PR動画の可能性
結果的には成功している可能性がある。
珍しく、同期から相談された。
「どうすりゃいいんですか、って話ですよ……」
市の広報であり、妙求市のPR動画を撮るよう言われた。
「この市の、どこをアピールすればいい?」
それが目下の悩みだという。
PR動画、いわゆるプロモーションビデオとも言われるそれは、市町村の広報として活用される。
大抵は誰も興味が持てない地元の良さのアピールだが、中には成功したものもある。
「予算が、ないんですよ……」
二億回以上を再生したPR動画では、怪獣映画の制作スタッフを雇い、オリジナルの怪獣を登場させた。
「というか、ドローンすら使えないのは、意味がわからないんですよ、マジで」
土地の豊かな自然を高所から映すこともよく行われる。
日本人にとっては見慣れた風景でも、海外の人からすれば新鮮に映ることもある。
「しかも、よくわからない理由で拒否されてるし」
偶山の撮影は許されない。
また、この時期の妙求市上空を飛ばすなどもってのほかだと言われたそうだ。
「あとはダンス? 他の場所では色々やっているみたいなんですが、いや、一人で金もない映像素人に何ができるのかと……」
それらを真似したところで二番煎じにしかならない。
「そもそも、変に電波状況が途切れやすいんですよ、ここ」
オンラインゲームで切断されるという相談は頻発している。
「なにか、アイディアは、アイディアは、ないですか?」
ゾンビのように顔色の悪い同期に対し、しばし考え後、市職員はひとつの提案した。
少しばかり考えた様子だったが、「まあ、試してみますか、あんがと」と言って帰った。
「おい、どうなってんだ……」
後日、なぜか文句を言われた。
「というか、妙求市が、どうなってんだよ……」
市職員がした提案は、市民からの映像の協力だ。
今となっては多くの人がカメラ機能付きのスマホを手にしている。
多くの人から「妙求市らしい」映像を募集し、編集すれば、それなりのものができるのではないか。
「なんで、データが壊れているかホラー映像ばっかなんですか……」
まともなものは、ほとんど無かった。
「中には妙求市じゃないものもあった」
地元民からしても見たことがない景色が撮影された。
「歩いてる人の形が変だったり、突然笑い出した人がいるのに周囲の奴らは無視してたり、形容できねえ化物がひょっこり出たり、地平線が見えるくらい広い野原があったり、わけわかんねえ映像しかねえ……」
無難にアーケードや神社でも撮ってお茶を濁せばいいのではないかと提案した。
「それしかないんですかねえ、やっぱり?」
PR動画とは、誰に対してのものか。どれほど話題性があるか。きちんと地元の良さを伝えられるか、そうした面を考える必要がある。
この同期に対しての指示は、きちんと考えた末のものだとは思えない。
その上、さした予算もついてない以上、下が必要以上に苦しむ必要もない。
重要なのは、PR動画のいち早い作成だけだ。
「仕方ないか」
募集した中から選び、どうにか形にした。
それはとても平凡なものであり、どうみてもやっつけ仕事だった。しかし。
「ああ、あれですか」
後にアルバイトのUさんから聞いた話だ。
「話題になってますよ」
噂となっていた。
「大半の人が、動画を読み込めないそうです」
観ること自体ができなかった。
市からの、公式映像であるにも関わらず。
「見れた人は、全員、よくわかんないこと言ってます」
動画を止めたにも関わらず、画面内の人物の視線が動き続けた。
繰り返し観るたびに内容が変わった。
おかしなサイトへ自動的に飛ばされた。
画面そのものを録画保存したのに映っていない。
妙な夢を、見るようになった。
「実在する呪われた動画として、話題になってます」
ただし、そもそも見れない人が大半であるため、デマとして扱われている。




