14 スケルトン
スケルトン。骸骨の魔物。亡者の怨念がとりついて全身を動かしているために、身体を粉々に砕かなければ延々と襲いかかってくる生命の輪から外れた怪物だ。
村から出て南方の冷気の発生元に近づくにつれ、視界に入るスケルトンの数は莫大に増えていった。
あいつら筋肉のない骨だけの身体のせいか、歩くスピードが遅いのは幸いだった。これなら強行突破して元凶を素早く叩くことができる。武器を振る速さには注意が必要だが、並の武具ではウンコの神が用意したこの鎧を突破できないようで、剣も槍も弓矢も弾かれていた。
「この冷気を出してる元凶が死ねば、ここらのスケルトンも消えるんだよな!?」
「ああ、こやつらは自然発生したものではない。大本のスケルトンを絶てば魂のつながりは途絶え、ただの骨に戻るだろう」
「信じるからな、ウンコの神様!」
足に力をこめ、謎の力で空中を一直線にひた走る。状況が状況でなければ爽快感に浸れていたかもしれないほどの機動力だったが、スケルトン軍団が村に辿り着く前に元凶を倒さなければいけないという事実を前に冷や汗が流れた。
スケルトン軍団相手には、《苦悶の咆哮》はスケルトンの限界まで動くという特性ゆえに決定打にならず、《天使の沈黙》も費用対効果が合っていないように感じる。限界はまだ先だが、どちらも放つたびに体力が削られていく。無制限に使えるものではないのだ。
改めて俺はスケルトン軍団が行進を続ける森の中で恐怖を感じた。
数十匹で村を襲撃したオークやトロール相手には、山のようなという形容がピッタリと当てはまったと思う。巨躯と膂力が脅威となるあの群れには、壁とでもいうべき重厚感こそ似つかわしい。
だがスケルトンはどうだろう。そこにあるのは怨念だ。真っ当な死を迎えたなら天に召されていたはずの魂だ。彼らはただそこにあるだけで現世の熱を奪って、傲慢にも自分の取り分を主張している。自分たちには奪う権利があると。幸せになれなかった分だけ、不幸を振りまく義務があると。
死んでいながらも動いている。その矛盾がその一挙一動に、冷え切った悪意を見え隠れさせている。
ここは極寒だ。温かな人の営みを呪う、冷たい死の運び手たちがここにいる。
ざっと見える分だけで、1000体規模。まだ視界に入りきっていない分を含めれば、それ以上。
スケルトンは恐怖故に引くことがない。すでに死んだ身であるがゆえに。
掃討はもはや間に合わない。ゆっくりとだが確実にスケルトンたちはココガ村に侵攻している。
残された時間はどれくらいだろうか。そう考える時間すら惜しく思えた。




