21 旅に出る理由
先生と話を終えた後、俺はユーリのお見舞いに来ていた。
ユーリは空き家を借りて療養していた。魔物の襲撃で持ち主がいなくなってしまった家だった。
家の中にはユーリの仲間たちが控えていた。俺は自分が途中乱入した鎧の男であることを明かし、互いに全力を出して村を守ったことに感謝しつつ、ユーリとの面会を許可してもらった。
ユーリはベッドに寝転がっていた。俺が来るまではベッドの上で静かに本を読んでいたようだ。
「よう親友、元気か?」
「元気になったとも、親友。君が魔物を倒してくれたんだろう? 本当にありがとう」
「よせやい、お前がやりたかったことを代わりにやっただけだ……えっと」
どうしてだろう。話したいことがいっぱいあったはずなのに、どれから話しはじめていいのかわからなくて言葉が詰まった。
多分、ウンコの神からもらった鎧を着た俺は、ユーリの全力と同じかそれ以上に強いんだろう。彼が倒せなかった骸骨騎士を俺、というかウンコの神は倒せたんだし。
複雑な気持ちだ。彼の強さに憧れていた自分がいたのも事実で、でも俺はそれ以上に彼の精神性に救われたんだ。ユーリに向いている好意は変わらないと断言できる。
「親友。僕は、もう旅を続けられない」
「……そうか。腕がうまく動かないんだったか?」
「足もちょっとね。杖がなきゃ歩けないんだ」
心の準備はできていた。ユーリの告白は、先生からネタバレされていたから。
あれほどまでに体をズタボロにされて、一命を取り留めただけでも幸運だと先生は悲しそうに口にしていた。きっとそこには、元通りにユーリを治せなかった自嘲も含まれていただろう。
ユーリはもう旅に耐えられる強靭さを有していない。勇者の剣を探す旅は終わりを告げた。
「――お前の夢、俺が引き継いでもいいか?」
「親友……」
なら、俺が代理人として旅立とう。
俺が勇者の剣を探し出し、しかるべき国に譲渡する。もしくは、しかるべき英傑にプレゼントだ。
俺はユーリの意思を継ぐのだから、手に入れたとしても使うつもりはない。剣の腕なんてからっきしだし。
「ウンコの神にも言われたんだ。契約の代償に、世界を巡って信者と神殿を増やせってな。偶然の一致ってやつだ」
「ハハ、大変な旅になりそうだね。じゃあ僕からも提案だ――堆肥づくり、僕が引き継いでもいいかい?」
ユーリの言葉を受けて、俺の思考は停止した。
頭の中で「どうして」が渦巻く。




