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第2話 『幻影コード』



夜の東京湾岸。

薄く立ちこめる霧の中、無数のホログラム広告が空を覆っていた。

人々は光に酔い、現実と仮想の境界が溶けていく。


だがその裏で、“消えていく人間”たちがいた。

データ化された脳――その“魂”が、どこかへ吸い上げられている。


「……まただ。第七区で三人目」

警視庁情報特務課の捜査官・ユリ・ナガセは、

冷めたコーヒーを片手にモニターを見つめていた。

画面の中では、街角の監視映像が何度も巻き戻される。


そこに、彼が映っていた。


――ギャレン。


銀色の閃光とともに出現し、標的を一瞬で“蒸発”させる謎の存在。

警察内部では“都市伝説の処刑者”と呼ばれていた。



---


一方その頃、ギャレン――カイ・レン=ヴォルドは、

廃墟の高層ビルでデータスクリーンを操作していた。

彼の脳内インターフェースに流れ込む暗号列。


> 《幻影コード:Type-MX_Δ03》

《発信源:地球統合企業連合=マドクス》




「やはり、“奴ら”が動いたか……」


マドクス。

銀河連邦の裏で暗躍する、記憶改変兵器を製造する企業体。

彼らが狙うのは“人間の意識そのもの”――そして、“ギャレンの記憶”。


レンは額を押さえる。

また“記憶の断片”がフラッシュバックする。


──少女の笑い声。

──赤い夕焼けの海。

──そして、ユリの名前。


(……なぜ、俺は彼女を知っている?)



---


その夜。

ユリ記者は単独でマドクスの研究施設跡地に潜入した。

「彼が本当に“正義”なのか――確かめなきゃ」

彼女の手には、小さなキー型デバイスが握られている。


だが、突如警報が鳴り響いた。

暗闇の中に浮かぶ光学迷彩の兵士たち。

ユリは息を呑む。


「マドクス・ガード……!」


銃口が向けられた瞬間、空が裂けた。


眩い銀光が地を駆け、重力波が吹き荒れる。


「ギャレン・オンッ!」


無数の光子が彼の身体を包み、銀の装甲が形成される。

ギャレンの剣が閃くたび、兵士たちは“データ化”して崩れた。


「なぜ……私を助けたの?」

「……それは、俺にも分からない」


彼は視線を落とす。

ユリの胸元にぶら下がるキーを見つめた。


それは、彼の記憶の中にもあった。

かつて“彼女”がくれた、小さな記憶の鍵。



---


霧の向こうで、

マドクスの黒い人工衛星がゆっくりと軌道を回る。


> 《幻影コード起動まで――残り72時間》




ギャレンの運命は、

“過去”を取り戻すか、“正義”に殉じるか。


その境界線の上に、静かに立っていた。


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