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01 新しい街

 俺は旅といえば即ち冒険だと思っていた。予想外の天候に振り回され、野生動物や魔物からの襲撃に苦しみ、日に日に少なくなっていく食料と水に頭を悩ませる。


 ――なんてこともなく、俺は先生と共にそれなりの大きさの街に到着していた。スウォールという名前の街らしい。石造りの外壁が高く厚くそびえたつ、立派な街だった。街の中には道という道に石畳が敷き詰められていて、整然としていた。

 外壁の上には砲台が多数鎮座しており外敵に対する威圧感を醸し出している。ともすればそれは壁の外、郊外の住民に向けられているようにも見えた。

 街の中にいると自然の産物が目に入らない、という意味でスウォールはココガ村とは全く違っていた。

 それだけで俺にとっては立派な刺激、冒険に値した。世界にはこんな場所もあるのかと目が輝いた。


「先生、無事につきましたね俺たち」

「ええ、不測の事態も起こらず快適な旅でした。荷馬車を貸してくださった隊商さんたちに感謝ですね」


 ところで何をしにこの街へ来たんですか? と不躾には聞けない。先生のことだ、何かしらの意図があってこの街に訪れたに違いない。それを問いただすのは先生を信頼していないのと同じだ。

 俺は勇者の剣を探すための旅に出ている。極論を言えば俺に必要なのは勇者の剣の情報、特にそのありかだけだ。だが旅は何の計画もなしに進められるものではない。情報だって知りたい時知りたい場所で得られるとも限らないのだ。

 さて、先生は俺はどう導いてくれるのか期待である。呆れるまでの他力本願だが、実際俺に経験と知識が足りていないことは無視できない。


「ではイーヴィルくん。わたしが今からどこに行こうとしているのか、当てられますか?」


 表情を読まれたのか、先生はそんな質問を繰り出してきた。先生にはかなわないな、と俺は微笑した。


「金を稼ぎに行くんでしょう? 何につけてもこういう場所では金がものを言いますからね。先生だって隊商にお礼として払ってましたし。俺は無一文だし、先生の懐にいつまでも頼るわけにはいきません」


 俺は即答した。事前に先生と隊商の人のやり取りを見ていたおかげだ。

 先生は手を口に当てている。驚きの表情だ。もしかしなくても正解だろう。そして格闘技のようなそうでないような珍妙な構えをとった。なんで?


「なんと、イーヴィルくんがここまで資本主義に染められているとは! ここは心を鬼にして……!」

「え、あれっ、俺間違えました?」

「いいえ? 満点回答が悔しかったのでちょっとイジワルしました」


 先生は照れているような顔をしながら構えを解いた。やはり先生は天使、間違いない。

 話を戻すが、俺には決定的に欠けている知識がある。それはどこで仕事をもらえるかだ。店前で土下座で頼み込んで働かせてもらうという手もないではないが、それは最後の手段にしたい。

 その点で言えばやはり先生を頼ることになる。


「では先生、俺をどこへなりとも連れていってください。よろしくお願いします」

「ほほう、なかなか人を立てるということを知っているようですねイーヴィルくんは」


 俺の謙遜ぶりが気に入ったのか、先生は仄かに笑みを浮かべると、ビシッと近くにあった建物を指差した。


「まずは――冒険者協会に行きましょう!」



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