アーケード街の絵の可能性
その可能性を、あまり想定していない。
矢管吼にあるアーケード街は妙求市の中心とも言える場所だが、シャッターが降りている店も多い。
観光事業への興味が一切ない代わり、生活を豊かにすることには余念がないため、さまざまな形で誘致を行っているが、あまり効果は出ていない。
新規開店しては閉店のお知らせをすることを繰り返している。
外部から訪れたもので、明求市に馴染めるものは少ない。
「上の方の飾りがとても綺麗で、気分がよくなりますよね」
主婦であるLさんはニコニコとしながら言う。
朝、まだ開店前の時間帯によくジョギングをしているそうだ。雨の日でも気分よく走れる。
「とっくに流行が終わった店が出てるの、なんでなんですかね?」
アルバイトのUさんは不思議そうに首を傾げる。
最近までタピオカ屋が出店していた。
「遊ぶところがないんですよ、遊ぶとこが」
学生であるIさんは不機嫌に手をブンブンと動かしていた。
様々なスポーツができる総合エンターテイメント店は、まだ妙求市にはない。
市の中心的な場所であり、目立つものではあるものの、主な利用方法は雨天時における傘としての役目だ。
以前より、このアーケード街についての報告がいくつかある。
車が定期的に侵入する、閉店したはずの店がたまに営業している、アーケードに入ったはずだというのに野原に出ていたなど。
どれも人的被害は出ていないため、優先度は低い。
車の侵入に関しては、対処課の管轄から外れている。
ただ、無視できない問題がひとつある。
アーケード街入口、内部より見える絵画だ。
縦に大きく描かれた女性のそれに対して、雰囲気を崩しているのではないか、制作者は誰なのか、入口のみであり出口にないのはどうしてなのかといった指摘をよくされる。
当然の疑問だ。
市関係者の誰もが同じ疑問を抱いている。
本来、ここには何も設置されていなかった。
ステンドグラス様式のガラスによって、陽光を取り込む予定だった。
だが現在、その地点に巨大な絵画が飾られている。
誰が、いつ、どのようにしてこれを描いたか不明だ。
突き詰めれば責任問題となるため、本格的な調査を誰も行なっていない。
この制作者に対して、いまだ報酬が支払われていないのでは、という可能性について考慮したがらない。
定期的に絵が変わっているとの報告もあるが、黙殺される。




