27 新たな力
目を覚ました俺に、支部長は感心の声を上げた。正直に言って二つの意味で恥ずかしい。俺は両手で顔を覆った。
ひとつめ、自分の技で気絶するというやらかしをしたこと。これからは威力の調節に励もうと思う。両手で一気にやったから失敗したのかもしれない。片手だけなら、もう片方の腕で支えることもできるわけだし。
ふたつめ、支部長の《炎刃》を真似したこと。支部長の《炎刃》は赤い炎で俺のは青い炎だが、腕から炎を出すという発想のきっかけになっていたのは言い逃れできないことだ。
「逆転の発想だなイーヴィル、あとは慣れるだけだ」
「いやあ、支部長のおかげです。めっちゃ参考にしました。名前はあとで考えます」
「オレもなんだか誇らしい気持ちだ。さて、挑発のウンコを頼む」
「えっ、支部長今なんて言いました?」
「挑発のウンコだ。次にお前が戦うのは魔物だ」
俺は聞き返した。支部長の顔つきで、真剣な口調でウンコとか言われるとなんだか調子が狂う。
「慣れには実践あるのみだ。オレ相手には手加減してしまうかもしれんしな、遠慮なく戦える相手が欲しいだろう?」
「た、確かに。よしやるぞ、《変身》っ。神様、あとよろしく!」
なんという的確な判断力なんだ。こうもウンコの活用法を思いつくとは。
ウンコの神の指示よりもよっぽど受け入れやすい。嫉妬しているのか、恨みのこもった視線を支部長に向けている。俺が支部長の指示に従うのが気に食わないんだろうか。
俺は少し支部長から離れて、近くの草むらでいつでもウンコを出せる体勢になった。流石に見られながら、というのは恥ずかしくてできない。
「~~っ、我がしもべの手本となったことに免じてひねり出してやろう。フン!」
糞だけにってか。ブリブリと不快な音を立てて鎧の臀部からウンコがひねり出された。
さて、これで魔物が近づいてくるはずだ。前回はこれでカミナリオオカミの群れを呼び寄せたわけだが、今回はどうだろうか。前回の屈辱を果たすためにも、俺としてはカミナリオオカミと戦いたいと思わないでもないのだが。
俺は警戒した。魔物はこちらの都合など関係なくこちらを襲うのだ。遠吠えなし、足音なし、空にも敵影はなし。もしかして、このあたりに魔物はいないのか。それはそれでここが魔物の脅威にさらされていないってことでいいことなんだが。
俺は警戒を解かないまま、ウンコの神がなにかサボったのではないかと疑った。
「おい神様、ちゃんと挑発のウンコ出したんだろうな? 何も来ねえぞ」
「うんと特別なものを出してやったとも。まあしばし待て、すぐ来るはずだ。その間に余はその男と話すことがある」
「どうしたウンコの神。お前がオレに話すことなどあったのか」
しばし待てって、後から効いてくるウンコなの? そんなこともできんの? 無駄に器用だなお前。
それに支部長とお前が話とか、罵倒ばっかするようだったらこれからの旅でトイレ作ってやらねえからな。トイレでウンコもしないぞ。『そこまでか! わかったわかった、そんなことはせぬ』……冷静に考えて、こんな言葉が脅しになるってのもおかしいよな。俺は嘆息した。




