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11 魔物殲滅

 分厚い鎧をまとっているはずなのに、身体が軽い。それに力がみなぎる。大木だってパンチ一発で薙ぎ倒せそうなくらいにパワーが湧き上がっている。

 しかもどんな魔術か知らないが足から噴射するエネルギーで自在に空も飛べる。村人たちが逃げてくる方向に向かうわけだからこれはありがたい。ぶつからずに済む。道中、途方に暮れて空を見上げた村人と目が合って、「あいつは誰だ!?」なんて余計なパニックは起こしてしまったが。


 超越神とやらはなかなかに多芸らしい。俺は魔物を倒すためにどんな武器がいるのかも知らない戦闘のド素人なわけだが、融通が利くじゃないか。剣一本渡されても使い方を教わったこともないから、武器だけポンと渡されただけで終わったりしたらどうしようとか実は考えていたんだぜ。

 ほどなくして、魔物が村人たちを襲っている光景が目に入り始めた。そしてそれに抗うものたちの背中もまた視界に入った。


 主に略奪をしているのは緑色の肌をした魔物、ゴブリンたちだった。あまり強そうには見えないが、とにかく数が多い。一匹一匹殴り飛ばしていたら日が暮れてしまう。

 ユーリの仲間であろう人たちが退却しながらゴブリンに応戦しているものの、振るわれる剣筋にキレはなく、放たれる魔術にも勢いがなかった。

 見殺しにはできない、と中空でホバリングしながら俺はこの場にいる全員を助けることに決めた。

 だって、ユーリだったらそうする。たとえ力が及ばないとしても、誰も彼をも助けてみせる。それが俺が惚れた漢の背中だ。心の内に燃える闘志が伝わったのか、超越神を名乗る謎の存在は芝居がかった口調で俺に助言を授けた。


「しもべよ、敵にめがけて手のひらを向け叫ぶのだ。『苦悶の咆哮(ダイアリィア)』と!」

「よしわかっ、待て待て! あの人たち巻き込まねえよな!?」


 その呪文が何を引き起こすのか知らないが、あの人たちは今もゴブリンたち相手に必死に戦っている最中である。なにをするのかわからないまま攻撃をして同士討ちになるなんて笑い話にもならない。


「超越神をなめるなァ! 因果律は既に余の手中にある!」

「ああもうわけわかんねえでも信じるぞ、『苦悶の咆哮(ダイアリィア)』!」


 言われるがまま腕の向きを調整して、呪文みたいな単語を口にする。するとゴブリンたちに向けた手のひらが急激に熱を持ち、熱が弾となり放射状にはじけてゴブリンたちを一斉に襲った。

 命を繋ごうと必死に動き続ける村人やユーリの仲間たちを当たり前のように避けて、褐色の弾丸は群れを貫き蹂躙していった。さっきまで命を宿していたはずの魔物の肉体は、みな力を失って大地に伏した。

 そして気持ちの悪いことに、胸部の口が風船のように急激に大きく膨らむと、ゴブリンの死体を食らい始めたのだ。こうやって魂を収穫しているのだろう。していることは間違いなく悪魔か邪神の所業だ。


「おお、いいぞいいぞォ。余の腹が満たされてゆくぞォ……!」

「誰、新手!? 口と、鎧の魔物……!?」

「なんだあれは、宙に浮いてやがる」


 俺は自分が援軍であると主張することにした。分の悪い賭けだが、何かしらの反応があればと期待して。


「俺はユーリの友人だ、助けに来た! 俺にできることはあるか!?」

「ならお願いだ、ここよりもっと南に逃げ遅れた人たちがいる。助けてやってくれ!」

「だがヤバい魔物がいる、スケルトンだ! ユーリもそいつにやられて吹き飛ばされた。危険だと思ったらすぐ退却しろ、オレたちも態勢を立て直したら加勢する!」

「わかった!」


 困惑する人がほとんどの中、何人かは俺に次にするべき行動の指針をくれた。疑惑や期待、縋る気持ちが混沌とした表情だったが、声をかけてもらっただけでも心が温まる。ほんの少し信じてくれるだけで俺は魔物に立ち向かう勇気をもらった。

 ユーリも昨日魔物討伐に向かった時、こんな心持ちだったのだろうか。


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