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真偽の可能性

一部流血表現があります

ご注意ください

よいことではない可能性が高い。


Cさんは以前、相談に来た人だ。

未来の味を先取りしてしまうが、その「未来の味」が、ある時から一切なくなった。


実際、Cさんはしばらくの間、行方不明だった。

近頃ようやく姿を表し、その姿を見せた。


ひどく痩せていたCさんだったが、今は回復している。


「すいません」


ただし、その目つきは暗く沈んでいた。


「でも、どうしていいか、どう受け取ればいいか、わからなくて……」


行方不明の間、連絡は取れず、居場所は誰にもわからなかった。

それは、戻ってきたCさん自身にとってもそうだ。


「……断片的な記憶は、あるんです」


コンビニでコーヒーが出ないことを確認し、夜道を歩く途中、足に力が入らなくなり、その場で崩れ落ちた。

手の甲に、小さな蜘蛛が這うのを見た。


麻痺という単語が頭を過ぎり、意識が途切れた。


「ある程度、覚悟はしてました。それでも、なんで、って思わずにはいられませんでした」


気づくと、Cさんは引きずられていた。


自発的行動は何もできなかった。

何度も何度も、頭がぶつかっていた。


「たぶん、足首を持って引きずられていました、昇っていたのは階段で、一段上がるごとに頭に当たった」


うつ伏せの姿勢であり、何度も額と階段が激突した。

被害としては鼻の方が大きいはずだが、その感覚はなかった。


「たぶん、もうとっくに削られていた」


滑りよく階段を登り続けた。


「あの時の僕がどういう姿だったか、知りたくない……」


そうして気づけば、白い場所にいた。

真っ白な、なにもない空間で横たわっていた。


そこで、体を探られた。


「思い出せない、思い出せないんですけど、そいつが喜んでいるのは、わかりました」


痛みはなかった。

ただ、その細長い針のようなものが何本もあった。

行方不明の間ずっと、その折りたたみ式のアンテナとも、金属製の小枝とも見えるそれがCさんの体を探るのを体感し続けた。


「口も動かせない、うめき声も上げられない、目の前を、僕の爪や指や足首を通り過ぎるのを、ただ見るしかありません」


やがて、赤黒いものを高々と掲げた。


「僕の胃袋って、ああなっているんだ、って思いました」


痛みはないが、感覚はあった。

喉から伸びる食道の、繋がる先であると体感した。


「口の中に何本も細長いものが入って、探りました」


舌の、味蕾ひとつひとつを確認された。


「そいつは、僕の体がどうなっているのか、知りたくて仕方ないみたいだった」


科学的な解剖というよりも、捕食活動にも似た好奇心だった。


「そうしてついには、頭に向かった……」


目よりも上で、何かが外れた。

頭蓋骨が外された。

その音と感覚があった。


「憶えているのは、そこまでです」


細長いそれらが差し込まれる、その恐れを最後に、気づけばいつの間にか街中に戻っていた。


「おかしいですよね?」


Cさんは泣き笑いのような顔だった。


「絶対、とんでもないことになっていた、わけのわからないくらいの被害にあった、なのに、ほら、傷一つない」


喜ぶべきことだった。

だが、納得ができなかった。


「一年先を、予知するようなことをずっとしていた。そして、「この先は何も味わうことができなくなる日」に、僕は攫われた」


現在、Cさんはそうした予知はできなくなっていた。

コンビニでコーヒーを購入しても、普通に味わえる。


「こ、ここにいるの、本当に僕ですか? に、偽物だったりしませんか?」


救いを求めるように続けた。


「本当にまだ、人間ですか……?」


市職員は、それに答えることができなかった。



挿絵(By みてみん)

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