《王都グランディア》
そろそろミズガルドの話も終わりに近づいてきました!
私の目の前、木々の間から見えるその巨大な城、グランディア城。
クロウ曰わくあの城のある街が王都グランディアっていうらしい。
「グランディア城にはかつてミズガルドの王がいたらしい」
「なんで過去形? 王都なんだから今もいるんでしょ?」
「いや今、王はいない。もっと正しく表現するなら王は追放されたんだ」
「追放? 誰に?」
「グランディアの民にだ。王はそのあまりにも冷徹な考えのせいで民から嫌われていたんだ。そして2年前、そんな王に耐えきれなくなった民達が王をグランディアから追放した、多くの犠牲をだしてな!」
「犠牲ってどのくらい出たの?」
「王1人を相手に1000人で挑み50人が死んだ」
「そんなに強いの? それに1000人で挑んで追放しか出来なかったの?」
「あぁ、王は魔術、剣術共に才能に恵まれていたからな。今の結奈でも勝てないだろうな」
「でもその王に勝てば次の世界に行けるんだよね?」
「そうだな。だがまずは王に勝てるように強くならなきゃいけないな」
私は城の見える方にひたすら走り続けた。
途中、見たことのない魔物に追われたけど、無視して街に急いだ。
1時間後
「後少しでグランディアだね! もう疲れたから早く休みたいよ」
「じゃあここからは歩いて行こう。歩きでも10分もあれば着くだろう」
10分後
「あの門が入り口?」
「あぁそうだ」
「でも橋が上がってて渡れないわね」
「能力で向こう側まで行っちゃう? それとも待ってた方がいいかな?」
「取りあえず敵ではない事を伝えた方が良さそうだぞ」
クロウは、門の上から何十人もの兵士が弓を引いてこっちを狙っていたのを見てこう言ったんだろう。
「うわぁあまり歓迎されてないみたいだね。取りあえず両手上げとこうっと」
私が両手を上げてしばらくすると橋が下り、門が開いた。
「入って平気そうだね。」
私が橋を渡ろうとすると、急に上から矢が飛んできた。
「えっちょっと、ストップザワールド」
「ふぅ危なかったぁ。なんで急に弓矢撃ってきたんだろう?」
疑問を抱きながらも時を止めたまま橋を渡り終え、街に入った。
「一応ダガー抜いとこう」
ダガーを腰から引き抜いて能力を解除した。
「誰が私に矢を撃つように命令したの? 出てきなさい!」
私は普段出さないような大きい声で怒りを込めてそう言った。
すると、1人の騎士のような人が門の上から降りてきた。
「グランディア軍連隊長のダリルだ。私が部下に命令した。この街に参加者が来るという噂が入ったので」
「それで何で撃ってきたわけ? 普通なら死んでたよ?」
「そうでしょうね。ですがそのくらいしなくては参加者かどうか見分けられないので。しかしあなたは見事無傷でここまで来た、ということはあなたが参加者なのですね?」
「そうだよ。でも私は長時間の移動で疲れきってるのにいきなりそんな事してくるのはどうかと思うよ?」
私はダガーをしまいながらダリルに向かってたっぷりと文句を言った。
「はい、本当に申し訳ありません。二度とこのようなことの無いように致しますので」
「まぁ分かってくれれば良いけどさ。それでこの街に王がいないって聞いたんだけど、今、王はどこにいるの?」
「その話でしたら、グランディア城でゆっくりとお話しします。もう日も沈むので食事をとりながらどうですか?」
「はい、じゃあそうさせてもらいます」
そう言うと私とダリルを守るように兵士が両側から付いて来た。
城まではひたすら真っ直ぐメイン通りを歩き続けた。
「リーディアとは比べ物にならないくらい大きいねこの街」
「そうだな。だがリーディアのように賑やかってわけじゃないな」
「そうね、この街は何か空気が重く感じるわ」
確かに街自体はリーディアとは比べ物にならないくらい大きいのに通りに人がほとんど歩いていないのだ。
私達は街を見て疑問に思いながらもグランディア城に到着した。
到着したあと、長いテーブルのある広い部屋に案内された。
「ここでご飯食べるんだね! でもこんなに広いのに私達だけで食べるの?」
「はい、王の話はあまり兵士達の前では話せないので。」
私達が席につくとすぐに飲み物と食事が運ばれてきた。
「早っ! 予め用意してあったの?」
「いえ、グランディア城ではいつでも食事がとれるようなシステムになっていますので」
「へぇそうなんだ。それで王の話なんだけど」
「はい、王は2年前私達の手で追放しました。現在は旧帝都にあるディオス城に籠もっています」
「旧帝都ってどこにあるの?」
「旧帝都は100年前まで王都だった場所でグランディアから西に数10キロの地点にあります」
「王がいなくてこの街やミズガルドは大丈夫なの?」
「とても大丈夫と言えた状態ではないです。我々も最善は尽くしているのですが、王がいないという不安でこの街はこの有り様です。ミズガルド自体は問題ないですが」
「それで私に王を倒して欲しいと?」
「はい、王が倒されれば新たな王を選出する事が可能になりますので」
「私としても早く次の世界に行かなきゃいけないし、なるべく早く倒せるように頑張るよ」
王の話と食事を終えた私達はダリルが用意してくれた家へと案内された。
「この家をお使いください。何か聞きたいことがありましたらグランディア城へ来てください」
「はい、わかりました」
ダリルを見送ったあと、ずっと聞きたかったことをクロウに聞いた。
「クロウ言ってたよね。荷物を持って行かなくて良い理由を到着したら話すって」
「じゃあタンスの中を見てみろ。リーディアの家にあったのがそのまま入っているだろ?」
言われた通り見てみると確かに服などがそのまま入ってた。
「ホントだ! でもなんで?」
「それは俺にもよく分からん。ただ参加者の家にあるものは、どの家にも全く同じようにある」
「へぇ変なの。でも私もこの世界に来て少し学んだからね。気にしたら負けだって!」
「ほぅ結奈も冒険者らしくなってきたな」
「おっ珍しくクロウに誉められた。」
「さて今日は遅いからもう寝ましょう」
「そうだね。明日からまた依頼とかやらなきゃいけないしね」
リーディアから王都グランディアに旅をした長い一日だった。
とうとうミズガルドの旅も終盤に来たのかな?