44 A.デートではないです。
冒険者協会。その支部を通じたつながりについては今回まさにその恩恵を受けた身である。多くの冒険者たちがすぐさまスウォールにやってきたのは、驚きの一言だった。余裕がある支部から送られてきたことは予想がつくとはいえ、相互扶助にもほどがある。
人員の派遣、ふたつ名システムという特色ある人材の発掘・共有の徹底。人と人を結ぶ物流網が異様なまでに発達している。人材の流動化にしてもここまでくると諸刃の剣じゃないだろうか。いるべき場所から人がいなくなるっていうリスクもあるわけだし。
「誰がこんなシステム作ったんだろうな……」
「ああ、それならここフゥルール王国の初代王の功績です。中央集権的な国家をつくるにあたって、人材が過度に首都近辺に集まることで、地方都市や辺境の力が低下することを王は恐れました」
「へえー、具体的にどんなことをしたんです?」
「街道や関所の整備に、冒険者協会の設置。当初は冒険者にA~Eのランク付けがされていました。ランク詐欺や不正の横行により今は撤廃されていますけど。さて、このランク付けの意味が分かりますか?」
ランク付けか。ええと、依頼の難度を分けてそれぞれに適した依頼を割り振るためとか? あと新人が誰を手本にするべきか明確になる、とか。どちらもありそうだが、話の流れから察するにこれの答えは人材の分散につながっているはずだ。
キーワードは何だろう。地方。人材不足。実力主義。名声。どれもしっくりこない……成り上がり、かな?
「あっそうか。首都で成功できなかった人、首都では難しくてもその外でなら名声を得られる実力の人が地方に向かうのか。ランクはその目安か自信になるんだ。Aランクの俺はどこでもやっていけるって。でもそれって流出と変わりませんよね? やり過ぎたら、今度は首都から人がいなくなるじゃないですか」
「それをさせなかったのが初代王ウンプトゥルールの手腕です。軍隊や隊商の護衛などを冒険者の中からお抱えとして採用することで王家直属というブランドを確立し、人生一発逆転の地として首都コルバルールにゆるぎない評判を残しているのです」
「だから冒険者協会って旅人の友なんですね。誰がどこに行っても仕事にありつけるようになってるんだ、それ前提の制度だから」
「そう、そう、そう! ほんっと初代王は功績の多い人物なんですよっ。知ってますか、彼の墓はいまだ見つかっていなくてですね――!」
歴史のことになると水を得た魚のように先生がイキイキし始めた。なるほど、先生は歴史トークがしたかったのかもしれない。キララさんが嗜んでいるのは(俺の知る限りでは)酒と煙草ばかりだし、話が合わなかったことも多々あるだろう。
ならば俺は先生の歴史トークの礎となるまで。このままこの国の歴史について聞いて聞いて聞きまくって好感度アップだ!
3時間が経過しました。先生の弁舌に微塵も衰えは見えません。フッ、先生には勝てないな。がくり。俺は石畳の上に倒れこんだ。




