市職員メモ その6
個人的直感ではあるが、このメモ書きはこれが最後である可能性が高い。
妙求市における異変が徐々に変わっている。
質的にも、量的にも。
市民にとって異常が当たり前のものとなりつつある。
かすかな変化が積み重なり、今や少しばかりの異常であれば無視してしまうのが当然だ。
夢操者側としては、ある種のゲームを仕掛けることが多くなった。
夢の中へと引き入れてから行うものもあれば、現実に設置されるものもあった。
捕獲者側としては、より一般的にその支配領域を広げた。
改変された人間用の設備を多く作り出し、彼らにとって住み良い場所にしている。
どちらも、隠れ潜む行動から、堂々としたものへと移り変わっている。
異常の内のいくつかは、この二種の異常が手を組んでいると思われるものすらあった。
問題は、これらの影響の範囲が読めないことだ。
夢だと済ませ、報告にない事件は、きっと数多くある。
現在、改変者がどれほどいるかもわからない。
予想よりもずっと深く、広く、その力は伸びている。
それは、市職員にも伸びていた。
この身体だけではなく、認識もまたそうである可能性が高い。
だがそれは、個人的なものであり大きな問題ではない。
一番の問題は、配信者、旅行者、PR動画閲覧者など、外部からこの妙求市を見た際に、違いが出ている点だ。
この内外の差が錯覚であればいい。
だが、もし現実であるとすれば?
外から見た妙求市の様子こそが本当であるとすれば?
妙求市の真の姿は、何も無い荒野であるのかもしれない。




