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ようこそ、神山町『科学的特異点』へ

処女作、このシリーズは短めで終わらせるつもりです。

沢山の作品に影響されながらも自分だけの結末を迎えさせます。


2xxx年7月16日神山町12区夏祭り


夏であろうと午後8時にもなると少し冷たい風が、空の元に晒された頬を掠めていく。


私、星宮空『ホシミヤソラ』は憧れの、大好きな先輩、風薙優里『カザナギユウリ』を含めた5人程で祭りに来ていた……筈だった。


「まずい、どうしよう……みんなとはぐれちゃった。」


心の中で留めいたはずの言ノ葉が自然と口からでてしまう。


19年間で16番目くらいのピンチ。


私が一人であることを強調するかのようにお祭りは私を置いて盛り上がりを見せる。


『そうだ!』


今度は心の中で言ノ葉を綴る。


私は慣れた手付きで手元のスマートフォンを操作する。


入力を終えた私は希望と共にスマートフォンを耳元に当てる。


数秒の発信音の後私の耳にはこんな言葉が響く。


「おかけになった電話は現在通話中です。」


……残念ながら非科学で成り立っているこの町でも神様は私の事を見てくれないようである。


「あうぅ……」


言ノ葉にすらならない声を、私は弱々しくあげる。


祭りなんてものは私には眩しすぎる。カップルで歩く学生、ドンドンと響く太鼓の音、行列のできている焼きそば屋。


『あんなモノお祭りという場所で高揚感を感じているだけで割高で味も見合ってないのに……』


なんて考えながら私はチュルチュルと焼きそばをすする。


丁寧にプラスチックのパックを閉じてゴミを入れるために持ってきた紙袋に入れようとする__


「えっ」


……どうやらお祭り効果に浮かされていたのは私もだったようで既に紙袋にはパンパンにゴミが詰まっていた。


仕方無しに私は一時的に自分のカバンにプラスチックパックを突っ込む。


私がこんな事をしている間に時刻は20時30分、刻一刻と解散の時間が迫っていく。


私がそんな事で焦っていると。


「ぜぇ…ぜぇ…見つけましたっ!」


と荒い息遣いと共に大好きな声が聞こえてくる。


さっ、と身体を捻るように後ろの方を振り向くと、


「やっと知り合いを見つけれましたよ……ホントに……」


水色のショートの髪、シュッとしたモデルのような体型、心落ち着かせるような優しい声、私を真っ直ぐ見つめる蒼い目。この人こそ風薙優里、私の大好きな人だ。


「知り合いを見つけたって……先輩他のみんなはどうしたんですか??」


緊張と高揚を抑えつつ私は口に出す。


「迷子です!!マイゴ!!数十分以上一人で知らない土地をあるくなんてホントやってられませんよ……」


私は少し失望する。優里先輩は私を探しに来たと思っていたが、優里先輩が求め探していたのは"知り合い"であり、星宮空を求めていたわけでは__


「もしかして星宮さんも迷子ですか?仲間ですね!いやー良かったです、星宮さんで……ミリアちゃんや瑠美さんに一人で迷子になってたなんて知られたらなんて言われるかわかったもんじゃないですし。」


「覚えてくれてたんですか、名前。」


「よく話聞きますから、ミリアちゃんが大切な友達だって。それにランクなしでも能力の理論や研究では高成績だって、私なんてランクなしの能力関連の成績全部赤点ギリギリ!それにさっきちゃんと自己紹介しましたし。」


……大好きな人が名前を覚えててくれた。それだけで私はとても嬉しくなった。


「自慢するようなことじゃないですよ先輩。」


私は笑顔でそう返事をする。


「あーいたいた、探したよ2人共。」


駆け寄ってくる金髪ロングの女性、白瀬瑠美『シラセルミ』先輩の幼馴染だ。


「ちょっと星宮さんと買いに行ってて、食べます?チョコバナナ。」


「食べない。そろそろ花火の時間だよ?」


この夏祭りの最大のイベントは花火。私は優里先輩と見る為に今日は勇気を出してきてみたのだ。


「なら移動しちゃいましょう。」


そう言うと二人はさっさと移動していく。


「あ、待って!」


私は立ち上がり二人の後を追おうとするが


「わっ!」


数歩歩き初めた辺りで躓き、バランスを崩して地面に突っ伏してしまった。


「い……痛っ……」


膝からドロドロと流れ出す血液が私の傷の深さをここぞとばかりにアピールしてくる。


「せ……先輩……先行っちゃってる……」


人混みもあり二人は私がコケたことなんかに気付かず移動してしまっていた。


置いていかれた孤独感と膝の痛みが私を蝕んでいく。


「ミリア、空見つけたから切るわ……うわ、泣いてる。しかも傷酷いな……」


しゃがみ込みながら私の顔を覗く人影が一つ。


「……誰?」


「嘘だろ、さっき名乗ったぞ!」


「す……すみません……」


「はぁ……」


大きなため息と共に目の前の人は天を仰ぐ。


「相川柳『アイカワヤナギ』君の一つ上の先輩だよ。」


「ミリアちゃんのお姉さんの……あんまり似てないですね。」


「DNAどころか出身国が違うし、僕、ミリアの実親知らないしミリアも僕の実親知らないよ。」


痛かったら言ってね、と質問を答えながら私の傷を処置してくれている。


「なんで姉妹として成立してるんですか……」


大丈夫です、と親指を立てながら私はぎもんをぶつける。


「まあ養子なわけなんだけど、僕のお母さんは今の僕の義理の父に殺された。でミリアは……」


「ちょ、ちょっと待ってください。」


「あ、痛かったかい?あんまり慣れてないんだよね……」


「違う!そっちじゃなくて殺されたって……」


「ああ、簡単な話。義理の父親が犯罪者で警察から逃げるために家に駆け込んできて母親だけ殺した。」


「とんでもない人……」


「まあ真人間ではないよ。でも別に恨んでたりはしてない。ミリアはアメリカの貴族の娘だったらしい。なんやかんや一族が滅んで日本の児童養護施設にいたから引き取った感じだよ、ちなみに本名はミリア·ユニ·ブレダイン。」


「もう何がなんだか……」


ドン!と私の声を掻き消すような花火の音が鳴る。私の怪我の手当てをしている間に


「相川先輩は」


「柳。相川だとミリアと被る。」


「柳先輩は花火見ないんですか。」


「見ない。もっと綺麗なの知ってるし、今は手当てのが先。絆創膏とかガーゼとか持ってない?」


「持ってないです。」


「んじゃ10秒くらい待って」


そう言うと先輩は目を瞑り何かに集中しだした。


「せんぱ」


私が声をかけようとすると柳先輩は口元に人差し指を当ててアピールする。


その瞬間彼女は神秘的な雰囲気に包まれる。

そして一呼吸置いた辺りで彼女の手にはガーゼが見える。


「え?」


私はあまりの驚きに素っ頓狂な声を上げる。


「もしかして見たことない?能力。」


「去年越してきたばかりで映像以外で見るのは初めて、です。すごい能力ですねかっこいいです。」


「……そっか。」


そんな話をしている中処置はおわり私は先輩に感謝を告げる。


「……花火、ごめんな。」


少し悲しそうに、柳先輩は空を見上げる。

空を埋め尽くすように花火が打ち上がっていた。


「なんで先輩が謝るんですか、勝手に怪我したのは私ですし……」


「だって、優里とみたかったんだろ?」


「え、」


「君優里の事好きじゃん。」


「な、なん、で。」


私は焦り、口をパクパクさせることしかできない。 


「君とミリアは同級生。わざわざこの場で声をかけて来たのにミリアとはあまり見て周らなかったよね。つまり目的はミリアの方じゃない。僕を狙ってるならミリアの姉である点で泊まりで親睦を深めたり祭りの前に何かしらアクションがある。あとは視線だね、ずっと優里の方見てた、そこに恋愛感情があったのかはわかんないけどまあ今の反応を見ると当たりだ。」


「なんか柳先輩、探偵みたいですね。」


「……知人のクセが移ったかな。」


先輩は少し不機嫌そうに口にする。


「とりあえず今日のお詫びとお礼を兼ねて少しだけここで待ってくれるかい?」


「お詫びもお礼も何も……私勝手に怪我しただけですよ。」


「詫びはそうだね……優里との恋路のサポートでもしてあげるよ早速だけど18日色々作戦を練る。」


私の言ノ葉を無視してどんどん話を広げる。


「で礼だけど僕嬉しかったんだ、君に凄い能力だって、人を傷つけるしかできない能力だと思ってたから、とっても。だからさ、君の知らない一番綺麗な花火。見せてあげるよ。」


「どういうことですか?」


私は理解が追いつかず疑問をぶつける。


「去年越してきたばかりで映像でしか能力は見たことないって言ってたよね。なら能力の底力何も知らない訳だ、見せてあげるよ。」


真っ黒な月の浮かぶ空を指差しながら柳先輩は再度神秘的な雰囲気に包まれこう言う。


「ようこそ、神山町『科学的特異点』へ。」


瞬間見たこともない夢のような景色が空一面に広がる、自分が宇宙にいるようなそんな景色が瞬間が目の前に広がる。


「僕はさ"夢"って言葉大好きだ。描く事も書く事も大好きだ。自分ができない体験を見れないものを想像して創造することができるんだから。僕の能力は頭の中で思い浮かべたイメージを現実に表す事ができる。僕の君と見たかった景色だよ、今君の隣にいるのは愛する人じゃないけど喜んでもらえると嬉しい。優里の心掴んでみせろよ。」


目の前に映るのは夢のような世界、それを柳先輩は落ち込んでる私に対して見せてくれたんだ。


「ありがとうございます……!」


ポロポロと涙が零れる。


「嬉し泣きはまだ早いんじゃない?」


私の涙を拭うようにして柳先輩は指を当ててくる。


「よし、それじゃ逃げよっか。」


「はい?」


この雰囲気に似ても似つかない"逃げる"という言葉に驚きを隠せない。


「これ区で打ち上げたものじゃないから誰かが能力使ったってバレてる。」


「だっ駄目じゃないですか!」


「だから逃げる、ほら行くよ!」


「あの私足怪我してるんですけど!」


「はっ知らないね、車は急には止まれねえやい!」


「車どころかミサイルですよ!」


そんな事を話しながら私達は走って逃げた。


翌日の柳先輩はミリアちゃんにこっ酷く詰められたらしい。


とっても馬鹿で優しい先輩だ。

恋と非科学と百合の混ざり合うこの話をお読みいただき誠にありがとうございます。ゆったりなペースにはなってしまいますがこれから少しずつ趣味として投稿させていただきます。

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