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15 骸骨騎士

 吐く息が真っ白に染まる白銀の世界にヤツはいた。

 闇色に染まった骸骨馬にまたがって騎士のように突撃槍と盾を構えた、一目見ただけで異質だとわかるスケルトンが、妖気とでもいうべきオーラを漂わせて鎮座していたのだ。


 スケルトンも身分の上下を理解できるのか、その骸骨騎士の近くを大きく避けるようにしてスケルトンは進軍していた。間違いない、あれが親玉だ。ユーリの仲間が言っていた「ヤバいやつ」だ。

 俺がそう確信したと同時に、飛行音を察知してか骸骨騎士が傷だらけの顔面をこちらに向けた。……スケルトンにも聴覚があるのだろうか。耳もないのに器用なことだ。


 先手必勝。俺は気持ち小さめの《天使の沈黙(ズァポール)》を骸骨騎士めがけて放った。

 正確に言うなら骸骨馬の正面かつ足元だ。巻き起こる土煙が俺の姿を隠してくれる。べらべらしゃべられてちゃ位置がバレるからちょっと静かにしててくれよな神様。『いいぞォ。』あ、念じるだけでも伝わるんだ。


「せいっ!」

「ぬぅん!」


 奇襲として繰り出した加速を乗せたキックは、敵ながら見事に盾で受け流された。

 視線が交錯した。骸骨騎士の眼窩には理性が見えた。ほかのスケルトンとは明確に違う。冷徹な思考をもって、明確な殺意をもって、彼はそこに君臨していた。というかしゃべれるのか。

 俺は骸骨騎士を睨みつける。あちらもまた、俺という存在を値踏みしているようであった。


「ほう、イレギュラーがいたか。先日の魔物討伐隊にはいなかったはずだが?」

「期待の新星だ、脳天揺らしてやるよ!」

「骨身に染みる戦いになりそうだ。このワグボーン、慢心はナシで行くとしよう」


 どんな方法を用いたのか、数秒前まで確かに裸だったワグボーンという名前らしい骸骨騎士は一瞬で鎧を着こんでいた。黒を基調として、金細工が掘り込まれた逸品であった。

 しかもいつの間にか骸骨場にも似たデザインの馬鎧が装着されている。見間違いなんて間の抜けた話ではあるまい。そういう魔術か何かだろうか。


 俺は空中を舞い骸骨騎士から距離をとった。他にも何か手札を隠しているかもしれない。


「《苦悶の咆哮(ダイアリィア)》」

「ふん、こんなもの目くらましにもならん」


 もしかしたら、と期待したが《苦悶の咆哮(ダイアリィア)》で打ち抜けるほどやわな鎧ではないようだ。骸骨騎士は盾すら構えず攻撃にさらされていたが、ひるむ様子はない。こっちの手札のひとつが死んだ。なら次。

 その鎧、決して軽くはないだろう。ならそんな状態で機動力を殺されたらどうなる? 狙うべきは馬からだ。


「《天使の沈黙(ズァポール)》、《天使の沈黙(ズァポール)》、《天使の沈黙(ズァポール)》!」

「おっと、我が愛馬から狙うとは。見かけに違わず悪辣なやり口よの」

「人を見た目で判断か、頭が軽そうなやつなら目の前にいるんだけどなっ」

「口が達者だな、人間。戦いには慣れていないようだが」


 馬鎧を着ていながらも、骸骨馬は軽快なステップで《天使の沈黙(ズァポール)》を回避した。

 あいつ、馬の繰り方も一流だ。直撃が避けられない一撃だけを盾で受けられるよう、迅速かつ正確に手綱を操っていた。

 弾速が遅い《天使の沈黙(ズァポール)》も効果は薄いようだ。他に何か打てる手立てはないだろうか。

 ヤツのの動きには余裕があった。強者ゆえの貫禄、命の瀬戸際から離れた場所にいる実感がそうさせるのだろう。その態度、何とかして打ち砕いてみせる。


「そうだ。ユーリとかいう若者をつい吹き飛ばしてしまったのだが、彼はまだ生きているかね?」


 会話する余裕まであるのかよ。しかしどうしてこいつがユーリを気にしている?


「……ああ、しっかり生きてるぜ。また会いたいのなら俺を倒してからにするんだな!」

「あれはただ殺すには惜しいやつだ。我が配下に下るなら、自由意思だけは残してやったのだが。……君もどうかな?」


 プッツン。堪忍袋の緒が切れた。あえて怒らせるつもりなら大正解だよこの野郎。


「死んでも御免だ骸骨野郎!」

「死んだこともないのによく吼えるものだ、人間」



ユーリたちは一度村の外まで魔物を追い出して追撃した後、出待ちしていた骸骨騎士ワグボーンとその配下に蹂躙されました。汚い戦術ですね。

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