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19 凱旋

 目が覚めると、俺が普段寝起きしている小屋の天井が見えた。

 起き上がって周りを見渡すと、小屋の壁には一度穴が開いてしまったために木材を打ち付けて補修したような痕跡が見られた。ユーリが吹き飛ばされてきた跡だ。


 村を襲った魔物たち、そして骸骨騎士との戦闘がフラッシュバックした。

 壮絶な戦い。骸骨騎士の意地、その最期。そして繰り出した技が軒並みウンコだったこと。


 思い出したくなかったことまで頭に浮上してしまったことに頭を抱えながら、俺はあの戦いが現実だったことに思いを馳せた。


 俺の身体に取りついていた悪霊の正体は超越神を名乗るウンコの神で、その呼びかけに応じて俺は俺自身を捧げた。あと堆肥も。命までは取られなかったようでホッとした。


 冷静になって振りかえると、飛行のために足から噴出していたあれ、オナラだったんじゃないだろうか。


「そうだぞ、余に似て聡いやつよ。あれの組成は屁と同じだァ」

「へー。できれば謎のままにしてほしかったかな……は!?」


 ボンヤリとではなく、はっきりとしたウンコの神の声が小屋に響いた。鎧は着ていない。なのにウンコの神の声が聞こえる。……よりにもよってケツのあたりから。


 服の隙間から這い出るようにして、悪魔みたいな顔つきの神様が頭部だけで俺の目の前に現れた。鎧の胸にあった顔と全く同じ姿だ。

 神経が間違った情報を送っているのでなければ、いまこいつ俺の肛門から出てきたような気が――やめよう、精神衛生にかかわる。


「あら、イーヴィルくん目が覚めたんですか?」

「先生っ助けてください! 悪魔に取りつかれてます俺!」

「悪魔だとぅ!? しもべよ、余はすべてを、特にウンコを司りし超越神なるぞ!」


 小屋のドアが開いて救世主が現れた。先生だ、矢をくらっていた肩には包帯がまかれているが、顔色はいい。回復に向かっているようでなによりだ。

 そしてできれば助けてほしい。可能な限り今すぐに。俺は先生の前に跪いた。


 ユーリや先生を守るためになら悪魔に魂を売ってやってもいいが、俺だって命は惜しい。助かる命なら助けてもらいたい。ウンコの神に命を捧げて死ぬとか本当に字面がひどい。


「ごめんなさい。守ってもらった立場で心苦しいんですけど、イーヴィルくんの契約を部外者であるわたしが破棄するのは難しいんです」

「……そうなんですね、こっちこそ無理を言って困らせてすみません」

「いえいえ。代わりと言っては何ですが、少し超越神さんについて教えられることがありまして」


 先生はやはり天使だ。多分骸骨騎士との戦いの後、気を失っていた俺をここまで運んでくれたのも先生なんじゃないだろうか。話の腰を折るのもなんだし口にはしないが『余だよ』お前かい!


「わたしはこれでも神話には明るい方なんです。創世神話とか空読みできちゃいます」

「マジすか」

「ええ。だから断言できるんですけど、()()()()()()()()()()()()()()()()


 なんだ、じゃあこいつはやっぱり悪魔か何かか。先生の解説を聞いて俺は深く納得した。


「でも悪魔でもありません、悪魔と契約するには複雑な儀式が必要ですから。言葉を交わすだけで契約が成立したとなると、ちょっと特定は難しいなーと」


 ほな悪魔とも違うか。俺は先生の博識さに感服した。

 じゃあ何なんだよこいつ。一方的に俺に力を貸してる謎存在ってこと? なおさら怖いんだけど。

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