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66 恩讐の炎、復讐の牙(7)

 ガントさんの提案の後、対策会議は誰がオルトロスの口に縄をかける役を担うのかという議題に移りつつあったが、それでも意見の乱立が目立っていた。 


「オルトロスの抵抗に耐えられる縄なんて倉庫にないぞ。千切られるたびにかけ直せってか」

「他に策はねえだろ、食らったらおしまいのブレスなんだ、魔術経典を馬鹿みたいに乱発するよりはマシだっての」

「待て待てどっちも使えばいいじゃないか。渋ってられる状況か?」

「――お前たち、聞け」


 支部長が一言発すると、他の冒険者たちは圧に負けて口を閉じ始めた。それだけの威厳が支部長からは放たれていた。例え魔物に堕ちようとも、その振る舞いはまさしく見習うべき誇り高いものだった。


「オレにいい案がある。オレが縄になろう」

「「「「?」」」」


 そして開口一番に混迷をもたらした。支部長の身体が魔物だということは知っていても、その身体で具体的にどのようなことができるのかまでは知らない冒険者がほとんどだ。

 支部長は、百聞は一見に如かずとばかりに包帯をほどくと、身体から細い枝を縦横無尽に伸ばしてみせた。その姿を見て冒険者たちは支部長の言いたいことを理解したらしい。


「なるほど、これを巻き付けるということか。硬さも充分あるな!」

「必然的にあなたが最もオルトロスに近い位置にいなくてはいけなくなりますが、それでもいいので?」

「それが今こいつに聞くことか? 問題は当て方だろう。もともとオルトロスはお前を警戒しているはずだ。匂いも覚えているとみていい。しかも、双頭に同時に仕掛けなければ返す刀で呪いをぶつけられるぞ」


 キララさんの懸念は俺も薄々感じていたものだ。オルトロスにとって、支部長は警戒するべき相手だろう。なにせ消えない傷を刻んだ人間なのだから。

 奇襲や奇策はそこに意識が向いていないからこそ効果的なのだ。元から警戒されている支部長が、オルトロスの口を拘束することができるのだろうか。


「それなら問題はない。オレは――分裂できるからな」


 支部長はその場で2人になってみせた。いや正確には2匹に、だろうか。俺たちは非常に困惑した。

 静寂が満ちる会議室において、キララさんが一番槍を務めた。


「おいバズー、どっちがお前だ?」

「「どっちもオレだ」」


 キララさんは支部長の返答にこめかみを抑えた。俺もそうしたい気分だった。


「どっちが本体だ?」

「「どっちも本体だ」」


 俺たちは頭を抱えた。自我同一性とかどうなってんですか。キララさんの横で先生だけが知的好奇心にあふれた表情をしていた。やっぱりすげえよ先生は。 

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