25 訓練 訓練 訓練
俺は支部長と模擬戦をしていた。場所は耕作放棄地。郊外でも特に外周の部分にあり、人がめったに寄りつかないのだとか。
「こちらは問題ない。お前の合図で始める」
「行きます。――《変身》!」
「《炎刃》!」
それもウンコの神の力を使いながら、の模擬戦だった。まともではない力の所有者同士学べることがあるはずだと、俺は支部長に誘われてここに来ていた。
休憩と指南を何度か挟みつつ、今は7回目の手合わせになる。
――おおイーヴィル、我が愛しのしもべよ。今日はあの魔物めと戦うそうだな。遠慮はいらぬ、余のもとに集まった信仰は果てしなく、天さえも穿つことだろうッ!!!
無断で郊外に設置しまくったトイレだが、これが驚くべきことにちゃんと使われているようで、ウンコの神は嬉しさの余り悶え飛び跳ねているかのような声で俺に力の使用を許可した。ちょっとキモかった。いや訂正、ちょっとどころではなくキモかった。
しかも《苦悶の咆哮》も《天使の沈黙》も空中浮遊も使い放題だとのことだった。そんなにウンコするやつが増えたのかよ。
「いいか、自分の可能性を解き放て。今できることから次にできることを試行錯誤しろ。手札は多ければ多いほどいい、その分お前は強くなる」
「はい!」
支部長のアドバイスはためになった。《変身》した俺の長所、そして弱点を少しづつ探っていった。
判明した俺の長所は、敵の攻撃をある程度までなら痛みなしで特攻を仕掛けられるところ。これは《変身》した俺の外装の硬さによるものだ。電撃は通しちゃうけど、それはそれ。支部長の《炎刃》の熱に関しては、ほとんど効果がなかったほどだ。
逆に短所は、近接戦が弱いところ。格闘技なんて今まで生きてきて全くかじったことのない俺は、適当にパンチやキックを振り回すしか能がない。がむしゃらに攻撃したり、近距離で《苦悶の咆哮》みたいに魔力を放出するのは隙が大きくて、何度も支部長にカウンターを決められた。骸骨騎士と戦った時もそうだったっけ。
幾度かの攻防の末、俺は支部長の伸びた腕に捕まれて地面に叩きつけられた。俺は《変身》を解除した。体勢が崩れて地面に倒れた時点で終了とし、その後はいったん反省会だ。
「空中なら安全だって思って油断してました。《苦悶の咆哮》での牽制が通用しない場合もやっぱり考えるべきですかね」
「オレより遅い相手なら通用するだろう。《苦悶の咆哮》を使うかどうかは相手の装甲を見て瞬時に判断できるようになれ。もちろん、相手にお前を叩き落せる手段があるかもしれないと疑うことは忘れるな」
支部長ってばやろうと思えばどこでも燃やせるようで、足から炎を噴出して俺みたいに空中を飛行することもできたのだ。おかげで2回前の模擬戦で空に逃げて安心しきっていた俺は地面に叩き落された。
「武器もった相手にどう立ち向かえばいいのかは課題ですね。腕で受けて殴る撃つしか俺できないですよ」
「そこを考えるのがお前だ。お前以上にお前を知っているやつなど――お前の場合は、ウンコの神とやらがそれか」
「その通りだハングド・ツリー、ウンコをしない魔物よ。ついにその正体を隠さなくなったなァ。だが我がしもべの特訓に付き合っている以上は見逃してやらんでもない」
「馬鹿、俺らは面倒見てもらってる立場だろうが」
「馬鹿とはなんだァ! 近接戦くらい余の力をもってすれば何とでもなる!」
だからその具体的な方法が知りたいんだよ。支部長並みの速さとテクニックを併せ持つ人間もしくは魔物が相手だったとして、俺の手札は少なすぎるだろうが。
骸骨騎士との戦いでも、そのせいで情けないことにお前に頼ることになったんだからな。
「ウンコで剣を作るのはどうだ、我がしもべよ。万物万象を真っ二つにすること間違いなしだ」
「却下」
なんで受け入れられると思った? というかお前の濁りなき純粋なウンコへの信頼は一体どこからくるんだよ。『トイレの中からだな』うるせえよ、なんでわざわざテレパシーで伝えてきたんだよ。
「では拳にはめる爪ではどうだァ?」
「ウンコから離れろって言ってんだろうが!」
「待てイーヴィル、馬糞を矢じりに塗って毒矢とした話がある。爪に塗ってもいけるんじゃないか?」
マジで言ってる支部長? 俺は驚いた。この人も冗談をいうことがあるのか。
……え、冗談じゃない? そういう話があるのは本当? いやでもダメですよ、コイツが言ってるのは全部がウンコでできた武器を作ろうって話だろうからさ。
支部長は納得してくれた。渋々だったのが少し不安である。




