《ランクアップ》
今回は結構書き直したりしたんで時間かかりました。
次の日、朝起きるとなぜか床に下着が山になっていた。
「うわっ全部私のじゃん! どうやって持ってきたの?」
「結奈の家から持ってきた」
「何? 元の世界に帰れるの? なら定期的に帰れるじゃん」
「いや結奈は帰れない。帰れるのは俺だけだ。それに俺も必要なものを取りに行く時以外は向こうには行けないことになっている」
「なんという軟禁状態! でも楽しいから許す」
それから私は同じような小型の魔物討伐系の依頼を日々の日課のようにこなしていった。
その結果この一週間でお金に少しばかり余裕が出来てきた。
家はタダで使えるけど食費はタダじゃないから、お金は結構大事なのよ。
そんな感じで今日もいつもと同じように朝から酒場に行こうとしたら、
「結奈はそろそろランクアップしたいとは思わないのか?」
「うーん、今ランクアップして何か変わるの? そんな急がなくても良いんじゃない?」
「では良いことを教えてやろう。ランク2になったら魔法と精霊術の習得が解禁される」
「魔法? 精霊術? まさかこの世界ではそんなゲームみたいな事まで出来るの!?」
「まぁ必ず使えるようになるとは限らないが。個人によって得意不得意があるからな」
私はそんな見るからにファンタジー感溢れる事を聞き早く魔法を使いたくなった。
「っでランクアップはどうすれば出来るの? 依頼だけじゃだめなの?」
「依頼だけでもランクアップは出来るが主催者が用意した特別な依頼を受けて無事にこなせば普通に依頼をするより何倍も早くランクアップ出来る」
「っでその特別な依頼ってどうやって受けるの?」
「そこの机の上にある紙に手を乗せてみろ」
私は言われたとおりベッドの近くの机の前に立ち机の上にあった白い紙に手を乗せてみた。
すると紙が突然光り出し文字が浮き出てきたの。
紙にはランク2から10までの依頼が、
ランク2
ゴブリンリーダーの討伐
ランク3
トロールの討伐
ランク4
フラッシュハウンドの討伐
ランク5
剣術、魔法、精霊術のいずれかの指南書一冊の完全習得
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といった感じで書かれていた。
「ゴブリンリーダーってゴブリンと何か違うの?」
「ゴブリンの親玉で他の個体に比べて体が大きいのが特徴だ。あとはゴブリンを支配する力がある」
「じゃあゴブリンを討伐してればその内出てくるかもしれないね!」
ランクを上げる方法を聞いた私はランクを上げるため今日は依頼を受けずに森に行くことにした。
森の中を探索してたらゴブリンが珍しく単体で行動してたのが見えたので、遠くからついて行くことにした。
ゴブリンは川をどんどん上流の方へと歩き滝の裏に消えていった。
「えっ!? ちょっどういうこと?」
「お前はアホなのか! どう考えても滝の裏にゴブリンの住処があるんだろ!」
「ってことは、あそこにゴブリンリーダーがいるってことかな。これは突撃あるのみだね」
「もう好きにすればいい」
なんかクロウがあきれてる気がしなくもないけど、実際明かりもないし外におびき出すしかないよね。
石とか投げまくってたら出て来てくれるかな?
まぁやるしかないか。
私は手頃な大きさの石を集め能力を使い数秒の間にその全てを洞窟に向け投げた。
投げた石は洞窟の中で大きな音を響かせた。
すると3体のゴブリンが確認のため外に出てきた。
しかしその中にゴブリンリーダーの姿はなかった。
「あー。違うの出て来ちゃったし」
仕方なく腰のダガーを抜き、少し勢いをつけ、
「ルームオペレート」
と言い能力で空間を操作し数十メートルあったゴブリンとの距離を一瞬でゼロにした。
私はゴブリン達の不意をつきすぐに首を切り裂いた。
流石に一週間似たような奴らを斬ってたらあの斬りづらい皮膚を斬るのも慣れた。
っでその時わざと1体だけ首ではなく右腕を切り落とし逃がした。
地面には2体のゴブリンの首が胴体から遠ざかるように転がっていた。
そしてわざと逃がした奴の右腕も。
危険だけどこれしか外におびき出す方法を思いつかなかったんだししょうがない。
私の予想通り武装したゴブリンを引き連れゴブリンリーダーが洞窟から現れた。
私は一瞬驚きを隠せなかった。
「えっ!? ちょっとリーダーさんデカすぎじゃない?」
ゴブリンの背は小学生低学年位なのに対し、リーダーはその倍近くはあろうかと言うほどの巨体だった。
そしてもちろん私よりデカい。
ただでさえキモいゴブリンがさらにデカくなったなんて最悪。
私が驚き戸惑っている間にもゴブリン達はじりじりと近づいてきていた。
「とりあえず邪魔なのだけでも片付けなきゃ」
私は能力を使い木々の間を走り抜けゴブリンの背後をとった。
加速していたのでゴブリン達には残像が少し見えたぐらいだったらしくキョロキョロしていた。
私はその隙を突きリーダー以外のゴブリンの防具の薄い所をダガーで切り裂いていった。
ゴブリン達は自分たちの身に何が起きたのかよく分からないまま倒れていった。
突然だけど私の能力には連続使用の時間制限があるの。
そして残念な事に今のゴブリンを倒した所で能力を使い切っちゃった。
一旦使い切っちゃうと数分の間は能力を使うことが出来ない。
「うわっ!? ここで使えなくなるとか最悪だわ」
能力が解除されたせいで加速が解けちゃってリーダーに完全に捉えられた。
逃げようと走り出したけど、すぐに追い付かれ、手に持っていた棍棒で背中の辺りを思いっきり殴られ近くの木の幹に叩きつけられた。
激痛が体中に走り意識も朦朧としてきた。
「あぁ、私死んじゃうのか。まだこの世界来たばっかりなのに、せめて魔法とか使ってからが良かったなぁ…………」
私がもうダメだと思ったとき、目の前に全身黒ずくめの男が現れゴブリンリーダーに向かって手の平を向け呪文のようなものを聞き取れない程の早さで唱えているのが見えた。
呪文を唱え終わると突然目に見えない刃物のようなものがゴブリンリーダーを切り刻んだ。
数秒後、ゴブリンリーダーはただの肉片となり地面に転がっていた。
男はゴブリンリーダーを殺すと私の方に歩いてきた。
私は薄れゆく意識の中、必死にその男から逃げようとしたけど背中に激痛が走り思うように動けなかった。
「こ………な………………い…………………で」
そこから先は気を失ったのか覚えていない
気がつくと私は家のベッドに寝かされていた。
どうやらあの後、本当に気を失ったらしい。
「誰が私を家に運んでくれたの? それに黒ずくめの男はだれ?」
私には聞きたいことが山ほどあった。
「まず黒ずくめの男の事だが、あれは俺だ。お前を家に運んだのも俺だ。言いたいことはたくさんあるだろうがそのことについては追々説明する」
私はクロウがなにを言っているのか意味が分からなかった。
「えっ!? でもクロウってカラスだよね。でも黒ずくめの男は人間だったし変な術まで使ってたよ」
「俺は元からこの姿な訳じゃないんだ。呪いのせいでこの姿にされたんだ。元々は前回のエデンズゲームの参加者だ」
「クロウが前回のエデンズゲームの参加者? でも呪われてるのに、なんであの時だけ元の姿に戻れたの?」
「それは俺にもよく分からない。気づいたら呪いが解けていたからお前を助けた。それに俺が倒したのになぜかお前のランクは上がっていた。まぁとりあえずランクが上がったんだし、喜べよ」
「ランク上がったんだ。でもクロウが使ったあの術は一体何なの?」
「あれは魔法の一種だ。俺が使ったのはエルフ族の秘伝魔法だがな」
「エルフ族? でもミズガルドには魔族と人間しかいないんじゃなかったの?」
「だから言っただろ、俺は前回の参加者だと。俺は、アースガルドというアース神族の住む世界まで到達したんだよ」
「アースガルド? アース神族? なにそれ?」
「アースガルドって言うのは簡単に説明するとエデンの園に最も近い上層に位置する世界だ。アース神族はそこに住む神の一族だ。要するに神と同じ世界に、いたって事だ」
「ウソでしょ!? クロウってそんなに凄かったんだ。でもそんなクロウでもエデンの園にたどり着けなかったの?」
「あぁ、どうしてもアース神族の王であるオーディンに勝てなくてな。何回目だったかわすれたがオーディンに負けた後気づいたらこの姿になってたわけだ。きっと他の奴らも同じだろうな」
「よし、私決めた。必ずエデンの園にたどり着いてクロウを元の姿に戻してあげる。だから私に戦い方を教えて」
「なぜ俺のためにそこまでしようと思う? お前は死にかけたんだぞ」
「分かってる。でもクロウが助けてくれなきゃ私は確実に死んでた。だから今度は私がクロウを助けてあげる番」
「そうか、分かった。だが俺の修行は厳しいぞ。途中で逃げるなよ?」
「もちろん絶対途中で逃げたりしないよ。でもそう言えばクロウが前回の参加者だったなら絶対名前あるよね?」
「もちろんあったさ。でも思い出せないんだ。きっと呪われたときに名前も奪われたんだろう」
「じゃあ名前も取り返さなきゃね」
こうして前回のエデンズゲーム参加者だったクロウとの修行が始まった。