05 開封厳禁、信用商売
先生は副支部長から他の仕事を任されたそうで、残念ながら別行動となった。
俺は両手でしっかりと木箱を支えつつ、徒歩で郊外の冒険者協会支部目指して歩き出した。
いやいや、何を弱気になっているんだ俺は。先生なしでもやっていけるような人間でありたいって心に誓ったばっかりだってのに。
それに木箱を届けるだけだなんて楽な仕事だ。この街の冒険者協会は、街中のものも郊外のものも三日月と狼の紋章がトレードマークらしい。なので、それっぽい紋章がある建物に向かえばいいのだろう。なんだったら、通りがかりの人に道を教えてもらえばいいのだし。
――ただし、中は見るなよ?
副支部長の警告が胸に突き刺さって離れない。見るなと言われれば見たくなるのが人間のサガというものだ。もちろん見るつもりはないが。
「他人に見られる分にはセーフなのか……? いやダメか。通りすがりの人とか、仕事に関係ない人に見せていいものだとも限らないしな」
俺はなんとなく木箱をゆすってみた。何かが木箱の壁に触れた音はしたが、そこまで大きな音ではなかった。どうやら箱の中身はそこまで硬いものではないらしい。パンや果物といった食べ物が入っているわけではなさそうだ。
そこまで考えて、俺は開けなくても中身は予想できると張り切っているワルガキ根性の俺を心の中から追い出した。見るなよと言われている以上、中身について考えることも不誠実だろうが。
自分の不甲斐なさにため息をついていると、もう外壁の関門が見えてきた。
スウォールの街の郊外は、つまり街の外壁の外に広がる土地のことを指すのだそうだ。そこは街の警備隊のパトロール範囲外で、一言でいうなら治安が悪いのだとか。
そのような場所に行かなければいけないのはハッキリ言って荷が重いが、ここで仕事を投げ出しては俺を紹介して冒険者登録を手伝ってくれた先生に顔向けできない。
俺は一念発起して関門に近づいた。今日この街に入るためについ先ほどくぐったばかりの門だ。
「外出か? 許可証は?」
「えっと、バッジだよな。ほら、これ」
「確認した。日が暮れる前までには戻って来い。お仕事頑張れよ新人君」
俺は副支部長からもらった、冒険者協会の一員であることを示すというバッジを提示して関門を無事通ることができた。微笑ましいものを見るような目で関門の兵士さんに言われたことだし、さっさと渡してさっさと戻ってこよう。
俺はスウォールの郊外に足を踏み入れると、早足になって冒険者協会を探し始めた。




