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74 恩讐の炎、復讐の牙(15)

え、いつのまにか100話!?

 先生は俺の母親らしい。それを先生本人の口から聞けなかったことが、どうしようもなく悔しかった。

 

「ま、あいつをそう責めてやるなよ。事情は聞かなかったが、多分血筋がマズいんだろうな。つまりお前の父親だが」


 ま、そうなるだろう。それくらいしか俺を村に捨てる理由が思いつかない。捨てたまま放置するならまだしも、看病のために村に戻るなんて情がなきゃできないことだ。


 きっと先生からしても苦渋の決断だったはず。そう思いたい。


「…………先生はどうしてキララさんにその情報を渡したんですか? 隠すこともできたはずです。なのにそれをしなかった」

「カマかけたら引っかかった」

「ええ……?」


 俺以外にだけ隠し事下手すぎないかあの人。俺は眉をひそめた。


「言っとくが、下手こいたのはあっちだぞ。あたしはお前らが親子だなってだけ確信が持てればよかったのに、あいつ背中の魔法陣のことまでゲロったんだ」

「それで、自分からは伝えたくないからキララさんにその役を任せたと?」

「ああ。恥も外聞もなく、お前に真実を告げてくれだとさ。ま、今のあたしは戦力外だからこういう役回りでも問題ないんだが」


 合わせる顔がないってやつなんだろうな、とキララさんはやれやれとでも言わんばかりに肩をすくめた。


 そこで俺はようやく、キララさんが俺を倉庫に連れ込んだ意味を悟った。


「……あ。もしかしてキララさん、先生から俺が戦わないよう隔離してくれって言われました?」

「はあ、頭の回転が早いのも考え物だな。そうだよ、実際死にかけたろお前」

 

 ガキを死なせて気分がいいわけねえだろ、とキララさんはこぼした。

 

「万全じゃないオルトロスならまだやりようはある。お前らが前線で体力削りに削ったおかげだよ、今はそれを誇れ。だって救えただろう? アタシの可愛い娘をさ」


 ベッドなんざ用意できないがここで休んどけ、とキララさんは告げた。


 確かに、俺たちはアーリャを助けられた。幸運、いやオルトロスの慢心あっての物種だろうが、それは紛れもない真実だった。それは間違いなく俺にとっても嬉しいことだ。


 それはそれとして、先生およびキララさんの言い分には賛成しかねる。俺は首を横に振った。


「でも、オルトロスがスウォールに着くまでに討伐隊の面々は帰ってこれないじゃないですか。ここにいる人たちは――」

「層が薄いってか? ははっ、その分じゃあ知らないみたいだな」


 キララさんが嘲弄するように手を叩いて笑い出した。まだそんなこと言ってないでしょうが。


 第一、先生がいるんだから敗北の二文字はあり得ないと信じている。それこそ骸骨騎士のような、大量の雑魚で削りつつ疲弊した実力者を狩るなんて戦略、一匹狼のオルトロスには採用できないわけだし。


 なんだったら先生があのフェニックスの自爆特攻を繰り返すだけでも完封できるんじゃないかと思ってるんだが。


 そう考えを巡らせる俺の目の前で、倉庫のドアがバタンと勢いよく開いた。


「入れよ騎士団長。スウォール最強の座はまだお前のもんだってこの若造に教えてやれ!」


 え、騎士団長ってまさか、オルトロスの呪いでカエルに変えられてたっていう――!?

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