第5話番外編 ペットボトル
「明日のクエストに持っていく物を買いに行くわよ、ユウキ。」
クエストの受注も済ませた帰り道。俺たちは、明日の初クエストに必要な物を揃えるため、近くの商店に足を運んでいた。
どうやら、その店は俺のいた世界でいう“コンビニ”のような場所らしい。
必要な物は一通り揃っていて、24時間営業。手軽に買い物ができる便利な店だという。
第5話番外編 ペットボトル
「ついた。ここが"コンビニ"っていう、色んなものが売ってるお店よ。」
「……ん?コンビニ?」
聞き間違いか?いまコンビニって……
「ええ。コンビニよ。」
どうやら聞き間違いではないらしい。外観はまるで違うが、こっちの世界にもコンビニという概念があるのか……
「じゃあ私、今日の夕飯と明日に必要な物買ってるから、店内見てていいわよ。初めてで色々気になるものもあるだろうし。」
正直、店内もRPGで見る木で出来たあの感じなのだが、陳列棚のレイアウトというか、そういうのがまんま"コンビニ"だ。だが、棚にはあまり見かけないものばかりで、かなり新鮮味がある。てか、冷蔵棚とかどういう仕組みで動いてるのだろう……。機械的な感じではなさそうだし、これも魔法の力なのだろうか。
「……ん?あれってもしかして……!」
そんなことを考えていたら、店の奥に何やら見覚えのある物を見つけた。
「すげぇ……!もしかしてこれ、ジュース……!?ペットボトルじゃん!!」
色の付いた液体が入っている透明な容器には、カタカナでキトルス、マルム、ウーヴァと書いてある。名前だけ見ると全くもって分からないが、何となく色的に蜜柑、林檎、葡萄なんだろうなというのはわかる。
「なんだこれ、ヴィリディス・テア?」
ふと目に入ったのは、若芽色の液体。
これもカタカナでそう書かれている。
────いや待てよ……これ、劇物とかじゃねぇよな……?
「もしかして、これ全部劇物か……?」
よくよく考えたら、異世界だし、コンビニに毒薬が普通に置いてある可能性だってあるかもしれない。
「安心しなさい、ユウキ。これ、全部飲み物だから。」
いつの間にかカゴいっぱいの荷物を持って俺の近くに立っていたナナミが、キトルスと書いた液体を手に取りカゴに入れる。
「そ、そうか……。てか、いつの間に近くに居たんだ……?」
「ジュースを見て興奮してる所からかな。」
割と最初から見られてたんじゃねぇか!興奮してて全然気づかなかったわ!
「んで、これ気になってるんでしょ?まだユウキはお金持ってないだろうし、これ奢ってあげようか?」
「じ、じゃあ……お願いします……」
惨め。この一言に尽きる。同い年位の女子に奢られるのは、男として色々と情けなさすぎるだろ。
「それじゃ、会計済ませて帰ろうか。買ったジュース飲みながら。」
ナナミが会計を済ませた後、店の外でおそるおそる若芽色の飲料水に口を付けた。
「……これ、緑茶かぁ……」
少しほっとしつつも、どこか懐かしい味に笑みがこぼれる。
俺は、異世界でペットボトル飲料を発見できた喜びを噛みしめつつ、ナナミと帰路についた。




