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08 冒険者協会郊外支部へようこそ

 郊外にある協会は、はっきり言って街中のそれよりもボロボロだった。今にもガタがきて崩れてしまいそうな建物で、正面にの外壁に塗装された三日月と狼の紋章もかすれていた。

 黒コートの男はこのガタつき具合を自嘲してか、「ボロ小屋へようこそ新人」と口にした。俺は思わず「いやいや、ボロ小屋と呼ぶには失礼です」と返してしまった。だってココガ村の俺の小屋に比べたら豪邸も同然だし。

 悲鳴のように木が軋む音を響かせながら、協会のドアは開けられた。

 建物の構造はほとんど街中の協会と大差なかった。刃物で切りつけられたような後が壁や床などところどころについていることを除いては、だが。いったい何があったというのだろう。

「では木箱を受け取ろう。どうせ中身は分かりきっているがな」

「はい、確認お願いします。俺、文字読めなくはないんですけど、自信なくて」

 俺が近くにあったテーブルに木箱を置くと、黒コートの男はひょいと木箱の蓋を取り外した。

 そこに入っていたのは5枚の羊皮紙と、黒コートの男の予想通りに俺の郊外勤務を命じる命令書だった。

 黒コートの男が「本当にいいんだな?」と視線で訴えかけてくる。ここまで来て引き返すとかできるものか。俺は腹をくくった。1週間、知らない土地でもやっていけるのだということを証明してみせるのだ。

「ええと、俺の名前はイーヴィルです。1週間よろしくお願いします!」

「オレのことは好きに呼べ。名目上はここの支部長だが、かしこまる必要はない」

「わ、分かりました支部長! それで、俺の最初の仕事は何でしょうか!」

「落ち着け。その前にいくつか確認がいる。お前、年はいくつだ?」

 俺は首を傾げた。街中の支部ではキララさんに聞かれなかったことだからだ。

 仕事が多いなら年齢で仕事を分けるのは不公平というか、非効率的なんじゃないだろうか。

「ええと、15だと思います」

「なら、内容が何であれ勤務は日没までだ。夜になると治安悪さは昼の比ではなくなるから、依頼を終え次第ここに帰ってくるように。魔物との戦闘経験は?」

「ないですね。ゴブリンとかオークとか、遠目に見たことはあります」

「卑下することはない。戦わずに一生を終えられるのなら、戦いの中で死ぬ危険を犯すこともないのだ」

 俺は嘘をついた。ウンコの神も村を出てからは力が出ないようだし、助力は望めない。というか頼りたくない。あの鎧を借りるようなことはこの先無いようにしたいというのが俺の願いだ。徒手空拳だけで戦うならともかく、あいつの加護で放てるようになる技って、全部ウンコかそのメタファーじゃん。

 ウンコの神の力を借りない俺は、ゴブリン一匹ともまともに戦えない雑魚だ。下手に戦えますといって討伐に連れて行かれても足を引っ張るのがオチである。 

「日も傾いてきたことだ、お前には協会まわりの清掃をしてもらおう。ゴミはまとめるだけにして、焼却場に捨てに行くのは明日に回せ」

「はいっ、わかりました。あと明日でいいので焼却場の場所教えてください。じゃないと道に迷いそうで」

「ああ、わかった。オレは少し出る。留守を頼んだ」

 俺は掃除道具を支部長から受け取って、協会の掃除にいそしんだ。

 協会の周りには多様性豊かなゴミが転がっていた。俺は顔を引きつらせながらそれらを片付けた。

 路地裏でひねり出されたらしいウンコ。コロコロと転がる人間の歯。血痕のついた木材。根元で切断されている人間の指。時々聞こえる怒号の応酬。焦点の合わない目をした酔いつぶれた髭面の男……これはゴミじゃないな。

 どうしようかとオロオロしていたら、明らかにカタギには見えないスキンヘッドに入れ墨を入れた男が「悪いなあ、うちの客が迷惑かけてよ。掃除おつかれ冒険者クン」と残して彼を担いでいってしまった。

 怖いなあ、郊外って。俺は箒を片手に身震いした。


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