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13 どこへいこうか
カグチは、待ち合わせ場所に立つオトナシに向かって手を振った。
「オトナシ!」
オトナシもこちらに気付き、嬉しそうに両手を振る。
そしてノートにさらさらと文字を綴った。
『カグチ、なんか今日元気だね』
「そうか? ……まぁ、そうかもな」
マスクの奥で、そっと口元を指でなぞる。
そこに、消えない傷痕は確かにある。
――それでも。
ポケットの中には、皺のついた『大丈夫!』が、温かく残っていた。
「オトナシ」
「……?」
「……あー……あのな、“お守り”、ありがとうな」
照れくさそうに言う彼に、オトナシはぱあっと笑顔を咲かせた。
カグチは照れた顔を誤魔化すように声を張り上げる。
「……さぁって! 今日はどこに行こうか!」
カグチがそう言うと、オトナシは大げさなくらい胸を張ってノートを開いた。
そこにはびっしりと行きたい場所が書かれている。
『今日は大冒険だよ
元気なカグチでも、へとへとになっちゃうかもね』
「へっ、上等だぜ」
二人は並んで歩き出す。
夕日は沈み始め、暗がりが落ち掛けていたが、
訪れる夜はもう、あの頃のようには重くない。
優しく柔らかい夜が、静かに二人を迎えていた。




