生首の可能性
その風習は、自然発生ではない可能性がある。
門松やしめ飾りなどの正月飾りを飾る期間は地域による。
関東では七日、関西では十五日までだ。
他県からの移住者の多い妙求市では家々により異なる。
正月の装いと日常が入り混じる様子は、この時期特有だ。
しかし、近頃は異なる風習が流行りつつある。
主に妙求市南の玄関にて、生首が飾られている。
もちろん、作り物だ。
だが断面を含めとても精巧な造りであり、見れば思わず足を止める。
門松としめ縄で飾られた隣家の玄関に、生首がぶら下がっている。
拒否反応を示す市民も多いが、飾る側からの困惑の声もまた多い。
曰く「知らぬ間に飾られていた」とのことだ。
家族の誰に聞いても心当たりがなく、正月飾りを捨てた覚えもなかった。
「でも、いいんじゃないですかね」
玄関先に十を越える生首を飾る人は気軽に言った。
「魔除けは、人を驚かせ、その地点を人々に注目させることによって防犯効果を発揮します。現代で同じことをしようとすれば、これくらいのインパクトが必要ですよ、おすろいねってことです」
最後のは、お揃いの言い間違えかと尋ねたが「わからなければいいです」と言われた。
近頃では百円ショップやスーパーなどでも、簡易的な生首が販売されている。
周囲が生首しかない中、ぽつんと正月飾りがあるのは座りが悪いと、わざわざ買いに来る人がいるのだそうだ。
ちょうど正月飾りを取り外し、生首を飾ろうとする人を見かけた。
不安そうな様子だったが、付け終えた途端、通行者の多くが足を止め「おめでとう」と拍手した。
困惑し、照れながらも頭を下げるその人の持つ生首の断面からは、赤い液体が垂れた。
悪趣味なギミックか、市職員の錯覚だと思われる。
だが現在、妙求市南では、数多くの生首が飾られている。
仮に、本物が紛れていたとしてもわからない。
血を流す生首が、対処課新入りにとてもよく似た偽物であることを確認しながらも、そのような危惧を覚えた。




