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12 しわしわの紙
カグチは目を覚ました。
温かいものが頬を伝い、枕へと落ちていく。
顔がぐっしょりと濡れていることに気付くが、それはいつものイヤな汗では無く――涙だった。
「……?」
目と、胸の奥が熱い。
何かが溶けて流れた後のように、呼吸がやけに軽かった。
上体を起こすと、何かがかさりと落ちた。
それは、オトナシから渡された『大丈夫!』と書かれた、あのノートの紙だった。
紙を拾い上げた指先が、かすかに震える。
胸の奥で――オトナシの声が聞こえた気がした。
「……ああ、そうか」
夢での風景が思い出される。
大きなオトナシによって、すべてが鮮やかでファンシーなものに書き換えられたあの風景を。
カグチは紙を握りしめたまま、笑い始めた。
「はは……あいつ、なんっだよ、あれ……くっ、はは……」
笑い声はやがて静かな泣き声に変わっていく。
落ちていく涙は、紙を温かく濡らした。
カグチはその日、初めて悪夢を退けた。
彼にいつまでもかかっていた、冷たく暗い悪夢の帳は、
一枚の言葉でほどけていった。




