白の世界(ver.笑い)
「もうすぐ着く頃だろうか?」
僕はそう一言発すると、電車の窓から見える景色に目を奪われていた。
何故この電車に乗っているのか?それは愛した人の実家に向かっているからだ。
しかしながら僕の愛した人はもう居ない。
僕の心のなかでは未だ色褪せない人。とても物静かで髪の長い人。僕の冗談を笑ってくれた人。愛を語るのは君が最初だった。。
君が事故にあったと聞いた僕は抗議の途中に大学から慌てて病院に向かった。。 君は手術室に運ばれる前だったね。君は朦朧とする意識の中で、かすれた声で僕に言ったよね。
「ありがとう」
って。左指には僕とお揃いのペアリング。それは愛を誓った夜に僕が君に上げた最初で最後のプレゼント。
僕は手術室の前で永遠とも思える時間を過ごしていた。どれくらい経ったのだろうか?僕が気付くと目の前には真っ白の世界が広がっていた。その世界はとても穏やかで、やさしい空間だった。僕はその世界の中で君を見つけた。君は僕にそっと微笑んで、悲しい顔をしたよね。。
僕は感覚的に理解したんだ、この白の世界は君が最後に僕と会うために創った幻だと。。
その後君の笑顔をみることはなかった。 君が何故死んだのか?そう思って僕は君が事故を起こした場所に行ってみたんだ。すると悲惨な光景が目の前に広がっていたんだ。 その事故現場の周りにはたくさんの人が居たんだよ。その中から不意に話し声が聞こえたんだ!
「あの子可愛そうねぇ、落ちている1000円札を拾おうとして車にひかれたんだって」
その声を聞くと僕はこう言ったんだ。
「1000円(年)の恋も覚めると」
END