65 恩讐の炎、復讐の牙(6)
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時間は少し巻き戻る。
先生と喧嘩別れみたいになったあとの協会で、オルトロス討伐隊に志願した俺たちは作戦会議をしていた。そこには何と先生もいた。しかしこれは当たり前のことだが、知恵者の見識は重宝されるべきものだ。軍師が必ずしも戦場に出る必要はないのだから。
俺と先生との間の諍いは今だけはないものとして振る舞おう。先生としても気まずいのか、俺の隣という定位置からは外れてキララさんの右隣に立っている。
まずは支部長が議題を投げかけた。
「オルトロスの口を塞ぐことは最重要事項だ。あれ一息でダース単位の死者が出る」
「ノドに綿でも詰め込むか? ついでに窒息させたら万々歳だ」
「実行役が確実に死ぬぞ。双頭を一度に抑え込むことは難しいし、犠牲が一人か二人で済むとも思えない。それに吐き出されたりでもしたら二度手間だ」
キララさんの突飛な提案に、支部長は容赦なくダメ出しをした。キララさんはそれもそうかと肩をすくめた。
次に、ふたりのやり取りを眺めていたガントさんが何を思ったのかにやりと笑った。
「おれに提案がある。これは小さな山くらいある化け蟹を狩った時の話なんだがな……」
「蟹でござるか。それほど大きければ、鍋にすればさぞやいいダシが出るに違いない。じゅるり」
「話の腰を折るなってのシノビ。……にしてもそうか、汁物にするのがよかったのか。おれァもったいねえことしてたんだなあ」
「なんとっ、であれば蟹はいかように処理したのでござるか!?」
ぼりぼりと髭をかくガントに、シノビが聞き捨てならないと声を上げた。よほど蟹の扱いに一家言あるらしい。
「毒で弱らせてから殺したんだ、んな戦い方した後で食えるわけねえだろ。知ってたら違うやり方で倒してたっての」
「なんともっっったいない!!! というか、毒も使うんでござるかガント殿。てっきり拙者は斧で殴り掛かるしか能がない脳筋かと……」
「ただの脳筋が二つ名もらえるかっての。ああくそ、話を戻すぞ。脇道にそれちまった」
いいか、とガントさんが真剣な顔つきになって自分の案を語り出した。
「挟み込む力と比べたら、開く力ってのは案外弱いらしい。だから縄かなにかで上顎と下顎をグルグル巻きにしちまえばいいんだよ」
実際それで化け蟹のハサミはなんとかできたしな、とガントさんはにやりと笑った。




