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16 起死回生

 舐めていた。ゴブリンやオークたちを簡単に殲滅できる力を手に入れたからと、スケルトンの親玉ぐらいまあ何とかなるだろうみたいに考えていた。

 たった数分間対峙しただけで、それがハチミツのように甘い考えだったことを思い知らされた。ハチミツをなめたことなんて一度もないが。


 槍と盾しか持っていないんだから遠距離攻撃はないかと思っていたら雷を操って放ってくるし。

 近距離戦闘ではフェイントに引っかかり、カウンターを決められることもしばしば。ウンコの神からもらった鎧の強度を過信しすぎていたこともあるが、ダメージが鎧越しに届いてきたこともあった。胸への槍撃をかばった左腕が悲鳴を上げている。


 なにより、こっちの攻撃がまるで効かないのが絶望感を際立たせている。奴が纏っている妖気が魔力や衝撃をことごとく吸収して、盾の死角を堅固にカバーしていた。

 このスケルトンは戦の玄人だ。博打を打つことはせず堅実に相手に対処するその精神性は、紛れもなく修羅場を何度も潜り抜けてきた武人のものだった。


「どうした、万策尽きたならこちらからいくぞ――」

「へっ、諦めるかよ!」


 ピコン、ピコン。


 聞きなれない音が俺の身体から鳴った。いや、厳密には鎧から。ウンコの神の顔が胸部にあるわけだが、その額あたりにある宝石のようなものが赤く点滅し始めていた。先程までは青く光っていたはずなのだが。


 骸骨騎士も音に警戒してか慎重そうに盾を構えた。なんだか申し訳ない気持ちになってくる。鳴らしている立場でありながらも、俺はこの音が一体何なのか皆目見当もつかない。

 俺はウンコの神に情けなくも助けを求めた。骸骨騎士には聞こえないように心の声で。


『おい神様、何の音だこれ』

『あと3分でその変身が解ける合図だ』

『――げ』


 どうすんだよ、こっちの攻撃は全く効果がないみたいなんだけどさ。というか敵にもピンチを知らせるのは機能として失格じゃないだろうか。俺にだけ知らせろよ。

 あと今更ながら、授けてくれた技が2種類だけっていうのは応用性に欠けるのではないだろうか。雑魚処理用と中堅用の技だけで大物と戦えというのはハードルが高い。


 こう、必殺の一撃とかあったら理想的なんだが。そういうのあったりしない?

 なあおい、ウンコの神? 神様? 世界の支配者ー? 全能神さーん?


 ……もしかして無視してる? 『しておらぬ』 そうですか、じゃあ僭越ながらこの状況何とかしてほしいんですけど。非常に悔しいことながら、今の俺では歯が立ちそうにない。

 それでもお前を頼ることに躊躇はない。ユーリとその仲間を、そしてユーリが守りたかったものを守れるのなら、どんな結末が待っていようが本望だ!


「――これは我がしもべの戦いであった。その勇猛さと覚悟ゆえに余はできる限り静観を決め込んでいた」

「貴様、魂の色が……!さては人間ではないな!」


 ……口が勝手に動く。身体の支配権が奪い去られたような、そんな感覚だ。


「選手交代といこう。スケルトンよ、これよりは全能神たる余が相手だ。

 ――忌むべき骨小僧よ、今日がお前の2度目の命日となる」


 俺の口がそのセリフを言い終わると共に、黄金のオーラが沸き上がり俺の身体を包んだ。骸骨騎士の纏っていた妖気は、信じられないことに黄金のオーラの余波でかき消された。

 その次の瞬間、俺は本能的に理解した。俺の身体に宿ったこいつは、あの骸骨騎士の何倍にも勝る力を秘めていたのだと。

ウンコの神からすれば、これまでの戦いは「自分で歩けるもん」と幼子から豪語された親の気持ちでした。でも膝擦りむいたからおんぶモード。

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