静かな時
「んん、ふぅ」
一つ伸びをして外を見る。
図書室からは夕焼けの空の下で練習してるサッカー部が見えた。
眼鏡を外し、目頭を軽く揉んで眼鏡を掛け直す。
サッカー部の練習に目を凝らす。
「あ、居た。まだ練習終わらないのかな」
私が好きな風景は夕焼け空の下で片付けを頑張っている彼が居る風景だ。
声が校舎に反射している間のうるさい時間に見る彼はあんまり好きじゃない。
気付いてくれないから。
--すいません。
「あ、はい。すいません、ぼーっとしちゃって」
一人の女の子が本を差し出していた。
学年章を見ると先輩のようだ。
私は台帳と貸し出しカードにチェックを入れ本を渡した。
先輩は「ありがとう」と一言残し図書室を出て行った。
「もう夏も終わるのか。夏祭り行きたかったなぁ」
そう呟きまた外を見る。
サッカー部が集合して解散するところだった。
もう少しで私が好きな風景が見れる頃だ。
「気付いてくれるかな」
誰もいない図書室の窓際でじっと外を見つめる。
サッカー部の先輩方が解散し、彼と数人が残り片付けを始めた。
彼をずっと目で追う。
そこら中に散らばったボールを集めたところで彼は倉庫に足を向けた。
倉庫は校舎と反対側に有り、図書室に背中を向ける格好になる。
「気付いてくれないか」
--おーい。
声に気付きまた外に顔を向けると彼が手を振っていた。
どうしようもなく嬉しくなる。
「もう、なんだよー」
小さく手を振り返す。
すぐに踵を返し、読みかけの本に栞を挟み、カバンにしまう。
カバンを持ち、走って彼の元へ向かう。
「あ、鍵かけなきゃ」
急いで図書室に鍵をかけ、職員室に鍵を返す。
階段を駆け下り、靴箱へ向かい、急いで靴を履き替える。
校舎を出ると、すでに着替えていた彼が待ってくれていた。
もう、なんだよー。嬉しいじゃないか。
自然とにやけてしまう。
「なーに、にやけてんの」
「うるさーい」
この想いが伝わってると良いな。