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18 それは輝かしくも穢れた力

 骸骨騎士と骸骨馬の突撃を前に、ウンコの神は腕を組んで空中にふんぞり返っている。

 それはつまり慢心というやつではないだろうか。俺は懸念した。あと3分で変身が切れると伝えられてからどれだけ時間がたっているか把握できていない以上、俺としては早く決着をつけてほしいのだが。


「――ふぅん!」

「ぬ!?」


 突撃数秒前、俺の身体の支配権を握っているウンコの神は唐突に骸骨騎士に背を向けた。

 何してるんだ!? 血迷ったのかと叫びたくなる俺だったが、唇をわずかに動かすこともできない。


 体勢変化はそれからも続いた。俺の上半身は軽く丸まって、下半身は中腰に。おまけに尻を後ろに突き出すポージング。

 あの、神様。これってもしかして。


「あァ~出るぞ、出るぞォ。本日も余の腸内は絶好調――《全能神権限限定解放(フィーシーズ)魑魅魍魎駆逐砲(オーバードライブ)》っ!」


 臀部の鎧から、褐色に光る光線がすべてを焼き尽くさんと骸骨騎士めがけて飛翔した。色については想像だ。だがなぜだろう、褐色以外の選択肢はないような気がした。


 待てよ、《苦悶の咆哮(ダイアリィア)》は茶色もとい褐色。《天使の沈黙(ズァポール)》は黒色だったが、具合が悪い時ってウンコの色は黒くなったりするよな。


 これまでの攻撃、全部ウンコじゃねえか!? いや、変なにおいはしないからそのものってわけじゃないんだろうけどさ。


 俺はあんぐりと口を開けたくなるような気持ちに襲われた。こんな終わり方あんまりだ。やり切った顔で大便をひねり出し終わったウンコの神が顔を後ろに向けると、そこには――


「――まだまダぁ!」

「ぬ、避けたか!?」


 まだ勝負はついていないと吼える骸骨騎士がそこにいた。全身にはヒビが入っている。両足首から先がない。骸骨馬を足場に、あの一瞬でさらに上へと飛び上がっていたのだ。


 跳躍のために甲冑は脱ぎ捨てられていた。防御という選択肢は盾とともに投げ捨てられていた。

 勝負勘、一瞬の判断力。どれをとっても並の物ではない。生前の研鑽が偲ばれる思いだ。槍がこちらを貫くまであと少し。敵ながら卓越した技量だったと感服の気持ちがよぎる。


「――それでは本日2発目、行ってみようかァ!《全能神権限限定解放(フィーシーズ)魑魅魍魎駆逐砲(オーバードライブ)》っっっ!!!」


 再び俺のケツが突き出され、噴射された褐色の衝撃が今度こそ骸骨騎士を呑み込んでいった。それだけにとどまらず、射線上にあった木々を薙ぎ倒し延焼させたのだ。大木に大穴が開く様子まで見えた。


 骸骨騎士は崩れ落ち、チリとなってあたりに散らばった。頭骸骨だけは飛びぬけて丈夫だったようで、数秒後には砕けるだろうが、なんとかヒビだらけの状態で持ちこたえていた。


 俺の変身も解けた。身体の自由も戻った。まず尻を触って、服が破けていないかを確認した。先程の大技、実は俺の肛門から出ているんじゃないか、もしそうだったらどうしようとずっと心配していたのだ。


 ズボンとパンツの無事が確認できたあと、俺は骸骨騎士に向きなおった。よく考えてみれば、こいつに素顔を見せるのはこれが初めてだ。見せたいと思っていたわけじゃないが、あの仮面だけで俺を覚えたまま死なれても居心地が悪い。そんな気がした。


「最後にイイ戦いができタ……とはいかんな。気持ちノ悪い負けだ。何だあの技ハ、ふざけているのカ?」

「俺も同感だ。あんなので死んじゃあ戦死の名誉もクソもないよな」

「ウンコだけに、か?」

「違いねえ」


 ああ、無性にすっきりする。俺は確かにやりきったんだ。ユーリが守りたかったものを守れたんだ。

 ウンコの神の言い分は正しかったようで、周りのスケルトンたちも活動を停止し始めた。骸骨騎士との生命のつながりが切れたのだろう。


 その代わり異様に眠たい。身体の熱を全部出しきったような、不思議な感覚だ。


「無念。魔王様、面目次第も、ございま、せ、ぬ……」

「ユーリ。俺、やったぜ……」


 骸骨騎士の頭蓋骨が風に吹かれて消えたのと、俺の意識が闇に堕ちたのは、ほとんど同時のことだった。

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