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11 共同作業 転じて

 率直に申し上げて、アーリャは俺のことが嫌いなようだ。支部長もそこは懸念しているらしい。

 ここまでアーリャの神経をひとつひとつぶち抜いていくやつは初めてだとお褒めの言葉をもらった。

 となると俺にとって、彼女が近くにいる時には原則黙っているのが最善だということではないか。


「今日のお前たちの仕事は街の清掃だ。またゴミがたまり始めている。焼却場が正常に動いているかも確認してくれ」

「支部長、それどっちに言ってるの? あたし? それともコイツ?」

「両方だ。アーリャは先輩としての自覚を持ち、イーヴィルは後輩として先輩の背中を見て学ぶように」

「はぁーっ!?」


 なるほど、そう来たか。俺は支部長の手腕になるほどと思った。

 このままでは俺とアーリャは残りの任期を喧嘩をしまくるだけで終わる。チームプレイなどあったものではないし、休息の場として与えられている協会で過ごす時間が居心地の悪いものになってしまう。


 つまりこれは、仕事はこなしつつもこの1日でなんとか相手と適切な距離をとれるようなれ、という二重の命令。これからの日々を心地よいものにするための必要な犠牲というわけか。

 昨日アーリャに蹴られたこめかみを抑えつつ、俺は考えた。果たして俺の命がもつだろうか、と。


「さっきから一言もしゃべんないで何黙ってんのよ!」

「いてっ!?」


 俺はふくらはぎを蹴られた。マジでもってくれよ俺の命。


 協会の周りを清掃したときに見かけたようなゴミに顔をしかめつつも処理しながら、俺はふと浮かんだ疑問をアーリャに質問した。これは後輩としての質問だから大丈夫、のはずだ。


「なあアーリャ、先輩。こういう道端に堕ちてるウンコってさ、焼却場ってとこに持っていくんだよな」

「そうよ、ゴミは燃やすの。街中のゴミも来るのよね。……臭いからさっさと拾って!」

「じゃあこっちのネジも、あの野菜クズも? 全部一緒のところで?」

「そうだって言ってんでしょ、何か文句でもあんの?」


 文句ではない。村とはゴミの取り扱いが違うだろう。どう処分するのがわからないから質問しただけだ。

 それと違和感がある。ココガ村とスウォールの郊外に違いがあるのは当然だが、それはそれとして――


「――トイレがない」

「は? トイレ?」

「共用の便所だよ。そういえばあいつ言ってたな、神殿がないって」


 ココガ村にはあって、スウォールにはないもの。それはトイレだ。だから路地に誰がしたかもわからないウンコが捨ててある。見えなかっただけで街中の路地裏にも、ウンコは転がっていたのかもしれない。街中には清掃に回せる人材がいるから目に入らなかっただけで。


 スウォールにあって、ココガ村にはないもの。それは焼却場だ。全部のゴミを燃やしているとアーリャは語った。ここではすべてが分別されないまま処分されている。ウンコは肥料になるというのに。

 ウンコの神のよくわからない発言が、的を得た情報として俺の脳髄に突き刺さった。


 ――そうだ、トイレを作ろう。スウォールの郊外、そのいたるところに。

 そうすればウンコをわざわざ探して拾う手間が減って、アーリャと支部長が楽になるんじゃないか? 俺天才?


 その日の夕方。

 俺は協会の前で、支部長や強面の人に囲まれて正座させられていました。


「イーヴィル、彼らの言っていることは本当か?」

「――はい、認めます。全部勢いでやりました」

「認めます、だあ!? それで済むならここまで来る理由なんざねえ!」

「おれ達もだ! 落とし前はきっちりつけてもらうからなあ!?」


 俺は郊外の至る所にトイレを設置した罪で怖い顔した人たちに捕まり尋問を受けていた。

 幸いなのはその場で私刑もとい死刑を受けなかったことだろうか。

 各所に見境なく手を出したのが転じて、どこのグループも俺に落とし前をつけさせようと躍起になって膠着状態になったのが勝因だろう。勝因とか言っていられる立場じゃないが。


「まあ、待ってくださいよ。これにはわけがあるんです」


 俺は狙いを話した。トイレの設置で街が今より臭くなくなることや、トイレに集まったウンコは発酵させて堆肥にするといい肥料になることを力説した。堆肥で作物は美味しくなるわ、街の至る所から悪臭がしなくなるわで良い事ずくめだ。




 何故か狂人の相手なんざしていられないと皆どこかに行ってしまった。なんで?

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