《魔法と精霊術》
書いてたら途中で切るに切れなくなってしまい普段の2話分くらいの長さになってしまいました。
今回は魔法の話がメインです。
呪文が何語をベースにしてるのかなどの質問や感想があればお待ちしてます。
もちろん最初から読んでくれるとなお嬉しいです。
魔法とは、体内もしくは大気中の魔素を使って魔術を使用すること。
扱える魔素の絶対量が多いほど高位の魔法が使える。
精霊術とは、精霊と契約することでその精霊の持つ固有の能力を使用出来るようになること。
とまぁクロウが魔法と精霊術について簡単に説明してくれた。
「でも今の説明だと、いろんな精霊と契約した方が魔法を覚えるより強くなるんじゃない?」
「そうだな。でもな精霊を契約するためには精霊を召喚しなければいけない。要するに魔法を使えなければ精霊術も使えないと言うことだ」
「へぇよく分かんないけど魔法が先って事でしょ。なら早く魔法の修行をしようよ」
「やる気はあるみたいだな。じゃあ俺が今から言う中で好きな物を1つ選べ。火、水、土、風、雷」
「風かな。風って何者にもとらわれない自由な感じがするし好きなんだよね」
「じゃあ結奈に風の適正があるか確かめてみよう。まぁ最終的には全属性やるがな」
クロウは風魔法の適正を確かめると言って私にその辺で拾ってきたであろう石を渡してきた。
「えっ石!? 石をどうすればいいの?」
「何、簡単な事さ。その石を地面に置き何も使わずに空中に浮かせるだけだ」
「はぁ? 何意味わかんないこと言ってんの? そんなの無理に決まってるじゃん。そうだ! クロウは出来るの?」
「あぁもちろん出来るさ。今の姿でもその程度は出来ると思うぞ」
そう言うと私の肩に止まり石を見つめだした。
すると石がガタガタと震えだしゆっくりと空中に浮かんだ。
さらにそこから石をクルクルと回したり急に止めたりした。
「ここまでやれとは言わないが、腰の辺りまでは浮かせて見ろ」
「まぁ頑張ってみるよ」
クロウには素っ気なく返事しといたけど、あんなの見せられたら普通やる気なくなるって。
まぁ、私は普通じゃないから俄然やる気になったけど。
「むうぅぅぅぅ! はぁはぁ、もうなんで浮かないの? この石」
「ただ浮けと念じるだけでは絶対に浮かない。浮いた所をイメージするんだ」
浮いた所をイメージ?
本当にそんなんで出来るのかな。
クロウに言われた通り浮いた後のイメージをしながら石をじっと見つめた。
見つめる事5分。
石がほんの少しだけ震えだした。
「もうちょい、もうちょいで……」
と集中した次の瞬間。
「いったぁい! 何か急に石がおでこに飛んできたんだけど」
「お前が自分でやったんだろうが。アホなのか?」
「はぁ!? そんないきなり石って飛ぶの? いくら何でもおかしいでしょ」
どうやら私がより一層集中した時に石が飛んできたらしい。
「もしかしたら、結奈は一度に扱える魔素の絶対量が相当多いのかもしれないな」
私は石が当たった額を押さえながら、
「もしかして私、才能あるの?いやぁさすが私!」
「すまん違うみたいだ。あそこを見てみろ!」
そう言われクロウが首で指している方を見ると、
「うわっ、可愛い! あの子めっちゃ可愛いんだけど!」
そこには手に乗れるくらい小さな女の子がこっちを見て微笑んでいた。
「結奈はすばらしく運が良いな。あれは精霊だ。それも人の姿をしているってことは、かなり上位のようだ」
クロウの話など全く聞かずに私は精霊の方へ駆け寄った。
「私は結奈。あなた名前はなんて言うの?」
「私はエアリア。風の精霊よ!」
「風の精霊って事はまさかあなたが私に石を当てたの?」
「私のせいじゃないわよ。あなたが頑張ってたみたいだから、少し手を貸してあげようかなと思って手伝ってあげたらあんな事になっちゃったのよ。ごめんなさいね。お詫びにあなたの傷を治してあげるから少しじっとしてて」
そう言ってエアリアが私の額にちょんと触れただけで傷がすごい速さで治っていった。
「えっ、何したの? 魔法? でもこの距離なのに呪文聞こえなかったよ」
「違うぞ結奈。今のは多分、精霊術だ! それと精霊は魔法を使うとき呪文を唱えないぞ」
「そうよ。今のは私の能力よ。私の能力は贈与と回復。魔素を他人に分け与えたり、魔素を使って傷などを治癒する事が出来るのよ! もちろん普通の魔法も使えるけど」
「すごい。でも何で私にここまでしてくれたの? そんな上位の精霊が私なんかの手伝いをするっておかしくない?」
「そうね。確かにあなたの言う通りおかしいかもしれないわね。理由はいくつかあるけれどその内の1つはあなたが面白そうな子だったからよ」
「そう言えば何故エアリアのような上位精霊がミズガルドなんかにいるんだ? 普通ならアルフヘイムかそれ以上の世界にいるはずだろ?」
「あら、カラスさんは詳しいのね。そう、確かに少し前まではアルフヘイムの森にいたわ。でも数日前に精霊狩りが来たのよ。奴らは私の仲間を次々にさらっていった。私は捕まりそうになったところを運良く近くの村のエルフに転移魔法で逃がしてもらったのよ。っで転移された先がここだったわけよ」
「ごめんなさい、うちのカラスが変なこと聞いて」
「別に良いのよ。確かに私あなた達からしたらがここにいるのは変な事なのだから」
「おい結奈、俺のことをペットみたいに言いやがって、俺はペットじゃないんだぞ」
怒りながらクロウが私の肩を足で抓ってきた。
「ごめんなさい、ごめんなさい。もう言わないから許して」
クロウの怒りが静まったところで本題に戻った。
「ねぇ、エアリアも私と一緒に来ない? 私達はユグドラシルの頂上にあるエデンの園を目指してるの」
「エデンの園ねぇ。あなたが死ぬまでにたどり着けるのかしら。あそこはかつて誰1人としてたどり着けなかったのよ! それにタダでついていく気にはなれないわ」
そして私の近くをふわふわと飛び回りだした。
「うーん、じゃあ2年以内に私がエアリアをアルフヘイムまで連れて行くってのはどう?」
「私もアルフヘイムに用があるからそれで良いけれど、もしたどり着けなかったらどうするの?」
「その時はエアリアの好きなようにして良いよ! 煮るなり焼くなり好きにして」
「分かったわ! しばらくあなた達に着いていくわ。これからよろしく頼むわね」
もしたどり着けなくてもこの子に付いていくけれど。
それがあの方の指示だから。
「うんよろしくね、エアリア。っで早速なんだけど精霊術ってどうやって使うの?」
「あなたちょっといきなりすぎないかしら。まぁいいわ、遅かれ早かれする話なのだから。私は他の精霊と違うからこれと言った条件は付けないであげるわ。ただし私にも限界があるから使いすぎない事。それだけ守ってくれたら出来るだけあなたの手伝いをしてあげるわよ」
「ありがとうエアリア。可愛いだけじゃなくて優しいなんて初めて会った精霊がエアリアで本当に良かったよ」
「お世辞でも嬉しいわ!」
「っでこれからどうする? 他の属性の適正も見てみるか? それとも風魔法を練習してみるか?」
「うーん、早く風魔法を使ってみたいけど一応他の属性の適正も確かめておこうかな」
そして他の4属性の適正も確かめることにした。
火属性
念じるだけで紙を燃やす。
水属性
机の上に置いたコップの水に何も使わずに波紋を出す。
土属性
石に触れるだけで石を割る。
雷属性
2本の鉄の棒の間に電気を通す。
全属性やった結果、火属性はいくらやっても紙は燃えず、土属性はただただ石を触っていただけで終わった。
水属性は波紋どころではなく水が跳ね始めるぐらい変化した。
雷属性は水属性ほどではないものの常に電気が通っている状態までは出来た。
最後にエアリアの能力を借りずにもう一度石を浮かせる事に挑戦した。
すると、他の属性でコツを掴んだのか一度目で石が……………………………額に当たった。
「いったぁい! 何でまた当たったの? またエアリアが手伝った訳じゃないよね?」
「私は何もしてないわよ」
「ならやっぱり結奈の力だな」
またエアリアに額の傷を治してもらってから3人でこの結果を話した結果、私が使える魔法は水、風、雷の3つの属性で、特に水と風属性は高位の魔法まで習得出来るだけの素質があるということが分かった。
「じゃあ水と風の魔法を重点的に修行した方が良いって事?」
「最終的にはそうなるが、最初の内は同時進行でやった方が良いな」
「風魔法は私に任せなさい。下位魔法から上位魔法、私オリジナルの魔法まで教えてあげるわよ」
「オリジナル魔法? なにそれ?」
「そのまんまの意味よ。私が作った魔法、だけど私たち精霊は呪文なしで魔法を使うから、私と契約した人にしか習得出来ないのよ」
「なるほど、要するに私とエアリアにしか使えない魔法になるって事だね」
「ではそろそろ修行を始めようか。まずは下位魔法からだ。今日はもうあまり時間がないから各属性1つずつだ」
「じゃあまずは私が風魔法を教えてあげるわね。今から教えるのは風を纏う魔法よ。あなた程の適正があれば空も飛べるようになるし、自分を守る盾にもなるわよ。呪文は、ウインド•メイン•コルパー。意味は、風よ我が身にって感じよ。魔法名は、ウインドドレス。さぁやってみなさい」
「ウインド•メイン•コルパー」
すると体の周りで風が吹き出したが纏う前に風が止んでしまった。
「あれっ風止んじゃった」
「初めてでそこまで出来ただけでも凄いのよ。普通ならその段階まで行くのに3日はかかるわよ。私は呪文なしだから大したアドバイスは言えないけれど1つ言うならば呪文の意味を頭の中で考えながら唱えてみると良いかもしれないわよ」
呪文の意味を考えながら唱えるかぁ。
風よ我が身に、魔法名ウインドドレスって事は、風のドレスを着る感じかな。
「ウインド•メイン•コルパー」
今度は風が吹き出す所まではさっきと同じだったが、今回は急に体に吸い付いてくる感覚がした。
その後、ゆっくりと体から離れていき程よい距離感を保って吹き続けた。
「出来た。何かよくわかんないけど出来たよ」
「あなた本当に凄いわね。いくら風魔法の才能があるからって、たったの2回で出来るとはエルフでも驚くわよ」
「私もまさか2回で出来るとは思わなかったよ。それにこの風のドレスずっと着てたい位気持ちよかったよ」
「ならもっと修行して扱える最大魔素量を上げなさい。そうすれば私みたいに半永久的に展開し続けられるかもしれないわよ」
「半永久的!? そんな事出来るの?」
「出来るわよ。魔素の消費量よりも回復量の方が上回るようになればね。ほらそんな事より早く次の魔法の修行をしなさい」
「もう俺の番か。予想だと明日になるかと思ってたんだがな。まぁいい。結奈は雷と水どっちを先にやりたい?」
「水の方が適正あったから水からやろうかな」
「水魔法だな。風魔法で装備系の魔法を覚えたなら攻撃魔法を教えるか。この魔法は、水を弾丸のように打ち出す魔法だ。その気になれば木を貫通させることも出来るぞ。呪文は、ワッシャー•カン•フレイラッセン。意味は、水を放て。魔法名は、アクアピストル。少し呪文が長いかもしれないが頑張れよ」
どうやら魔法名は英語っぽいみたいだね。そうなると呪文もどっかの言葉が元なのかな。
まぁいいや。要するに水鉄砲って事みたいだしイメージはしやすいかな。
「ワッシャー•カン•フレイラッセン」
しかし唱えても何も起こらない。
「あれっ確かにイメージしながら唱えたんだけどなぁ。何で何にも起こらないの?」
「お前はアホか。さっきの魔法と違ってこれは攻撃魔法だぞ。対象に向けて手をかざさなければ発動しないに決まってるだろ」
「知らないよそんな事。初耳だよ」
対象に向けて手をかざすねぇ。じゃああの木にしようかな。
私が決めたのは少し遠くに生えていたそこそこ太い木だ。
「ワッシャー•カン•フレイラッセン」
するとかざしていた手の平の少し先にテニスボールぐらいの大きさの球状の液体が現れ、フレイラッセンと唱え終えた瞬間にヒュンという音が聞こえたと思ったら対象にしていた木に液体の倍くらいの大きさのクレーターみたいな凹みが出来ていた。
「嘘でしょ!? 木が凹んだ。あんなの人間相手に使ったら死んじゃうよ」
「そうだな。生身の人間相手に使ったら死ぬだろうな。だがさっき結奈が覚えた風魔法のような装備魔法を使っていたらほぼ無傷だと思うぞ」
「えっあの風のドレスってそんなにすごい魔法なの?」
「そうねぇ。あなたには言わなかったけどウインドドレスは下位魔法ではないわ。あれはエルフが初めて覚える魔法の1つよ」
「なんで私にエルフの使う魔法を教えたの?」
「それは私がアルフヘイムにいたからって言うのと、あなたの才能を見て決めたのよ。風魔法と水魔法に関しての、あなたの才能はエルフと張り合えるレベルのものよ」
「って事はもしかしてクロウが教えたアクアピストルも下位魔法じゃない奴なの?」
「いや、俺が教えたのは初歩中の初歩の魔法だぞ。ただあそこまでの破壊力は普通出ないがな」
「まぁ良いけどさ。さっさと次の雷魔法も覚えてご飯食べたいんだよね」
「そうかじゃあ教えるぞ。次は移動系の魔法だ。これを使えればお前の能力を使わなくても高速で移動出来るぞ。呪文は、ラウフ•アンリチェス•リクト。意味は、光の如く駆け抜けよ。魔法名は、サンダーボルト。まぁ使ってみれば魔法名の理由が分かるさ」
移動系だから対象はウインドドレスと同じで自分だよね。
ってことは手をかざさなくても大丈夫かな。
まぁやってみなきゃ分かんないか。
「ラウフ•アンリチェス•リクト」
「ラウフ•アンリチェス•リクト」
「ラウフ•アンリチェス•リクト」
「ラウフ•アンリチェス•リクト」
「ラウフ•アンリチェス•リクト」
「あぁもう何も起こらないし。なんでよ」
「いやそれが普通なんだよ。結奈の風魔法と水魔法に対する適正が異常だっただけだから。イメージがしにくいなら雷が落ちるのをイメージしてみろ」
雷が落ちるのをイメージ。窓から見える雷でいいかな。
「ラウフ•アンリチェス•リクト」
すると突然頭上から雷が落ち、全身がバチバチと電気を帯びた。
「うわっ何これビリビリすると思ったら全然痺れない。って言うかこれは成功なの?」
「じゃあちょっと走ってみろ。そうしたら分かるさ」
言われた通り走ってみると、一歩目を蹴り出した瞬間目の前に木が見えた。
「いったぁい! もう今日だけで何回頭打ってるんだか。私の能力の比じゃないじゃんこの速さ。慣れるまで相当時間かかるよこれ」
またエアリアに怪我を治してもらいながら、
「あなたもしかしたら最初から魔素の最大量エルフ級かも知れないわよ」
と言われた。
「エルフ級って私人間だし外の世界から来たんだけど」
「俺もそう思う。俺が人間だった頃もよくこの魔法は使ってたが、あそこまで雷を帯びたことはないし、あの速さは今まで見た中で一番速かった。適正が普通であの速さだ。エルフ級はまず間違いないだろう」
「人間だけどエルフ級ってカッコいいね! 何かニヤニヤが止まらないよ」
「まぁ今日はもう遅いから一度街に帰ろう」
街に帰り、門番のギルさんにいつものように開けてもらっていると、
「あれ、結奈様肩の上に座っているその小さな方は誰ですか?」
と聞いてきた。
「あぁこの子ですか、この子は風の精霊のエアリアです。アルフヘイムから来たんですよ」
「精霊! アルフヘイム! まさか結奈様もうアルフヘイムまで行けるようになったのですか?」
「私はまだ全然行けないよ。エアリアは訳あってミズガルドに来たの。まぁこれからずっと一緒だから仲良くしてね」
「もちろんです。あぁまさか死ぬまでに精霊に会うことが出来るなんて思いもしませんでしたよ。ではこれからも頑張ってください」
私たちは一日中森にいたので空腹で死にそうだった。
すぐさま酒場に行きご飯をたらふく食べた。
なぜかエアリアがいるおかげで今日のご飯代はタダにしてもらえた。
私のときはタダじゃないのに。
疲れていたのでご飯を食べた後、そのまま家に帰り体を洗いすぐに寝ることにした。
機会があったらダガーのこと聞いてみよう。
絶対錆びないし刃こぼれもしない、あのダガーのことを。
でも今日はいろんな事があって楽しかった。
これからもこの調子でいけたらいいなぁ。
でも2年以内にアルフヘイムに行かなきゃいけないのか、勢いであんな事言っちゃったけど大丈夫かな?
というかアルフヘイムってどのくらい上層にあるんだろ?
これも今度聞いてみよう
そう思いながら私は眠りについた。