表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/126

「    」


さて、ここにはこうして書き込んではいるものの、いつ誰が読むかもわからない。

下手をすれば埋もれて消えてなくなるかもしれません。


なぜって言えば、これが隠しファイルだからです。


割と簡単に作れます。

隠したいファイルを右クリック、プロパティの属性欄から「隠しファイル」にチェックを入れるだけ。


スマホの場合であれば、少しばかり面倒ですが、専用のアプリもあります。


秘密の隠したい事柄というものは、いついかなる時にもあるものです。

それが他からみれば大したことがないものでも、本人にとっては天変地異の重大事。決して人に見られちゃいけない、そう思い定めて封をして、厳重に厳重に押し込めて、やがては本人も忘れてしまう。


動物が地面に好物を埋める姿を笑えません。

人間だって似たようなことを良くする。それも頻繁に。


人というものは、どれだけ進化しても根本の愚かさは変わらないのかもしれません。


さて、自己紹介が遅れました。

一体これを誰が見ているんだというものですが、それでも言っておくべきでしょう。


私はいわゆる偽警官と呼ばれています。


この対処課へと相談に来て、市職員さんの前で自らをバラして分解して頭を解いたものです。

忘れている人がいるかもしれませんが、「塞がれた呼吸の可能性」という名前がついたものが公表されています。


まあ、気になる人だけ読んでださい。

実際の所、これを読んでいるあなたが誰か、こちらはまったくわからないのですから。


さて、どうしてこうして書き込んでいるかと言えば、電子生命体として自由にハッキングできるようになったから、となれば格好いいのですが、残念ながらそうした良いものではありません。


ほどけてバラけて剥がし終え、ただの一枚の長いビニール状になったその後であっても、私は私としての意識があった、ただそれだけのことです。


その気になれば、ほら、こうして動いてこっそりと、パソコンに文字を打ち込むことだってできる。

気を抜けばほどけたビニールがカサカサと、あっちこっちに行き大変ですが、まあ、なんとかなる。


幽霊ってわけじゃないですが、それでも、ずいぶんと厄介なことをしているんじゃないかという自覚はあります。

自室ではなく職場であったとしても、誰か知らないやつが24時間いるとなれば良い気はしません。

まるで盗聴器を仕掛けられたような嫌さがありますね。


いえ、とはいえ、言い訳ではありますが、悪意があるわけじゃありません。

誰かの手先として物理的なハッキングを行っているわけじゃないんです。


ならお前、一体どういうつもりだ。

市職員さんにきっちりと巻き直しをされるのはケシカラン、毎日というわけではないけれど、三日に一回くらいやってもらってるじゃないか、お前一体どういうつもりだ、と言われるかもしれません。


あと先日、カレーをこっそり食っただろう、想定よりも減っていたのはお前のせいだとなじられても、ええ、その通りと頷きます。私がつまみ食いをしました。バレないようにほんのちょっと。


けれど、単純に嫌になったんですよ。

私って人間は編み込まれて作り込まれた偽物です。

本物ってやつを元に再構築された。


偽警官というのは、大抵そうです。

望んでなった奴なんていない。


私が憶えている思い出も、記憶も、この性格ですらも、その気になればいくらでもあの蜘蛛がいじくり回せるものでしかない。


改変されるよりも前の私が、警官をやっていたとは思えない。

今のこの姿、この職業は、まったく私の望みじゃない。


だというのに、根本的にあの蜘蛛には逆らえない。

反抗しようにも、その「反抗する脳みそ」を向こうは好きにできる。


だったら、いっそ「死んで」しまった方が良いんじゃないか。

そんなことを思ってしまった。


実際、今は呼吸の苦しさはありません。

呼吸そのものをやっていませんからね。


なんだかへんてこな形の反抗期なのかもしれません。

私自身ではどうようもないことに対し、どうしようもないんだと嘆くだけ。まったくもって情けない。


ただ、ええ、それでも一矢報いたいとは思うんですよ。

どうにか、現状のあれこれに変化を及ぼしたいと。


そのためであれば、まあ、本当に死ぬのも悪くはない。



ここまで、意味のよくわからないことを長々と書いたと思いましたか?

何わけのわからんことを言っているのだと。


だとすれば、狙い通りです。


知らない人からすれば興味のない事柄をツラツラと続けて目をすべらせた。

こんなもんなんて読んでいられない、そう思ってくれたら成功です。


私がこの隠しファイルに書きたいことは一つだけです。

市職員さん、私はあなたがやろうとしていることを知っています。


やってくれて構わない。

罪悪感を覚える必要はない。

そう伝えたかった、それだけです。


余計な文でしかないのかもしれませんがね、変な遠慮があってはいけない。

余計な後悔はもっといらない。


これは、そんな私的な、あなたに向けたメッセージです。


まあ、ただの杞憂で終わるかもしれませんけどね?



挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ