだが、そのテーマが女子のパンツが見れるしたらパンチラかパンモロ、どちらがより有り難みがあるかというどうしようもないものだった。男が集まれば、こんなもんだ。因みに俺はパンモロ派、慎平はパンチラ派だ。
要は恥じらいがあるかどうかが重要なのだ。恥じらいがあれば、見える面積は大いに越したことはない。これだけは譲れない。慎平は慎平で譲れない物があるらしく。互いに譲らず、白熱した論争が食堂で繰り広げられていた。
遠藤は……どうでもいいとか言ってたな。
まあ、お前はそうだろうよ。つーか離れろ暑苦しい、お前パーソナルスペースって知ってる?距離感おかしいんだけど……
「それにしてもお前、朝あれだけ凹んでたのにあの短時間で何があったんだよ」
あまりにも近づいてきた遠藤を両手で押しのけていた俺に慎平がそんな事を言ってきた。
「別に、少し七海とな」
正直、あまり格好のいい話ではないので言いたくなかった俺は、慎平の問に対して適当にお茶を濁して対処するつもりだったのだが、それを許さない輩が、俺の横に引っ付いている。
「七海とな……そうかお前七海と何かあったのか!?言え!何があった!?数時間前、お前と七海の間に一体何があったんだ!?」
ガシッと肩を捕まれ身体を揺さぶられる。遠藤、普段の飄々としたお前はどうした。なんかキャラ違ってないですかねえ。
「はーなーせー」
ガクガクと揺さぶられながら上げた抗議の声はなんともマヌケなものだった。
「話すのはお前だ鋼!さあ吐け!洗いざらい全部だ」
そっちの話すじゃねえ!どんだけ混乱してんだテメエは!
あ、やば揺さぶられすぎてなんか気持ち悪くなってきた。
「……吐きそう」
「そうだ、吐け。溜め込んだもん全部俺にぶちまけろ」
本当にぶち撒けたくなってきた。いやぶん殴りたくなってきた。
「ち、ちが……そうじゃな……で、出る。マジ出そう」
なんでお前ちょっと嬉しそうなの!?顔赤くしてんじゃねえよ気持ちわりい!つーかもう本当にやばい、こんな所で俺はやってしまうのか?体内で生成したペースト状の物体を……俺の学園生活を崩壊させ兼ねない禁断の所業を……それだけはダメだ。
「おい、遠藤!鉄心の顔色がおかしい!」
よく気が付いた主人公。今はお前に抱きついて頬ずりしたい気分だぜ。
「……どうした、体調が悪いのか?おい、体調が悪かったならなんでもっと俺に早く言わなかった!」
焦った遠藤はますます俺を激しく揺さぶり始めた。盛大に空回りしてるんだよ。テメエいい加減にしろ。
「おま……とにかく離せ……ヤヴァい、本当にヤヴァいから」
そこまで言うとようやく遠藤は自分の揺さぶりが俺にダメージを与えて居ることに気が付いたらしい。
「あ、わりい」
そんな軽い謝罪と共に俺の両肩は遠藤の魔の手から開放される。こみ上げる嘔吐感を暫くこらえようと机に突っ伏した俺の背中を遠藤の手は優しく撫でてくれた。はたき落としていいだろうか。
嘔吐感が収まって、顔を上げた俺がまず最初にやったこと。それは気遣わしげな顔の遠藤の頭を力いっぱい引っ叩くことだった。
「鋼……何を……」
何、捨てられた子犬みたいな目してるんんだよ。少し罪悪感感じちまうじゃねえかよ。何だ俺が悪いのか!?これ、俺が悪いのか!?
「テメエの揺さぶりで危うく今食ったもん全部出すとこだったんだよこのバカヤロウ」
狸うどん290円請求するとこだったんだぞ。この野郎。
「それは、お前が七海とよろしくやってたなんて言うから」
「言ってねえよ!」
よろしくってなんだよ!勘弁してくれよ。。
「そうなのか?七海と何も無かったのか?」
「何があればお前は満足なんですかね」
「何かあってからじゃ遅いんだよ!」
「いや、意味分かんないんだけど」
こいつ、本当にもったいない、イケメンなのにイケメンなのにイケメンなのに。大事なことなので三回言いました。
「七海とは、何もなかったんだな?」
「ねえよ」
無いはずだ。
「本当かよ」
「こいつ面倒臭え……」
「遠藤ってもしかして鉄心の事が好きなのか?」
……本当にお前はナチュラルに地雷を踏んづけるやつだよな主人公……。
「何を言うのかと思えば、慎平、お前のそういう所、俺は嫌いじゃねえぜ」
慎平の一言で、何時もの調子に戻った遠藤はそんな軽口を飛ばした。
いや、よくみたら顔から玉のように汗が噴き出している。頬も心なしか上気している。
なんか、ごまかそうと必死なんですけどこの人。
「ま、まあお前のそういう冗談は何時ものことだったな。はははは」
「そう、何時ものことなんだ。ははははは」
このクソ主人公!感づいてそれ以上踏み込むのを辞めやがった!なんでそういう時だけ無駄に鋭い。何時もの鈍さはどうした。あれか?主人公補正か?俺にもくれ、その補正くれ。
「鉄心」
俺の思いが通じたのか、慎平が俺をまっすぐ見据える。おお、くれるのか?主人公補正ってやつを、この俺にも。
「強く生きろ」
ナイスサムズアップ。
……その親指へし折っていいだろうか。




