ゴミステーションの可能性
犯人の可能性はある。
扉がついた屋外設置のゴミ箱。
いわゆるゴミステーションとも呼ばれているそれは、使用者を限定している。
治安のよいところであれば解放されているが、関係のない人間が繰り返し利用している様子が確認されれば、鍵をつけるなどの対策が取られる。
元々はカラスやネズミなどに荒らされないためのものだが、無関係の使用者も同様の扱いだ。
主婦であるLさんも利用している。
「夜中に使っちゃだめだー、ってこともなくなって、すごく助かります」
時間外のゴミ捨て禁止は、荒らすものがいるからこそ禁止されていた。
「けど、けっこう頻繁にルールが変わって、大変です」
管理者によっては取り決めを細かく規定する。
「ある日、ゴミステーションのに紙が張ってあったんです」
そこには「ガラス製品投棄禁止、日時を守ること」とあった。
「割れ物とかは、決められた日にしかダメで、守らなかった人がいるのかなぁ、って思ったんですけど……」
扉を開けて中を見れば、コップがいくつもあった。
ワイングラス用のそれは、明らかにガラス製品だった。
「なんで? って思いました」
堂々とした違反者がいた。
「他にゴミはなくて、それだけがありました」
Lさんはそれらを取り出してからゴミ袋を入れた。
管理人室へとガラス製品を届けたが、よければ持ち帰ってほしいと言われた。
「その、値段とかわからないんですけど、いいものだなぁ、とは思っちゃったんです」
グラス同士を打ち合わせると、非常に澄んだ良い音がした。
「お得だあ、って、ここまでなら喜べたんです」
次の日、ゴミステーションには張り紙があった。
そこには「貴金属投棄禁止」とあった。
「なんで貴金属? そんなの捨てる人がいるわけないのに、って思ってたんですが……」
ゴミ箱の扉を開ければ、黄金に輝くアクセサリーがいくつもあった。
「とりあえず閉めました」
数度の深呼吸をした後ふたたび開けてみたが、やはりどう見てもブティックにでも並んでいるような品々が捨てられていた。
「ぜんぶ拾い集めて、管理人室に持っていきました」
捨てられたものなのだから、よければ持ち帰ってほしいと言われたが、Lさんは笑顔で拒否した。
「ひょっとしたら、この管理人さんが犯人? とか疑ってしまったんですが……」
次の日、ゴミステーションには張り紙があった。
そこには「子猫投棄禁止」とあった。
「いそいで駆け寄りました」
開ける前からか細い鳴き声がしていた。
抱きかかえて、すぐに獣医へと向かった。
「……管理人さんに、直談判しました」
どうしてあのような張り紙を出したのかと。
それに呼応するようなものが投棄されている。
今まではまだ冗談の範疇だったが、命あるものを粗末に扱うことは許されない。
「違う、って言われたんです」
管理人に、そのような張り紙をした憶えはなかった。
また、おかしな出来事の対策として、錠前と複数の鍵を購入したと言われた。
「子猫は、飼うことにしました」
どこか納得がいかなかったが、実直な管理人の様子に嘘があるとは思えなかった。
「次の日、錠前がつけられて、使用する人に鍵が渡されて」
それでも、ゴミステーションには張り紙があった。「管理人投棄禁止」とあった。
「誰かが、いるような気配がありました」
これを開けたら、子猫にそうしたように拾わなければならないのではないか?
そのようなおかしな直感がLさんを襲った。
「すいません……」
だからこそ、市職員に扉の解放を頼まれた。
ゴミステーションの鍵を開いて解放したところ、つぶらな瞳をした管理人と目があった。
体育座りをしていた。
詰問したが、管理人は「知らない、わからない」の一点張りだった。
その後、ゴミステーショには「張り紙禁止」の紙が張られた。
たまに紙束が内部に出現すること以外は問題ない。




