街中の宇宙戦争の可能性
その遊びは、行われていた可能性がある。
「どこなんです、なんで売ってるんですか! そうじゃなくて……俺も欲しいんですよ、本当に!」
Rさんは切々とそう訴えた。
順序立てた説明を求めたが、Rさんはどう言えばいいか分からない様子だった。
「映画、あるじゃないですか、あの有名な映画」
範囲が広すぎた。
「銀河で英雄で、最近だと色々揉めて、けど間違いなく名作で、ライトサイドで、フォースで、みんな知ってるあれですよ」
Rさんは上手く口が回っていなかった。
途切れ途切れの説明をまとめると、どうやら道行く何人かが持っていたということらしい。
ライトなセーバーを。
「……全員じゃないです、けど、十人に一人くらいの割合で持ってたんですよ」
最初、それは円筒形の機械にしか見えなかった。
小型の懐中電灯のようにRさんには見えた。
「最近、むちゃくちゃ寒いじゃないですか、手袋もなしに、よくそんなの持てるなって印象に残ったんです」
持つ人間は、老若男女関係がなかった。
小学生男子もいれば、スーツを着たサラリーマンもいた。
背の曲がった女性、厚手のコートを着た学生。
髪の毛を染めた男、マフラーをつけた主婦らしき人。
ハゲた男に、母親に手を引かれた子供まで。
「頭の図形のワッペンを服につけた子供が、手にしたそれを操作したんです」
独特の音ともに、光る刃が伸びた。
「母親が慌てて止めてたたんですけど、あれは、間違いありませんでした」
おもちゃではないと分かった。
空気の焦げるニオイを嗅いだ。
呆然と見る間に、母親が子供を抱え走り去った。
「誰かが配ったのか、それとも特別な条件があって手に入れたのかは、わかりません。けど、全員が俺とは正反対の方向に向かっていました」
Rさんと同じ方向を歩く人に、持っている人間はいなかった。
それをわざわざ手にして運ぶ意味など、本来はなかった。
まして、多人数が同じ方向へ行く理由など、一つしか考えられなかった。
「持っている奴らが、どこかに集まって、戦おうとしてるんです」
そう確信した。
何かを決定する戦いが始まると思えた。
「俺、急いで引き返しました」
朝の通学途中の時間帯だったが、思わずそうした。
先程の子供、あるいはそれ以外の所有者の姿を探し求めた。
「けど、いくら探しても見つからない……」
頭の中ではテーマソングが流れた。
先程の人々が宙返りを行い、風車のように光剣を振り回す様子が脳裏に浮かんだ。
「考えてみれば、頭? 生首? そんなマークのものを全員が身につけてました」
ギリギリまで探したが、妙求市は平穏だった。
どれほど空を見上げても、太陽以外には何も浮かんではいなかった。
「だから、知りたいんです、どうやったらあれ、手に入るんですか?」
対処課の管轄ではない。
少なくとも、近くのオモチャ売り場には無いようだった。
後日、買い物袋を手にした女性が、それを手に歩く姿を見かけた。
エコバッグには、頭部のマークが貼られていた。
それを悔しげに、あるいは羨望の眼差しで見る人々もいた。
彼らが身につけた頭部マークには、斜めの線が刻まれていた。
無傷のマークを持つ主婦らしき女性は、英雄のように堂々と歩いた。




