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12 狂人の真似などせずとも

 カタギじゃない皆さんが協会前からお帰りになってしばらくの間、俺はしばらく呆然としていた。というか、ココガ村で同じことをした時のことを思い出していた。

 あの時も確か、村人たちはあんな目をしていたっけ。「何を言っているのかよくわからない」「よくわからないことを、こいつは当たり前のことのようにぺちゃくちゃと」「気味が悪くて、相手をしていられない」「そんなにウンコが好きなら食ってろ」そんな反応だった。

 

「イーヴィル、大丈夫か?」

「あ。支部長」


 俺は支部長の声で我に返った。怒りよりも心配が態度に現れていた。俺にもっと言いたいことはあるだろうに、最初に俺を気遣うセリフを言ってくれるのは人ができているとしか言えない。


「今回の騒ぎはなんとか収まった。だが次はないだろう。同じことを起こせば、次は庇いきれないかもしれない」

「ホント迷惑かけました、すみません支部長!」

「命があるなら何度でもやり直しはきく。……しかしお前、建築の才があったのか。オレも現地に赴いたが、30箇所以上を1日で、いや半日で設置して回ったとはな」


 支部長が感心した様子で俺を慰める。こういうフォローができる大人って素敵だなあ、見習おうっと。


「いやあ、トイレに関しては作り方が頭に染みついているっていうか。勝手に出来上がってるんですよね。期待してたら申し訳ないですけど俺、他のものはあのスピードで作れませんよ?」

「そうか。建材は、焼却場の待機エリアからかとってきたのか?」

「それもありますけど、北の大工さんのところから融通してもらいまして」


 そこについては運がよかったというほかない。いくつか道具も貸してもらったし。あとで返しに行くとしよう。俺のしでかしたことが飛び火していないことを祈る。

 あと途中で抜けたからアーリャの負担がすごいことになっているだろう。そこも謝っておかなくちゃな。

 俺がしたことを改めてまとめると、いわゆる不良やチンピラ、マフィアがよくたむろしている場所の空いているスペースにトイレを立てまくった。だって誰もいないところに置いても意味ないし。

 彼らからすればこれは、メンツをつぶされたということになるらしい。まあ自分の家に勝手に知らないスペースを付けられていたらみんなびっくりするよな。


「その、お前が言っていたタイヒとやらで作物の実入りがよくなるという話は、あの神話オタクからの入れ知恵か?」

「あ、先生のことですか?」

「お前の後援をしているピンクの髪をした年を取らない魔術師のことだ。郊外でうまくやれているかと連絡があった」

「じゃあ先生ですね。――ええと、俺の身体にはよくわかんないものがとりついていまして」


 言うまでもなくウンコの神のことである。支部長は少し目を見開いて俺の話を聞いていた。


「そいつが俺にいろんなことを教えてくるんです。堆肥の作り方も、そいつから教わりました。いつの間にか理解してたって感じですけど」

「ならトイレを作って、お前の得になるのか?」

「ウンコをするときにそいつがなんか祈ってたら力になるらしいです。あと堆肥を捧げてもパワーアップします」

「……寄生されているのか?」

「曲がりなりにも助けてもらったから渋々、ですね」


 支部長は顎に手を当てて深く考え込んだ。何言ってんだコイツ、とか思われているんじゃないだろうかと緊張する俺だった。

 でもまあ、拒絶されたとて噓つき扱いされたとて――とまで考えて、最初の動機を言い忘れていたことに気が付いた。


「あと、ここって皆好き勝手にウンコしてるじゃないですか。同じ場所でするようになれば、今日みたいな掃除の日は楽になるんじゃないかなーって思ったんです。回収しやすくなって」

「あと1週間はもう掃除はしないぞ? お前個人が得られる利益はほぼ皆無だ」

「ああ、そこは関係ないです。あと2週間もしないうちに俺は街に帰りますけど、残せるものがあるならいっぱい残した方がいいだろうなーって」


 支部長は更に深く考え込む様子を見せると、協会の中から一枚の紙を取り出して戻ってきた。

 それは依頼書だった。長らく放置されていたようで、依頼書は痛んでいた。


「畑で野菜を作っているやつが南にいる。高齢でな、息子は旅に出た。雑草狩りをこなしつつ、話に乗ってやってくれ。お前が適任だ」

 

 それが俺の明日の仕事になった。新人に任せるには重くないだろうか。内容というよりも事情が。

 不満はないし、むしろ仕事を割り振ってくれることに感謝すら感じるが、それホントに俺適任かなあ?

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