市職員メモ その5
昔からいる異常である捕獲者と、外より来た異常である夢操者がいる。
妙求市を舞台に、互いを排除しようと、さまざまな影響を及ぼしている。
だが、徐々にそのやり方は変化している。
有料トイレなどは、そのいい例だろう。
明らかに捕獲者によるものだが、人を攫い、直接変えるやり方から、部分的な影響を与えることで人を味方とするやり方へと変えている。
いままでの、罠を張って直接的に人を変える方法から路線そのものは変化していないが、違いが出ている。
人にとって好ましいと思うものを提示するやり方は、どこか夢操者を思わせる。
実際、一定の効果はあった。
夢操者の側だったZさんが、積極的に利用している。
実質的に陣営を変えたと言っていいほどに、肉体の透明化という症状は改善している。
一方の夢操者もまた変化している。
結果的に失敗したとはいえ、Uさんがもっとも欲する夢を見せ、先日はより多人数に対してこれを行った。
あるいは、ネット上から事前トレーニングというエサを提示した。
これらは、「人を変え」ようとしてるのではないか。
仮の話だが、もしUさんがマンガ内のキャラクターを送り出すのではなく、Uさん自身が共に「あちら側」へ行く扉をくぐれば、一体どうなっていただろうか。
おそらくではあるが亡くなっていた可能性が高い。
前述した夢から目覚めたとき、Uさんは店外にいた。
肉体的移動を、行っていなかった。
身体は二次元の世界へと行くことはできない。
その精神だけが、夢操者の支配下へ入ることになる。
別の言い方をすれば、罠を張り、人を招き寄せ、より強く人へと影響を与えた。
これも、今までの夢操者とは異なるやり口だ。
一体何故このような変化が出たのか。
捕獲者と夢操者は、互いのことを直接認識はできない。
その成果は確かめることはできる。
この二種の異常は、互いのやり方を学び取っているのでは。
最悪の可能性を考えよう。
それは、この二種が対決する事態ではない。
どれほどの被害が出ようとも、共倒れとなる希望が残る。
二種の異常が手を組み、認め合う事態こそが最悪だ。
この模倣は、互いの方法が有効だと認めた証だ。
すでに単純な、ただ叩き潰すべき敵だとは見做していない。
肉体は捕獲者が、精神は夢操者が支配下に置く。
そのような分割統治を行う事態となれば、対抗は最早できない。




