22 糞喰いを継ぐ者
ユーリが、旅に出る俺に代わってこの村で堆肥を作る? そんな事する理由がどこにあるというのだろう。
俺は柄にもなく怒っていた。
「やめとけやめとけ! 臭くなるわ村人からは嫌われるわでいいことねえぞ!」
「じゃあ、この村の作物の出来がどうなってもいいのかい?」
「ああ、もう出ていくんだからなこんな村!」
怒る理由を探しつつ、俺の心情にちょうどフィットする言葉が見つからないことにイライラした。
……と思ったが、もう言ってたわ。
俺はコイツに汚れてほしくないんだ。俺みたいに嫌われるかもしれない可能性を残したくないんだ。
魔物退治でユーリに恩を受けたことを忘れるほど村人たちが馬鹿だとは思わないが、それでも不安は残る。
「先生が僕や村の皆に話してくれたんだ。堆肥っていうのは怪しい魔術の産物じゃなくて、生活の知恵に過ぎないんだって」
「偏見はもう生まれないってか? だからって、お前がウンコ臭い生活を送る理由には――」
「親友、聞いてくれ」
ならないだろう、と続けようとしてユーリに止められた。そんな真面目な顔して言われちゃ聞くしかないよな。
「僕は昨日君の小屋に訪れたんだが、ウンコの神と話す機会があってね。信徒にならないかと誘われて、僕は承諾した」
「はぁ!?」
冗談を言っている顔じゃない。俺が寝ている間に、ユーリがウンコの神の信徒になっただなんて、何のためにそんなことを!?
狼狽する俺をよそに、ユーリは話を続けた。
「君の目覚めを早めるためだ、と言われてね。なに大したことはしていないさ。大便の時にアレの顔を思い浮かべて祈るくらいで」
「……そうか。ごめんな」
「そこはありがとうって言うべきだよ。違うかい?」
「そうだよな。ありがとう、親友」
俺は親友に感謝した。しかしまだ堆肥づくりを継ぐ理由を聞いていない――とまで考えたところで、堆肥もしくはウンコを捧げられると力を増す汚い神様のことが脳裏をよぎった。
さてはユーリをそそのかしたのはウンコの神か。
俺は頭が痛くなった。神様直々に宗教勧誘するなんて謙遜とか自重の精神ねえのか? あるわけねえか、ウンコの神だしな。
自分を飾るもクソもねえってか。『ウンコの神だけにか? 確かにウンコはそれ自体が芸術だ、よくわかっているではないかァ』ああもう、静かにしてくれてると思ったらこれだ!
ユーリは魔術がからっきしだったので、魔術に見えた堆肥を作るイーヴィルがすごい存在に見えていたのです。その誤解が解けたとしても、イーヴィルに対する敬意は変わりませんでした。よかったね。




