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60 恩讐の炎、復讐の牙(1)

久しぶりに投稿です

 作戦決行当日の朝になった。すでに作戦に参加する冒険者たちは郊外に出て整列していた。その数およそ20人。俺も列に加わったが、その列の中に先生はいなかった。

 即席の演説台の上にはキララさんがいる。対外上は、これは対オルトロス戦闘を想定した訓練ということになっている。間違ってもこのままオルトロスの現在地に突っ込むなんて説明はリーシャさんにはされていない。


「諸君、よく集まってくれた。だが、この場にいない冒険者たちを蔑みの目で見ることは許されない。彼らにはスウォールの防衛を第一に考えてもらっただけの話。対して諸君らは、目先の功績のために職務違反を敢行する処罰対象となる」


 戦意に満ちた冒険者たちの顔を見つめるキララさんは、申し訳なさそうな顔をしていた。オルトロスを打倒せんと立ち上がった誇り高き勇士たちに、お前たちのしていることはあくまで独断専行になるのだと告げなければいけないのだから。

 オルトロスのおおよその位置は、ウンコの神と斥候として出ていた冒険者たちの貢献によって割れている。あとは突撃するだけだが、その前に少し手順を踏む必要がある。

 ここには支部長がいない。その意味を分かっている者だけがここにいる。


「魔物が出たぞー!」


 真剣さに欠ける声が壁の向こう側から響く。その掛け声と同時に、人型の樹木が外壁を乗り越えて郊外に飛び出してきた。樹木の魔物は誰を襲うでもなく、一目散にある方向に向かって逃走している。

 キララさんは棒読みのような声で冒険者たちに『対処』を願い出た。


「なに、街から魔物が出ただと! オルトロスとの戦いも控えているというのに、このままではスウォールの沽券に関わる。あれを倒したものにはあたしから金一封を約束しよう!」


 整列していた冒険者はキララさんの掛け声を聞き終えると、各々獲物を手に取って魔物を追いかけだした。その顔にはどこか深刻さが欠けている。俺も後を追うように魔物を追って駆けだした。


「おう、とんだ偶然だな! しかし俺たちは運が良い、訓練中に魔物がでてくるだなんて予想もしてなかった!」

「そうとも、だが金一封はオイラのもんだ。お前たちには渡すもんか!」

「い〜やウチだね! あの魔物が向かう先にオルトロスでもいれば、一石二鳥ってやつなんだけど~!」

「なんかワザとっぽくなってないか? 下手に怪しまれるようなことはしないでくれたまえよ君たち!」


 ……さて。もちろんのことながら、壁の向こう側から出てきた魔物というのは支部長のことである。

 冒険者たちは街中から「たまたま」現れた魔物を追いかけるという建前で、オルトロスの居場所まで近づく手筈になっている。何もしないで突っ込むよりかは後々受ける処罰が少なくなるからと、キララさんが考案したのだ。

 

 段取りとしてはまず、昨日からオルトロスの現在地を追跡している冒険者たちのキャンプに向かうことになっている。

 そこで一度休憩を挟んでから、オルトロスとの戦闘を始める予定だ。


 ひとつだけ懸念がある。オルトロスのだいたいの位置は特定できていても、アーリャの居場所までは突き止められていないことだ。

 ……やめよう、オルトロスと戦うことのほうが先決だ。俺は雑念を振り払った。

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