03 副支部長との面談
受付さんの案内に従って、俺たちは協会の2階に上がった。2階の廊下にはカーペットが引かれており、自分が場違いに感じられるような高級感に包まれていた。
俺は餞別としてもらったユーリのお古の服を着ているわけだが、もし村での普段着を着ていたら場違い感はこれ以上だっただろう。
ありがとうユーリ、離れていても俺を守ってくれて。
カーペットの上を歩いていくにあたって、靴とか脱いだほうがいいんじゃないかと俺は思ったが、先を歩く先生と受付さんにならって靴は履いたまま廊下を歩いた。適切な作法を知らないってこんなに恥ずかしいんだな。
「副支部長、2人を連れてきました」
「お疲れ様、戻ってよろしい」
受付さんが、副支部長室と彫られたプレートがかけられているドアをノックすると、部屋の中からは凛とした女性の声が響いた。
受付さんは面談に同席しないようで、階段の方へと戻っていった。お仕事お疲れ様です。
「失礼しますね、キララさん」
「えーっと、失礼します!」
躊躇なくドアを開ける先生に続いて、俺も入室した。よく考えてみれば「失礼します」って不思議な言葉だ。
失礼をする、つまり無礼を働くことを最初に申告することが礼儀作法のひとつとは。マナーとは奥が深いものであるらしい。
「ようこそ、スウォール支部副支部長室へ。ろくなもてなしもできないが、まあ座れ」
不機嫌そうな金髪の幼女が1人用ソファーに座って、行儀の悪いことに足を組んで、ワイングラスを片手にタバコを吸っていた。
…………!?
俺は部屋を見渡した。先程ドア越しに響いていた大人な女性の声はどこから? そしてこの非常識なお子様は一体何者?
俺は混乱した。変な夢でも見ているのだろうか?
「お久しぶりです、キララさん。相変わらずお変わりないようで」
「それは自虐か? それともアタシへの皮肉か? 最近面倒な案件が立て込んでてね。アンタからの依頼はしばらく受けられないよ」
「いえ、今回は私的な依頼ではなく、彼の冒険者登録をお願いしたいと思いまして」
俺の2つの疑問を氷解させる解が舞い降りた。
目の前の幼女のノドから、先程聞こえた凛とした声がする。つまりこの人がスウォールの冒険者協会の副支部長。
俺の思考は停止した。白目剥いて気絶しなかったのは、我がことながらとてもよくやったと思う。




